ナース、バレる
母が現役の頃は、何かあれば自分の勤務先か、勤務先や看護師仲間の紹介の病院で診てもらうから、最初から看護師だとわかっていることが多かったと思う。
けれど、引退してからは、周囲も同じように現役を退いているので、初めての病院にかかることも増えてくる。
母は、元看護師ということを隠したがった。
私たち家族にも内緒にするように言った。
だが、問診票を書いた時点で、多分「?」と思われている。
病状が過不足ない。服薬名が詳細。既往症は、自分でメモして持ち歩いていたから、年月や年齢が明確で、病名が○○性△△のように正式名称すぎる。
診察に入ると、自然と医学用語混じりで説明し、看護師さんだったの?などと聞かれて、結局すぐバレる。
入院すると、看護師さんの間で情報は引き継がれ、「大先輩ですね」と言われたり、若いナースには「緊張しますー」と言われたり……。
さすがに高齢になってくると、そこまで言われることはなかったようだが、職業病は染み付いたまま。
足を骨折した母の手術の日。
父と2人オペ室の前まで見送ると、閉まった扉の向こうから、看護師さんとの会話が聞こえた。
お名前は?
「○○です」
今日はどこの手術をしますか?
「
80歳を過ぎた普通のおばあちゃんは、大腿骨骨頭とか言わないよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます