ナースは動じない 3

私はすぐに扁桃腺を腫らして熱を出す子どもだった。扁桃腺やアデノイドが肥大していたせいか、いびきも大きく、食も細かった。

ある程度大きくなって体力がついたら、早めに手術をした方がいいと言われていたそうで、小学校の入学前に扁桃腺とアデノイドをとることになった。


入院して全身麻酔での手術。目が覚めると、母から「唾は出しなさい、ゴックンしちゃダメよ」と言われた。

うっすら覚えているのは、唇の端が痛くて、唾だと思って出していたのは血だったこと。


手術は口から器具を入れて扁桃腺を摘出する。幼稚園児の小さい口を器械で開いて、器具を入れるから、唇の端が切れたらしい。

扁桃腺を摘出した傷口も縫うわけではないから、止血するまでは血が出てきてしまう。


今はそんなことはないのかもしれないが、一晩中、血液混じりの唾を出す私の口元を、ティッシュで拭い続けてくれた母。

普通の親なら、こんなに血が出て大丈夫なのか?なんで唇が切れてるの?と心配だろう。

だが、後に当時のことを話してくれた母はやっぱりひと味違った。


あの時痛かったやろ。がんばったなぁ、えらかった。

ひと晩で、ティッシュ1箱使ったわー!

現役ナースはたくましい。

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