第10話 迷惑系配信者をボコって美少女達を救う
現場へ向かうと、そこには。
「ナンパはよそでやってよ!」
「アンタ等なんかにきょーみないし! 失せろっての!」
迷惑げに顔をしかめる、可愛らしい女の子達と、
「そんな怒んないでよ~」
「ちょっとお喋りしたいだけだって!」
しつこく食い下がる、チャラついた格好の男達。
そんな様相を見て、俺はボソリと呟いた。
「……ナンパ系配信、か」
男達の一人がカメラを回しているため、ほとんど間違いないだろう。
ダンジョン配信を行う女性は見目麗しい者が多く、それを手籠めにする課程を配信するといった内容はそれなりに需要がある。
もっとも、ナンパされる側は不快感を示すことが多いため、ナンパ系配信者は迷惑系の烙印を押されることがほとんど。
「……いかがなさいますか、アヤト様」
「……そう、だな」
特別、どうということもないような迷惑系であれば、無視してもいい。
相手取っている女の子達はハッキリと意見を言うタイプだし、最終的には諦めるだろう。
だが。
俺の聴覚は、ナンパ役の背後で話し合う、二人の男の小声を聞き逃さなかった。
「表の方は無理っぽいな。けど、裏の方は」
「あぁ。いつもみたいにガラおさえりゃこっちのもんだ」
直接的なワードは一切なかったが、しかし、十分に理解出来る。
こいつら、迷惑系であると同時に、アダルト系配信者だ。
それも女性を無理やり手籠めにして、弱みを握り、言うことを聞かせるといった最低最悪の部類に属する連中。
このまま捨て置けば、彼女等がどんな目に遭うか、わかったもんじゃない。
「……動きますか」
「……あぁ」
レナと共に割って入ろうとする……その前に。
「や、やめないか、君達ッ!」
一人の勇気ある男性が、俺達よりも先に介入した。
「か、彼女達、困ってるだろう!」
彼の言葉に対し、迷惑系の連中は逆上するどころか、むしろ。
「そ、そうっスね」
「すんません、ご迷惑をおかけしました」
奇妙なほどアッサリと引き下がる。
まさか、これで終わりか?
と、首を傾げた、直後。
「えっ、あっ?」
割って入った男性が、困惑した様子で迷惑系集団の一人に近付いて――
その顔面を、殴打した。
「っ……!?」
目を見開く男性。
彼に対し、奴等はニヤリと笑って。
「おいおい、先に手ぇ出しちゃったなぁ?」
「こりゃあ正当防衛しねぇと、殺されちまうよ」
……なるほど。
奴等の中に、洗脳や催眠系のスキルを持ってる奴が居るのか。
さっきのしおらしい態度は、やはり全部芝居だったってわけだ。
「視聴者の皆さぁ~ん! 不当な暴力に対して、今から正当な落とし前を付けますんでねぇ~! よかったら楽しんでくださぁ~い!」
迷惑系の一人がカメラに向かって宣言した後、容赦なく男性へ拳を繰り出す。
が――
次の瞬間、殴打されたのは、彼ではない。
割って入った、俺の顔面だ。
ゴッ。
鈍い音が響く。
しかし……俺はなんのダメージも受けてはいなかった。
「あぁ?」
なんだこいつは、と、そう言わんばかりの男へ、俺は言葉を叩き付ける。
「先に手を出したな? これは正当防衛をしないと、殺されてしまう」
奴等の台詞をそっくりそのまま投げて、それから。
まず目の前に居た男の腹へ一撃、拳をねじ込む。
「おごぉっ!?」
ワンパンでダウン。
その後、あっけに取られていた男の側頭部へハイ・キック。
これも一発でダウン。
「な、なんだ、おま――」
最後まで聞いてやる義理もないので、言い終わる前に顔面へ一発。
そのすぐ隣に居た男も顎を強かに打って、ノックアウト。
そして最後に。
「こ、こいつ、なんでッ……!?」
どうやらこの男が催眠のスキル・ホルダーだったらしい。
当惑を極めた様子の相手方へ、俺はその原因を口にした。
「お前、探索者としては素人だな」
「っ……!」
「催眠や洗脳といったスキルは、自分と同格かそれ以下の相手にしか通じないんだよ」
それぐらい知っとけ。
と、言い捨ててから、顔面を殴打して意識を奪う。
完全決着。
それを確信した、瞬間。
【レベルアップ】
【スキルツリー:憤怒のパッシブ、狂暴を習得】
【スキルツリー:色欲のパッシブ、欲宴の帰結を習得】
脳内に浮かんだ文言に、困惑を覚える。
対人戦でもレベルアップって、するもんだっけ?
……まぁ、別にそこまで、気にするようなことでもないか。
そんなふうに結論付けつつ、俺は失神させた連中を見下ろし、一言。
「……これに懲りたら、今後は真面目に生きるんだな」
倒れ込んだ連中に送られた言葉は、きっとなんの意味も成さないのだろうが。
しかし。
一部始終を見守っていた者達にとっては、ヒーローの決め台詞のように映っていたらしく。
「す、すげぇ……!」
「動きが、目で追えなかった……!?」
「か、かっこいい……!」
称賛の声に混ざる形で、
「あ、ありがとうございましたっ!」
「ほんとは、怖かったんです~!」
「お兄さん、めっちゃ強いですねっ! ウチのパーティーに入りませんか!?」
助けた女の子達が、こちらを絶賛する。
その中の一人……ちょっとギャルっぽい子が、積極的にボディータッチをしてきたのだが……
それが良くなかった。
「んっ……♥」
色欲による魅了が効果を発揮したようで、彼女の瞳にハートマークが宿る。
ヤバい。
このままだと、面倒なことになりかねん。
「か、帰ろう、須賀乃さん!」
「承知しました」
畏敬と称賛を浴びる中、俺はレナと共に、その場から離脱したのだった――
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