極悪な悪役貴族に転生したが、最弱設定の操作魔法を過剰な努力で極めたら作中最強になった~俺を断罪するヒロインを助けたら、全員ヤンデレ化して離れない件~

青空あかな

第一部

第0話:プロローグ

「……いやぁ、最高だ」


 ベッドに寝っ転がりゲームをいじる。

 まさしく至高の時間だな。

 プレイしているのがお気に入りのゲームならなおさらだ。


 ――大人気オンラインRPG、【メシア・メサイア】。


 剣と魔法がある中世ヨーロッパ風の異世界が舞台で、平民の主人公は新しく出現した魔王を倒すため貴族学園で成長する。

 メインストーリーの面白さもそうだが、魅力的なキャラたち、豪華なエフェクト、豊富に追加されるサイドストーリー……全てが俺の好みに突き刺さり、ハマりにハマッて100周してしまった。

 主人公は基本的に光魔法しか使えないが、全クリするたび使える魔法系統が一つ増えるというシステムもいい。

 特に、悪役貴族のギルベルトが使う操作魔法が一番好きだった。

 最初は小石しか操れないが、レベルを上げるたび土や水、魔物に魔族、最終的には魔王さえ操れるのだ。

 何回遊んでも楽しいな~。

 しばらくしてふと時計を見ると、もう夕方だった。


 ――ヤバッ……そろそろバイト行くか。


 慌てて支度を済ませ外に出る。

 高校二年生になったばかりだが、相変わらずゲームとバイトが俺の人生を占めていた。

 陰キャな俺に彼女なんてできないからな。

 まぁ、【メシア・メサイア】さえプレイできればそれでいい。

 彼女がいたらゲームする時間が無くなると考えると、そっちの方が嫌だ。

 別に泣いてはいない。

 バイト先のスーパーに来ると、バス停で家族連れが談笑する様子が見えた。

 5歳くらいの少年と両親。

 微笑ましい光景だ。

 そう思いスーパーに行こうとしたとき、少年がフラフラと道路に出てしまった。

 両親は雑談に夢中で気づいていないらしい。

 大型トラックが猛スピードで近づく。

 運転手は居眠りしていた。


「……マジかよ!」


 考える前に身体が動いた。

 声をかけたんじゃ間に合わない。

 思いっきり走り道路に入って、少年を歩道に向かって突き飛ばす。

 直後、ドンッ! という日常生活では絶対に感じない衝撃を感じた。


 ――あ……これ、ヤバいヤツだ。


 宙を舞ったかと思うと道路に横たわっていた。

 アスファルトに大量の血が流れだし、全身が冷たくなるのを感じる。

 不思議と痛みはない。

 色んな人の叫び声が聞こえ、立ち上がろうとしたが身体は動かず、流れる血を見ることしかできなかった。

 やけに冷静に俺は思う。

 ああ、そうか……もう死んじゃうんだ。


 ――最後に一回だけでいいから、もう一度【メシア・メサイア】をプレイしたいな……。


 ゲーム好きの俺が死の間際に思うことは、やはりゲームだった。

 でも、大好きなゲームに出会えたのは幸せだったな。

 力が急速に抜け、俺は死んだ。

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