第33話 エンゲル王視点 俺様を肥溜めに落としてくれた小娘を捕まえようとしました。
俺はカスパル・エンゲル。南の大国エンゲル王国の国王だ。
元々王太子だった俺は学生時代、各国の王侯貴族が多く通うクラウン学園に通った。
そこには各国から多くの王侯貴族が通っていた。
ハウゼン王国の王太子のアレクシアやメンロス王国の王太子のオイゲン、それに帝国の第三皇子のヘルムートまでいたのだ。
皆、後に王や皇帝になっていた。このあたりの世代には王侯貴族が多かったのだ。
その中には俺が目を引いたカリーナもいた。
カリーナを一目見た時から、俺はカリーナに惹かれたのだ。
でも、そんな奴は多かった。
青髪のカリーナの美しさは格別だった。
でも、それは俺だけでなくて、学生の下手したら三分の一はカリーナ狙いだった。
俺は王族で我がエンゲル王国はこのあたりでは帝国に次いで大きな勢力を誇っていた。
王太子の俺様が迫れば帝国の伯爵の娘風情はすぐに俺になびくと思っていたのだ。
しかし、俺は一顧だにせずにふられたのだ。それは衝撃だった。
このエンゲル王国の王太子の俺があっさりふられたのだ。
屈辱以外の何物でもなかった。
俺は振られた理由を影を使って探らせた。
「だって、いくら大国の王族とはいえ、あんな太ったいやらしい目をしたデブに嫁ぐのは御免だわ」
なんと、カリーナがこう言っているのを影が聞いたというのだ。
俺は激怒した。絶対にこの伯爵の女を辱めてやると心に誓ったのだ。
しかし、この女には帝国の第三皇子もご嫉心だったし、帝国のベルナー公爵家の庇護を受けていた。
さらっておもちゃにするのは容易いが、流石に帝国を怒らせるのはまずい。
それだけは控えるように父にはきつく言われていたのだ。
俺は我慢することにした。
カリーナの人気は凄まじかったが、どうやら、カリーナはハウゼンの王太子と仲良くなったようだ。
カリーナの王太子は俺と違ってスマートで顔立ちはきれいだった。
おのれ、カリーナめ。俺が国王となった暁には必ず、ハウゼンを攻め滅ぼして俺に跪かせてやる。
醜い豚とこのエンゲル王国の王太子を辱めてくれたのだ。絶対に復讐してやると俺は心に決めたのだ。
そんな時だ。鬱々としていた俺はハウゼンのパスカル・クンツと仲良くなったのだ。
パスカルもカリーナに振られた口だ。俺達はそれが縁で仲良くなった。
俺は各地の不良貴族たちと遊び回った。
大国の王太子であった俺は女には不自由しなかった。
あのカリーナを除けばだ。
この学園は王太子とか皇子や高位貴族の子弟も多くいたが、どれも話した感じでは大したことはなかった。学力もそこそこ、頭も回っていない。
こんなので未来の国や領地は大丈夫なのかという輩が多かった。
それに比べて俺が学園時代に友人となったのは各国のはみだし者が多かったが、皆一癖や二癖あったが、度胸があって思い切りもよく、将来俺が侵攻する時は力になってくれそうな者も多かった。
何しろ我がエンゲル王国はここ二代で国土を2倍にしているのだ。俺は更なる侵攻を目指していたのだ。
俺は卒業すると早速手を付けた。
まず、メンロス王国とハウゼン王国の間にあるロンメルツ王国の次男のアルバンを焚き付けて王位継承問題をぶち上げさせたのだ。我が国がアルバンについたのもあって、あれよあれよという間に、アルバンが優勢になって、第一王子を蹴落として王太子に就任したのだ。
その間に父の国王は帝国の王位継承問題で俺の叔母で元王女で帝国の側妃から生まれた息子のを応援していたが、最終的にその第二皇子が毒殺されて夢は敗れ去っていた。
俺はその争いの間にアルバンをそそのかせてクラウン公国を併合させたのだ。
これでハウゼンは完全に我がエンゲルとロンメルツに囲まれることになったのだ。
しかし、これがどういうことかはハウゼンは理解していないみたいだった。
そして、俺は失意のうちに退位した父に代わって国王になったのだ。
エンゲル王国の拡大を狙う俺は邪魔な帝国を混乱させることにした。
極秘に影を使って皇帝に徐々に効く毒をもったのだ。
毒で弱っていた皇帝はあっさりと流行り病で亡くなってくれた。
跡を継いだのは凡庸なよく知っているヘルムートだった。
俺は帝国内で次々に反乱を起こさせてこちら側に手が出せないようにして、ハウゼンを滅ぼす計画を立てたのだ。
まずは少数民族に扮した者を中に入れて反乱を起こさせたのだ。
俺は帝国が国内の仕置に右往左往している間に、少数民族の援軍と称してハウゼン国内に雪崩込んだ。
俺はやっと、俺は醜い豚と言ってくれたカリーナに雪辱する時が来たのだ。
この屈辱を晴らすためにどれだけ我慢してきたことか。
まず俺はカリーナを差し出せと言ってやったのだ。
当然ハウゼン側は拒否してきた。
そこで、俺は昔からの友人のパスカルに合図したのだ。
パスカルはあっさりと裏切ってくれて、城門を開いてくれたのだ。
我軍の大軍が城内に突入した。俺は捕らえてカリーナを慰み者にする気満々だった。
しかし、我軍が到達した時はカリーナは自害した後だった。
俺はアレクシスとカリーナの首を城門にさらしてやったのだ。
そうでもしないとやってられなかった。
恨みを晴らす対象がいなくなったのだ。
収まらない俺は、カスパルに命じてその娘を連れて来させようとした。
母の代わりを娘にさせようとしたのだ。
しかし、せっかくメンロスの公爵令嬢と交渉して我が方に引き渡してくれるはずだった娘は、逃げ出したのだ。俺には信じられなかった。
我がエンゲルの精鋭が逃してしまうなどあり得なかったのだ。
俺が納得できずにむしゃくしゃしている時だ。
俺の乗った馬車が破壊工作にあって横転したのだ。
俺はなんと畑の肥溜めの中に放り出されていたのだ。
何ということだ。このエンゲル王の俺か肥溜めの中に放り出されてクソまみれになるなど許せなかった。
それも逃した小娘がこのような無礼を働いたというではないか。
絶対に小娘を手に入れてこの世とも思えぬほど拷問してやる。
俺は帝国に派遣している影を総動員して小娘をエンゲルに連れてこようとした。
絶対に小娘を弄んだ後は生きてきたことを後悔するほどの辱めを与えてやる。
俺は歯を食いしばって影共に命じたのだ。
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