第17話 白馬の騎士が帝国第一皇子だと始めて知りました
ツェツィの船は真っ二つに割れて、ツェツィ含めて皆、海に投げ出されていた。
船は真っ二つになったけれど、木の舟だから大半は浮かんでいた。
周りは断崖絶壁だ。泳いでたどり着けるのがこちら側の岸しか無い。
周りを見回した乗組員たちも仕方無しに、皆這々の体でこちらの岸まで泳いできた。
その中には多くの騎士たちもいた。しかし、思い鎧を着て泳ぐわけにも行かずに、皆鎧を外して泳いでくる。
しかし、そこには剣を腰にさして仁王立ちしたルヴィがいたのだ。
皆すぐに武装解除されていた。というか、自分で剣も海に捨てていたのだ。
船も簡単に真っ二つにしたルヴィの前に騎士たちも全く抵抗する気力もなくしていたのだ。
凄い、さすが、ヴィルの強さは別格だ。
私はこんな強い騎士は始めて見た。
ハウゼン王国にも彼みたいな騎士がいたら絶対に国が滅ぶことはなかったのに……
私は少し悲しかったし、彼のいる帝国が羨ましかった。
「そこの、偉大な騎士よ。そんな亡国の王女になんかついていないで私につかないか。報酬は金貨1万マ枚でどうだ?」
岸に上がるなり、クレンツェ伯爵はルヴィをいきなりスカウトしてきたのだ。
凄い、1万枚って、日本円の価値で1億円だ。
そんなお金は私にはない。私は青くなった。ルヴィが私についてくれているのは昔の幼馴染の好でしか無いのだ。
私なら金貨1万枚つきつけられたら、あっさり裏切るかもしれなかった。
ここでルヴィに裏切られたら私は終わりだ。
しかし、ルヴィは渡しに着いてくれたのだ。
伯爵がそう言った瞬間ルヴィの剣が一閃した。
剣先が伯爵の眼の前を通過して、次の瞬間突風が伯爵を吹き飛ばしていた。
伯爵は砂浜を転がって砂だらけになった。
ドカーン
そして、はるか先にあった崖に命中して崖が崩れていた。
「次に余計なことを言ったら、貴様をぶった切る」
ルヴィは私の前ではっきりと言ってくれたのだ。
私は涙が出そうになるほど嬉しかった。ルヴィには報酬1万枚の金貨なんて到底払えない。
私に払えるものなど何も無いのだ。この体くらいだった。
もっとも私の体は貧相で、よくクラーラに嫌味を言われていたのだ。
「そ、ソニックブレード」
武装解除された騎士の一人が腰を抜かしていた。
「あ、あなたはエルヴィン……」
そう言おうとした騎士の眼の前にルヴィは剣を突きつけていた。
騎士は何も話せなくなった。
「それ以上一言でも言ってみろ。貴様の命はないぞ」
騎士はこくこくと頷いていた。
エルヴィンってどこかで聞いたことのある名前だ。とても大事な名前のように思ったのだが……
私はすぐに思い出せなかったのだ。
「えっ、じゃあ、あなた様は……」
なんとか立ち上がった伯爵は何故か蒼白になっていた。
「も、申し訳ありません」
そしていきなり頭を下げだしたのだ。
「お父様、何しているの?」
ツェツィはキョトンとしていた。
「煩い。お前も直ぐに頭を下げろ」
「えっ、なんで?」
判っていないツェツィはキョトンとしていたが、伯爵がなにか言った途端、真っ青になっていた。
えっ、なんで震えるの?
「どうした、伯爵?」
「も、申し訳ありません。何卒お許しを」
平伏しているんだけど。騎士たちも皆平伏していた。
私は全然判らなかった。
「ねえ、ルヴィ、何故、皆は平伏してるの?」
私が聞くと、
「さあ、なんでなんだろうな。帝国の騎士に手を出すと外交問題になるって驚いているんじゃないか」
ルヴィは笑っていってくれたが、なんか違うと思う。
でも、私にはよく判らなかった。
ルヴィは強いからみんな怖れているんだろうか?
私がよくわからないと思った時だ。
遠くに帆船が入ってくるのが目に入った。
「ルヴィ、あれは?」
「帝国の船だ」
騎士たちが蒼白になった。
もう完全に逃げられないと気付いたみたいだった。
入ってきたのは巨大な帆船だった。3本マストの船が3隻も入ってきたのだ。
帆にはでかでかと帝国のマークを掲げていた。
沖合に船は停泊すると、直ちに小舟を降ろして、何隻もの船がやって来る。
騎士の数は200人は下らないだろう。
凄い多さだ。
「エルヴィン殿下、ご無事でしたか」
「えっ!」
私は降りてきた騎士たちがルヴィを読んだ言葉に固まってしまった。
エルヴィン・バイエルン、帝国第一皇子の名前だったのだ。
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