第177話 ファミレス
月曜日。久しぶりにバイトに行く。果物の収穫をしながら幸樹が聞いてきた。
「昨日、兄貴と阿蘇に行ったんだろ? 亜紀さんとはどうだった?」
「うーん、そうだな。あんまり進展無い感じかな」
「やっぱりそうか。兄貴、厳しそうだな」
「でも、もう一度阿蘇に行く約束したし」
「そうなのか。じゃあまだワンチャンあるのかもな」
バイトを終え、達樹と俺は陽春達がバイトするファミレスに到着した。
「あ、和人! 部長たち来てるよ」
出迎えた陽春が言う。
「部長が?」
ファミレスに来るなんて珍しいな。案内された席に着くと三上部長と雪乃先輩が居た。
「おー、櫻井、小林、来たか」
三上部長が言う。
「お久しぶりです!」
達樹が言った。達樹が部長達に会うのは夏休みに入ってから初めてかな。
「久しぶり、小林君」
雪乃先輩が挨拶してくれて達樹は少し照れていた。
「今日も課外授業だったんですか?」
「そうだ。その後、ここに来て勉強していたんだ」
「陽春ちゃんと理子ちゃんがバイトしてるところも見てみたかったし」
そこに笹川さんが来た。
「注文決まった?」
「おう」
紙を差し出す。
「いつものドリア2つね。先輩達もごゆっくり」
笹川さんは去って行った。
「……先輩達はいつもどんなところでデートしてるんですか?」
達樹が聞く。部長カップルは今日はファミレスに来ているが、他はどこに行ってるのだろう。
「そうね、喫茶店が多いかな。読書喫茶とか」
「読書喫茶?」
そんなところがあるとは知らなかった。
「本がたくさん置いてある喫茶店ね。あとは図書館裏とか」
「図書館の裏、ですか?」
図書館の裏の何が面白いのだろうか。
「県立図書館の裏は庭園みたいでデートにはいいのよ」
「へぇー」
これも知らなかったな。
「あとは
「ちょ、ちょっと待ってください。メモします」
俺はあとで陽春と行くために先輩達のデート場所をメモしていった。
「嬉しいわね。私たちのデート場所に後輩達が行ってくれるなら」
「是非、後で行ってみます」
「私たちも先輩達から教えてもらった場所だからね」
「そうなんですね。文芸部の先輩にもカップルがいらっしゃったんですか」
俺たちが一年の時の三年生は陽春は知っているが俺は知らない。
「そうよ、文化祭には来るかもね」
「お待たせしました!」
陽春がちょうど料理を持ってきた。
「ありがとう、陽春」
俺たちはドリアを食べ出した。
食べ終わった後、俺は聞いた。
「そういえば、冬美さんが次の部長の話しました?」
この間、下級生だけで話し合って誰が次の部長になるのがいいか、話し合った。それを冬美さんは報告すると言っていたが……
「聞いたわよ。でも、次の部長はもう決まってるから」
「え? そうなんですか?」
あの話し合いは無駄だったか。
「そうだぞ。後は部誌で発表するだけだ」
三上部長が言った、もう次の部長は決まっていたのか。誰になるんだろう。
そんな話をしているとさらにそこに人が増えた。
「お姉ちゃん、来たよ」
冬美さんだ。この間会ったときと同じように地雷系の格好をしてる。雪乃先輩の横に座った。
「うわ、長崎さん、すごい服だね」
達樹が言う。
「あら、和人君と小林君も居たんだ。小林君はこの格好見るの初めてか。どう?」
「すごく、いい……」
「でしょ。あんたも彼女にさせたら」
「理子はそんな格好絶対しないよ」
「そうなんだ。似合いそうなのに」
「私はそんな格好絶対しないから」
笹川さんがちょうどそこに来た。
「ご注文は?」
「すぐ帰るから」
「そうなの?」
「うん。お姉ちゃん達が近くに居るから一緒に帰ろうと思ってきただけ。ついでにあんたたちのバイトしてるところも見ようと思って」
そう言って冬美さんは立ち上がった。三上部長と雪乃先輩も立ち上がる。
「じゃあね」
「またな」
「またね」
3人は帰っていった。
帰った後に達樹が言う。
「いやあ、冬美さん、良かったなあ」
「お前そんなこと言ってると笹川さんに怒られぞ」
「え?」
笹川さんが近くに来ていた。
「達樹、ああいう服好きなんだ」
「あ、まあ……一般論として」
「ま、私はああいう服では楽しませてあげられないからね。その点はちょっとごめん」
「あ、謝らなくていいから」
「まあいつか勇気出たら見せてあげるかもね」
「マ、マジで!」
達樹が大きな声を出す。
「ちょっと、声が大きい。もう……」
「ご、ごめん、ちょっと興奮しすぎた」
「はぁ……まあ、いつかね」
「おう!」
ちょっと達樹がうらやましくなった。
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