BLUE EYE

M

第1話

銀色に光る棒。


目を閉じてしまいそうになるほどの眩しい光。


透明な液体が入っている注射器。


目の前にあるブルーサファイアのような瞳。


なぜこんな事をしているのだろうと、


しない手段はないのかと、


足りない頭で考え、考え抜いた先は、


現実から目を背けるしか逃げ道はなかった。




「今日は満月かぁ。」

そう窓の外を見ながら目を擦る。

「ちょっとぐらい寝てもいいよね…」

持っていたペンを置き、机に伏せて目を閉じた。


「おい、起きろよ。」

「ん…?」

誰かに声をかけられ、まだ寝足りず重たいまぶたを開いた。

目をぱちぱちさせながら上を見上げると、そこには男の人が立っていた。

「うわっ、不法侵入…?!」

「…周りをよく見ろ。ここがお前の家に見えるのかよ。」

そう言われて周りを見てみると、確かにここは自分の家ではなかった。

誰かの家というよりかは、なにかの施設のような、一面真っ白な場所だった。

「ここはどこなの?あなたと私しかいないの?」

自分が置かれた境遇がなんとも不思議で、質問しか声に出なかった。

そんな自分に呆れた表情を見せながら、淡々と質問に答えていく。

「ここが何なのかは誰も分からない。ただ一つ、出口がないことは分かる。

 お前に人間が見えない特殊能力があるのかは知らないが普通にいるだろ。」

と言って親指をクイっと後ろに差した。

「あ、ほんとだ…」

まだ何も分からずテンパっていて見えていなかったのだろう。

ただ、この男の言い方は少し腹が立つ。もっと良い言い方はないのだろうか。

「俺たちの他に3人いる。長い時間過ごすことになるだろうし、自己紹介しようぜ。」

「私は反対ですわ。」

そう言い出したのはご令嬢のような華やかな服を纏った綺麗な女性だった。

「どこの誰かも知らない馬の骨に、個人情報なんて言えませんわ。」

「じゃあお前は反対側の端っこにいろ。出口を見つけてもお前だけは出さねぇから。

 信用できねぇんだろ?」

「…し、仕方ありませんわね、ただし他の方から先に言ってくださいまし。」

男は口が達者というか、只々人を煽る才があるようだ。

そして、少しの沈黙の後口を開いたのは、目の下にすごい隈がある男だった。

「えっと…僕からいかせてもらうよ。僕は山下勝也。平凡な名前だろう。はは。」

口は笑っているが目は笑っていない、幸の薄い人だ。

明るくしてくれようとはしているものの、誰も反応を示さない。

そんな彼が気の毒だったが、何か言おうと考えているうちにその隣に座っていた男が口を開いた。

「私は柳恵一。警視庁巡査部長をしているんだが…まさか自分が事件に巻き込まれるなんてな。」

キリッとした顔立ちで、すごく筋肉がついている。

まさに警察官のような見た目だ。

まじまじと見ているとようやくいけすかない男が話し始めた。

「俺は夜暗悠吏。普段は…」

「やっぱり、マジシャンの…!」

「なんだ、知ってんのか。」

山下さんは夜暗の事を知っているようだ。

それにしても、マジシャンにしては指より口が達者とは一体どういう了見なのか。

「そう、俺はマジシャン。小学校の頃からやっているマジックを今も続けている。

 ただ俺はまだ高校生だからあまり表立ってはいないがな。」

顔立ちが良いだけにマジシャンという肩書きがかっこよく見えてしまう。

高校生なのも驚きだ。てっきり20歳は超えているものだと思っていた。

失礼な事を考えていると、視線が目についた。

そういえば次は私の番だ。

「あ、じゃあ次は私だね。私は谷瀬未零。高校に通ってる。特に他の情報はないかな。」

言い終えた瞬間、ご令嬢の子が私に近づいてきた。

このご令嬢は香水にも気を遣っているのか、すごくフローラルな良い匂いがした。

「貴方…義眼ね。精巧に作られているようだけれど。」

私はびっくりした。これまで私の義眼を言い当てた人はいないからだ。

「私は薬鳳院桃華。父が医療に携わっている関係でそういう事には詳しいの。

 それに…私のお母様も義眼でしたから。」

少し寂しそうな表情で私の頬に触れた。

そこからは先程のような嫌な感じは感じられなかった。

「あの…」

「…あら、ごめんなさい。お母様が恋しくなってしまって。」

母はもういないのか、もっと悲しそうな顔をしながら手を下ろした。

そんな薬鳳院さんを見ていると不憫に感じられた。

「これで全員終わったな。じゃあこれからどうする?」

夜暗が問いかけたが、皆出口がないのを知っていた為、すぐに案は出なかった。

「でも、絶対出られないなんて事するかな。何の目的で閉じ込められたかは分からないけど、私たちを入れることができたなら出口はあるはず!」

「確かに、それは一理あるね。谷瀬さん、良いところに気付くじゃないか。」

突発的なものだったが、柳さんに褒められてしまった。

警察官に褒められると調子に乗ってしまいそうだ。

「じゃあ、皆ばらけて各々出口を探そう。広いからそうした方が良さそうだ。」

「そうですわね、怪しいものを見つけたら真ん中に来る事。それが集合の合図よ。」

皆の意思が固まってきた。

本当に脱出できるかもしれないという期待を胸に、皆バラバラになって歩き始めた。

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