Sea of Milk

ribon

第1話

ミルクの海


午前中で終わるはずの神経接続は予定よりずっと長引いていた。

それはそれでいい。感傷にひたっている時間は大いにあった。

彼女はトリプルチルダを培養液のプールから上げると粗い目のタオルで体をふいてあげた。

トリプルチルダは(期待どおり)嫌がって身をふるわせる。脂肪の層が波立つ。

「いい子だから暴れないでね」

タオルが皮膚とこすれるたび、トリプルチルダはかわいい小さな悲鳴をあげる。

豚・・・と彼女はおもう。だが口には出さない。

この子と対峙するときは常に冷静でいなければ。

「いい子ね」やさしい声で言う。

それから麻酔注射をトリプルチルダの皮膚に突き立てる。

トリプルチルダは咆哮を上げ、2分ほど痙攣したあと無抵抗になる。

一連のきわめて退屈な作業。

彼女は解剖用具を放り投げて立ち上がる。

プールサイドをゆっくり一周する。

おそろしく退屈な一日。

天井では銀色のカミソリが高速で回転している。

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Sea of Milk ribon @ribon_kaku

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