第147話 久しぶりの立夏

 火曜日の朝。教室の席に座っていると立夏さんと冬美さんが教室に入ってきた。


「おはよう、和人君」


「おはよう、立夏さん、冬美さん」


 そういうと冬美さんはいつものように自分の席に向かったが、立夏さんはなぜか動かない。


「ん? 立夏さん、どうかした?」


「ううん、久しぶりだから和人君をよく見ておこうと思って」


「久しぶり?」


「うん、3日間会えなかったでしょ。寂しかったから」


「えっと……」


 そこに大きな声が響いた。


「おっはようございまーす!」


 陽春が俺の席に来る。


「おはよう、ウチの彼氏」


「おはよう、俺の彼女」


「あれ? 立夏さん何か用事あった?」


 陽春が聞く。


「ううん、和人君成分を補充してただけ」


「ふーん、ってなんで補充する必要があるのよ!」


「いいでしょ、陽春ちゃんのケチ」


「ケチじゃないし」


「ケチ」


 そう言って立夏さんは離れていった。


「ウチ、ケチじゃないよね?」


 陽春が俺に聞く。


「なんでケチって言葉気にしてんだよ」


「なんとなく……」


「俺は陽春が一番だからな」


「一番じゃなくて唯一じゃないと! 二番作っちゃダメだからね!」


「わかったわかった」


◇◇◇


 昼休み、俺は海の件を達樹に聞いてみた。


「達樹のお兄さん、海に行くときに車だしてくれるのか?」


「ああ、そうだよ。今、彼女と別れて暇してるらしい。浜辺さんのお姉さんの話したらすぐ食いついてきたよ」


「ふーん、それならいいけど」


「これで浜辺さんのお姉さんと付き合いだしたら面白いよな」


「そう上手くいくかよ」


「まあそうだけどさ。でも、同い年みたいだし、知り合うだけでもお互いメリットあるだろうから」


「まあ、そうかもな」


 そこに声が響いた。


「上野雫、不知火洋介、入ります」


 上野さんと不知火が入ってきた。昼休み、早めの時間に上野さんが来るのは珍しい。


「上野さん、今日は何かあった?」


「いえ、あれからお二人どうされたのかなあって気になって」


「あー、そういうこと」


 陽春が言う。昨日は上野さんはお昼頃には帰ったので後は俺と陽春が二人きりだった。


「報告するような進展ありました?」


「進展は……ないかな。現状維持だよ」


 陽春が言う。


「そうですか。てっきり、また水着姿見せたりしたのかと」


「そ、そんなことするわけないでしょ!」


「でも、現状維持ならキスぐらいはしたんですよね?」


「……ノーコメントで」


 さすがに陽春も言わなかったか。確かにあの後、二人になったからキスをしたな。俺も顔が赤くなってきた。


「なるほど……わかりました」


 上野さんは言った。


「じゃあ、私は戻ります。不知火に海の件、説明しておいてください」


「海の件?」


 不知火が不思議そうに言ったが、上野さんはそのまま部室を出て行った。


「海の件って何ですか?」


「みんなで海に行こうって事になったんだ。俺の兄貴と浜辺さんのお姉さんが車を出すぞ。お前も行くよな?」


 達樹が説明した。


「それは行きたいですけど……みんなって誰ですか?」


「そりゃ、俺たちカップル二組とお前と上野さんだよ」


「う、上野さんも!」


 不知火が驚いている。


「そりゃそうだろ。今、上野さんが説明頼んだんだから」


「そ、そうですけど……上野さんが俺と一緒に海なんて……」


「信じられないか?」


「はい……あ、上野さんは泳がないとか?」


「なんでだよ。水着一緒に買いに行ったんだよな?」


 達樹が笹川さんに聞く。


「うん、日曜に私と陽春と雫ちゃんで買いに行ったよ。雫ちゃん、かわいい水着、買ってたね」」


「か、かわいい水着……」


 不知火が放心状態になっている。


「お前、雫ちゃんの水着姿に興奮しすぎないようにしろよ、引かれるぞ」


「む、無理ですよ! 上野さんの水着姿なんて、刺激が強すぎます!」


 まあ、気持ちは分かる。


「じゃあ、行くの止めるか?」


「行きます! 行くに決まってます!」


「だよな。今月末ぐらいだから予定空けとけよ」


「はい!」


 不知火はすごく嬉しそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る