第68話 久しぶりの部活

 放課後になった。


「ウチの彼氏! 文芸部行こうか!」


「よし、行くか」


「陽春ちゃん、ちょっと待って」


 冬美さんが俺たちに声を掛ける。冬美さんと立夏さんは他の男子達と何か話しているようだ。


「……だから行こうって。いいだろ、部活なんて。休んじゃえよ」


「そういうわけにはいかないから」


 どうも男子達から遊びに行かないか誘われているようだ。


「……困ってるのかな?」


 陽春が俺に言ってきた。確かに断りづらそうだ。だが、ここで俺が行くのもまた反感を買いそうで、いっそう相手を刺激しかねない。


 どうしよう、そう思っていると、陽春が動き出していた。


「立夏さん、冬美さん、そろそろ行かないと」


 近くまで行き2トップに声を掛ける。


「そ、そうね」


「おい、待てよ。まだ話が――」


「文芸部あるから!!!」


 陽春が思いっきり大声を出した。これがフルパワーか。男達も耳を押さえている。


「行こう!」


 陽春が立夏さんと冬美さんの手を取り、教室を出て行く。俺も慌てて着いていった。


 3階への階段を上り、廊下を歩いていると立夏さんが言う。


「陽春ちゃん、ありがとうね」


「ううん、困ってるみたいだったから」


「私からも礼を言うわ。でも、あなたから助けられるなんてね。私たちが居ないほうがいいって思ってるんじゃないかって思ってたわ」


 冬美さんが言う。


「そんなことないから。そりゃ、和人に色目使われるのは困るけど……。でも、文芸部はたくさん居た方が楽しいから」


「あら、そう」


「うん。だって、今日はみんなで楽しくゲームしたいし!」


 陽春が2人を笑顔で見た。


「ゲーム?」


「陽春がどうしてもやりたいって、この間買ってきたんだ」


 俺は説明した。


「そう」


「部長にも言ってあるから。今日は言葉のゲームだよ」


 陽春が楽しそうだ。


「浜辺陽春、櫻井和人、高井立夏、長崎冬美、入ります!」


 陽春が部室の前で大声を出し、俺たちは入った。


「おう、来たな」

「あ、先輩方、お久しぶりです」


 3年生の三上部長と雪乃先輩、それに1年生の上野さんと不知火ももう来ていた。


「すみません、ちょっと遅れました」


「あ、陽春先輩、報告お願いします」


 上野さんが言う。


「報告?」


「忘れたんですか。デートはしたんですよね」


「う、うん。したけど」


「そこで続きするから報告するって私に言いましたよね」


 確かに陽春は言っていた。続きというのは俺が陽春にキスをしようととした行動の続きだ。

 だが、それは結局、しないことになったのだった。


「ハッハッハッ、雫ちゃん。報告はもうちょっと待ってね」


「笑ってごまかしてますけど、やっぱり何も無かったんですね」


「いいでしょ! こっちの事情もあるのよ!」


「はいはい、分かりました。報告待ってますね」


「う、うん……」


 陽春はチラッと俺を見た。まあ、今回は俺のせいだな。

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