ポッポマンといっしょ~無敵のバケモノに変身できるようになった少年、暴虐の限りを尽くす~

四百四十五郎

第1部

未確認バケモノ確認編

卒業式に現れたバケモノ

「ギャアアアアアッ!アアッ!アツ!死にたくないっ!死にたくないいい!!!」


 ブチィ!グシャア!


 3月1日、私の友人たちは目の前で次々とミンチ肉に変わり果ててていった。


 


 最初は何の変哲もないただの卒業式だった。


『続きまして、卒業証書授与に移りたいと思います』


 憧憬高校の学生として3年間を過ごした証を同級生が次々と貰っていった。


『丸山リン』

「はい!」


 私も名を呼ばれ、証書を貰った。


 その直後であった。


『ドゴオオオオオン……!』


 突如、式の会場であった体育館の天井が崩落した。


「ギャアアアアアッ!」

「アアッ……」

「ギャアア!ガッ!アア!」


 直後、クラスメイトたちが一斉に叫びだす。


 しかし、それは天井が崩落したことに対するリアクションだけではなかった。


 天井だったガレキがもたらす土煙の中に、明らかに人間ではない奇怪な存在がいたからである。


「な、なんだよアレ!わかんないよぉ!」


 クラスメイトで一番仲がいい鎌倉ネリがその人影を指さす。


 私も彼女の意見に心から同意した。


 そのバケモノは人間と同じ体格をしていた。


 胴体も、頭部も、手足も人間同様にあった。


 しかし、その顔は憎悪に満ちた目とギザギザの牙が生えた口で構成されており、鼻と耳がなかった。


 さらに、胸部には右半分が中身むき出しになったような顔があり、全体的に機関車を彷彿とさせるような見た目であった。


『ンギイイイイイイイイ!』


 バケモノが怒りに満ちた目で私たちを見つめながら雄たけびを上げる。


 それを聞き、大半の生徒が逃げ始める。

 

「ああっあっ……あっ……」


 しかし、ネリをはじめとした一部の生徒は恐怖のあまりパニックになってしまい、動けなくなってしまった。


「ネリちゃん、ネリちゃん!逃げるよ!」


 私がネリに駆け寄って逃亡を促したその時。


『ン”!ン”ギイイイイイッ!』


 バシッ!


 ネリはバケモノによって壁に叩きつけられてしまった。


「ああっ、ネリちゃん……ネリちゃん……!」


 叩きつけられたネリの床下にどんどんと赤い水たまり広がっていく。


 私はショックのあまり、逃げることなど考えられなくなってしまった。

 

『ンギイイイイイイイイインッ!!』


 そこから先は更に凄惨であった。


「ああっやめて!やめてぇ!」


 バチィ!


 クラス1の美人さんだと言われていた学級委員長の株戸さんが真っ二つになった。


「ごめんなさい……ごめんなさい!ごめんなさいっ!ごめんなさ」


 ガブリィ!


 野球部の副部長で陽キャだった田河野さんが捕食された。


「アアアアアッ!」


 ブチィ!


「ギャアアッアアアッ!」


 ベチィ!


「グァアアアッ……」


 グシャリィ!


 ちょっと口が悪いけどみんなのために動いてくれていた伊角さんが、ちぎれてから潰された。


 裂いたり、食ったり、潰したり……


 バケモノは虫を壊す子供のように私の同級生を肉塊へと変えていった。 


 


 『逃げたヤツも……追わないと』


 体育館内が死体で埋め尽くされたころ、バケモノが明確に人語を喋った。


 カタコトでもないし、イントネーションもおかしくなかった。


 まるで、中に人間がいるかのような喋り方であった。


 そして、なぜか少しなつかしさを感じる喋り方でもあった。


「この……この、バケモノめえっ!みんなを返せっ!」


 私はつい、バケモノに文句を言ってしまった。


 どうしよう、殺されるかもしれない。


 しかし、バケモノは私に眼も向けずにただひと言だけ言い残した。


『俺の名前は、ポッポマン。いつかキミを、迎えに行く』


 そう言ってポッポマンは、体育館から高速で走り去っていった。

 

 その後、私はさっきまで繰り広げられていた惨劇のせいか、失神してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る