第65話 陽春の服を買う

 こうして俺は陽春の服を買うことになった。しかし、資金には限りがある。だが、ここにはいわゆるファストファッションの一体型店舗があるのだ。俺たちはまずそこに向かった。


「陽春、これとかどうかな」


 俺と陽春はスカートを選ぶ。青いフレア系を選んだ。


「いいんじゃない?」


「じゃあ、着てみてよ」


「分かった!」


 試着室に行き、陽春がそれを着てくれる。


「いいって言うまで開けちゃダメだよ」


「分かってる」


「あ、覗くのはいいから」


「そんなことしないから」


 しばらくすると、いきなり陽春がカーテンを開けた。「いい」って言うんじゃ無かったのかよ。


「どう?」


「す、すごくかわいい」


 少し長めのスカートで陽春のボーイッシュなイメージとは真逆だが、すごく似合っている。


「ウチ、こういうのは持ってないからなあ。似合ってるかなあ」


「うん、俺は気に入った」


「そ、そう? じゃあ、買おうかな」


「俺が買うんだよ。まず第一候補はこれだな」


「そ、そっか」


 今度はワンピースを見てみた。上野さんが着ていた白いワンピースは清楚感があって良かった。陽春だとどれが似合うだろう。すると明るい色のチェックのワンピースがあった。


「これとかどうだろう」


「いいかもね」


 陽春が早速試着してみる。すると、すごく少女感があっていい。


「やばい、これはいいよ」


「そう? 子どもっぽくないかな」


「いや、似合ってる」


 俺はこれも買うことにした。


「ただ、これだとキャップは変かな。帽子も見た方が……」


「いいよ、和人」


「いや、これとか……」


 俺は白い大きめのつばが帽子を取った。

 ワンピースを試着している陽春にかぶせてみる。


「か、かわいい」


「和人、言葉に出てるよ」


「いや、マジで可愛い。写真撮りたい」


「買うんなら後でいくらでも撮れるから」


「いいのか? 写真」


「彼女だしいくらでも撮っていいよ」


 そういえば、陽春の写真を俺は持っていない。後でほんとに撮らせてもらおう。


「あ、エッチなのは撮っちゃダメだから」


「分かってるよ。そんなの撮るわけないだろ」


 陽春はワンピースを着たまま、俺は服を買った。


「じゃあ、撮る?」


 陽春がピースをする。俺は店の脇の通路に陽春を連れて行き、そこで写真を撮った。


「一緒に撮ろう!」


 陽春と二人でくっつき、二人の自撮りを撮る。


「にひひ、嬉しいな」


 陽春も写真は嬉しそうだ。


「でも……この格好はちょっと恥ずかしいかも」


「そうか? かわいいのに」


「いつもボーイッシュだからね」


「それもかわいいから好きだよ」


「でも、こっちが好きなんでしょ」


「どっちも好きだから」


「ふーん。ま、いいか。じゃ、次は和人の服買おう!」


「次回ね。もう今日は遅くなってきたよ」


「えー! まだ帰りたくない」


 陽春が腕にしがみついてくる。


「じゃあ、コーヒー飲むだけだぞ」


「うん!」


 この日はそれで解散となった。


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