ボーイング747は宇宙飛行の夢を見るか?

@sogebu-12

第一章:夢の始まり

第零話:超新星爆発

「世の中には辛いことがたくさんありますが、それに打ち勝つことでも溢れています」

――ヘレン・ケラー


 ピーーーーーーーー

 心電図が大きなアラーム音を立てて、でたらめな波形を作り出す。


「VF!」

「来たぞ―」


 緑色の服を着た医師が叫んだ。

 その医師は2つのオレンジ色の除細動器を持ち出し彼女の胸に押し付ける。ドン! と大きな音が鳴り、血まみれの彼女の体が大きくはねた。


 ピーーーーーーーーー


 なおもアラーム音は鳴り止まない。


「もう一度!」


 ドン! とまた大きな音を立てて、彼女の体が飛び跳ねる。


 ピッピッピッピッピ....


 ビープ音は止んだが、今度は蜘蛛の糸のようにか細い音へと変わる。


「血圧低下」

「血液10単位」


 隣にいた看護師がカチャカチャと血液バッグを点滴台に取り付け、一発で静脈に注射する。


「ルート確保」

「血液吸引」


 ゴゴゴゴ....

 と音を立てて大量の血液が右腹部から吸い出される。

 だが、吸い出すそばから血液があふれ出し、出血源は見えない。


「腹部大動脈が傷ついてる。このままじゃ、心臓が空になるぞ」

「どうしますか?」


 もう一人の女医が声をかける。


「手で止める」


 医師が彼女の血が勢いよく流れ出すお腹の裂け目から、手をつっこむ。


「どこだ....どいつだ....」


 数秒後、手がピタッと止まる。


「見つけた!」


 出血個所を手探りで見つけ、ぎゅっと握ると、そのままベッドの上に跨った。


「行くぞ!」


 彼女は手術室へ消えていった。

 だが、その彼女こと倉田カオルが帰ってくることはなかった。

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