王太子に婚約破棄されて両親を殺した野蛮王に売られそうになった時、白馬の騎士様が助けてくれました
古里@3巻発売『王子に婚約破棄されたので
第1話 婚約破棄されて、その婚約者が浮気していた相手に頬を張られました
「アデリナ・ハウゼン、貴様との婚約を破棄する!」
私は、アヒム・メンロス王太子に学園の卒業パーティーの場で婚約破棄されたのだ。
私が唖然とした時だ。前世の記憶が一度に私の頭の中に蘇ったのだ。
凄まじい量の記憶だった。私はすさまじい頭痛がしたけど、それどころでは無かった。
私はその瞬間、この世界が私がよく読んだ『メンロスのピンクの薔薇』という小説の世界だという事に気づいたのだ。
この小説のヒロインのクラーラ・アプトは公爵令嬢で元々幼馴染の王太子アヒムと婚約目前と言われていた。しかしながら、近隣国のハウゼン王国の王女アデリナが王太子の婚約相手として留学して来たのだ。見目麗しい王太子を王女が見初めて、強引に対帝国同盟の強化の名の下に婚約してきた。
クラーラは絶望した。
しかも、クラーラは王太子と仲が良いという理由で王女から徹底的にいじめられるのだ。王太子のアヒムはそれを見て助けようとするが、周りの側近たちから同盟のためには助けてはならないと換言されて見て見ぬふりをするのだ。この傲慢な王女はやりたい放題だった。クラーラを呼び出しては、こんな事も出来ないのだとか、婚約者のいる王太子に近づくとは何たることかと攻められて、水をかけられることもあったのだ。
クラーラは王女に蔑まれ、最後は、王女によって高齢の伯爵の後妻にされそうになるのだ。
クラーラはどん底に落とされるのだ。
しかし、天はクラーラを見捨てなかった。アデリナの実家の王家が国民を虐げていたので、国民が反乱、見かねていた隣国のエンゲル王国にハウゼンは併合されてしまうのだ。我慢に我慢を重ねていた王太子がアデリナとの婚約を破棄、断罪してくれた。そして、クラーラは王太子と結ばれてめでたし、めでたし。悪役のアデリナはエンゲル国王に引き渡されて、今までの圧政の罪を背負わされて処刑されてしまうのだった。
私は小説を読んでいる時はアデリナがとても生意気で憎たらしかったので、良かったと思ったのだ。
その時は何も知らなかったから。
でも、待ってよ。確かに私の国で、反乱は起こったけれど、あれはエンゲルにそそのかされた民が反乱を起こしただけで、我が国はそれに乗じて攻め込んできたエンゲル王国に攻め滅ぼされてしまったのだ。
お父様もお母様も国民を愛していたし、決して虐げてなどいなかった。あれは国を占領した後にエンゲルが自分たちを正当化するために流した捏造した噂に過ぎないのだ。
なのに、クラスメイト達はそれを噂として信じてくれたのだ。
それに私は一切、クラーラを虐めたことなんてない。
逆に色々嫌味を言われていたのだ。
「あーーら、アデリナ様。ハウゼン王国ではそれが良いのかもしれませんが、メンロスではそのやり方は間違っておりましてよ」
私は何度嫌味を言われたことか。
王太子のアヒムにしても、私と月に1回のお茶会こそ開いてくれたが、それ以外はクラーラたちと宜しくやっていたのだ。
特に我が王国がエンゲル王国に占拠された後はお茶会すら無くなってしまった。
もっとも亡国の王女など何の価値もないと言われてしまえばそれまでだったが……
「その理由だが、アデリナは私と仲が良いと言うだけで、クラーラを虐めていたのだ」
この王太子、なんてことを言ってくれるのよ。私は虐めたことはないわよ。確かに私という婚約者がいるのだからアヒムにはあまり近寄らないでと最初こそ色々話したけれど、アヒムが止めないのでそれすらおなざリになってしまっていたのに!
「殿下、私はクラーラの事なんて虐めてはいません」
私が反論すると、
「アデリナ、君はもう、王女ではないのだよ。君の国は滅んでしまったのだ。無位無冠の君はクラーラ様と呼ばなければいけないだろう」
アヒムは言ってくれたのだ。
「申し訳ありません。クラーラ様」
私は屈辱を感じながら謝った。
でも、もう、国はないのだ。これからは私も、平民アデリナとして、生活していかなければならない。まあ、それは前世の記憶が役に立つだろう!
そんなことしか、役に立たないなんて、なんて事だ。だって、今まさに、断罪されようとしているのだから、もうどうしようもなかった。
今頃、前世の記憶で小説の中身を知ったところで、どうしろと言うのだ!
「ふんっ、今頃謝っても遅いのよ! この平民のアデリナは王女であったことを良いことに私に何度もアヒム様に話しかけるなと言ってきたのよ」
「それは私が婚約者であったから」
「黙れ! アデリナ、この婚約は元々貴様の国がゴリ押しで言ってきたんだろうが」
「いえ、元々メンロス側が」
私が本当のことを言おうとした時だ。
「おだまり!」
パシーーーーン
その瞬間、私はクラーラに頬を張られていたのだ。
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