第41話 ハウゼンから逃れてきた人の前で白馬の騎士がハウゼン侵攻を宣言してくれました
私は翌朝、小鳥のさえずりで目が覚めた。
なんか温かい。
ぱっと目を開けると硬い胸板が目についた。
ん?
目をぱっちり開けるとルヴィに完全に抱きかかえられていた。
ええええ!
夜は私が後ろから抱きしめていたはずなのに、いつの間にかルヴィがこちらを向いているんだけど。
それも完全にホールドされているし……
私がモゾモゾ動いたので、ルヴィが目を覚ましたみたいだ。
「あ、リナ」
そう言って目をこすって、私の顔を見て、そして、固まっているんだけど……
私は改めて自分を見てスケスケ寝間着でそれも寝相が悪いからほとんど乳房が見えていた。
「キャッ」
慌てて寝間着を直して起き上がる。
そして、ノックが響いて、侍女さんが入ってきてくれたのだ。
「まあまあ、お二方ともお仲が宜しいようで」
「いや違うわよ」
「そうだ。一緒に抱き合って寝ただけで」
「まあまあ」
私達の言い訳に更に侍女さんは完全に誤解したみたいで、
「若いって本当に宜しいですわ。カリーナ様も天国から喜んでいらっしゃるでしょう」
と一人でで喜んでくれるんだけど……
私は侍女さんに着替えさせてもらうとルヴィと連れ立って食堂に降りた。
「殿下。昨日は孫と色々あられたそうで」
なんかお祖父様が侍女さんから余計な報告を受けたみたいで、とてもぎこちない。
「いや、伯爵。我らはまだ何も……」
「殿下、しかし、男女が一つの布団で同衾するなど……」
「まあまあ、あなた。殿下は元々アデリナと結婚して頂けるという話ですし」
お祖父様にお祖母様がフォローしてくれているんだけど……
もう、私は真っ赤だ。
「本当でしょうな。殿下」
「当たり前だ。伯爵。私は剣聖の剣にかけて必ずリナと結婚すると宣言している」
ルヴィは恥ずかしげもなく宣言してくれるんだけど。
言われる私はとても恥ずかしい!
「でも、殿下。リナはまだ18歳です。早すぎませんか」
お祖母様が今度は年齢について言ってくれるんだけど。
「別に早くはないだろう。私は出来るだけ早くにリナと結婚したい」
「いつ位をお考えですか」
「ハウゼンを開放したらリナと結婚したい」
ルヴィは宣言してくれた。
「まあ、なら、いつまでかかるかわかりませんね」
お祖母様が言うんだけど。
「開放されない限り結婚されないので」
お祖父様が今度は心配してルヴィを問い詰めるんだけど、
「伯爵。約束しよう。1年以内には必ず結婚すると」
「本当ですな」
「俺に二言はない」
ルヴィは言い切ってくれた……
「そう言えばあなた。ハウゼンの方々がお待ちではないの?」
お祖母様が話題を変えてくれた。
「えっ?」
「ハウゼンの方々とは?」
私とルヴィが聞くと
「ハウゼンから逃げて来たものが、この地にいるのです。その者たちがアデリナと殿下がお越しだと聞いて、集まって来たようで」
お祖父様が教えてくれた。
食事の後に私とルヴィは応接に向かった。
「これはアデリナ王女殿下」
真っ先に声をかけてきたのはオスロス伯爵だ。父の下で働いていたはずだ。
「オスロス伯爵、ご無事でしたか?」
私が驚いて聞くと、
「私めは当時領地に帰っておりまして、何とか。皆様お亡くなりになり、私一人生き残って生き恥をさらしております」
「いえ、一人でも生存者がいれば良かったと」
「エンゲルの略奪は凄まじかったらしく多くのものが殺されたり、傷つけられたりしました」
伯爵が悲しそうに言ってくれた。
「帝国としても、援軍が出せずに申し訳なかった」
ルヴィが横から謝ってくれた。
「いえ、我らが持ちこたえられなかったのがいけないのです。パスカルがいきなり裏切りまして、皆予想していなかったみたいで」
「パスカルは殿下が成敗していただきました」
私はルヴィを見た。
「それは、誠にございますか? 殿下、有り難うございます。死んでいったものも浮かばれます」
伯爵は今度は涙を流している。
「伯爵、それよりも、今はエンゲルをハウゼンから叩き出す事に意義がある」
「殿下、では誠に、ハウゼンに出兵して頂けるのですか?」
「当たり前だ。アデリナ王女殿下は私の婚約者だ。それに私は前国王夫妻には一年間お世話になった。あの王宮は私にとっても懐かしい所なのだ。どんな事があっても、エンゲルから取り戻す!」
ルヴィの宣言に皆感激してくれたのだ。
「皆も力を貸してくれるか?」
「判りました。微力ながらできることはなんなりと」
他の皆も頷いてくれた。
こうして、ハウゼン侵攻作戦は着々と準備されていった。
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