第十四話

 割れた窓から冷たい風が吹く。


 夏だというのに寒気がする。


 静寂に蝉時雨が響いて、それがとてつもなく不協和音に聞こえた。


 その時、ドアが静かに開いた。


 とっさのことに俺達三人は身構える。立ち上がったその時、眼の前にいたのは二人の青年だった。


 片方はメガネのマッシュで、いかにも賢そう。もう片方は茶髪でいかにも馬鹿そうな感じ。一卵性の双子なのか、顔どころか身長も同じだ。


「チッ、なんだよ。外れかー。まぁいいや。時計もらうだけだし」


「そんなこと言っちゃだめだよ。戦う相手にはちゃんと敬意を払わなくちゃいけない。一寸の虫にも五分の魂というだろう? 例え虫けら相手にも経緯を払わなくちゃ」


 あ? こいつさらっと人を虫けら扱いしやがったな?


「兄貴の言ってることたまに意味わかんないからむかつく。とりあえず虫けらには変わりないっぽいからいいけど」


「そのとおり。こんな奴らすぐに片付くさ」


 言ったな。俺と鈴香、翔太はアイコンタクトをとり、それぞれに飛びかかる。俺は馬鹿そうな方に、翔太と鈴香は賢そうな方に。




 まず真っ先に先制攻撃を仕掛けたのは俺だった。まずはドロップキック。相手は怯みはしたものの、ひらりとかわす。


 次は相手から拳が飛んできた。華麗な右ストレート。


 どうやら刃物は持ってないらしく、腕っぷしが自慢のようだ。安心しつつ、俺は左手で拳を受け止める。


「虫けらのくせにやるじゃないか」


「それはどうも。伊達に喧嘩慣れしてないんでね」


「なら楽しみだ」


 お互いに間合いをとり、お互いの出方を伺う。


 チラっと鈴香たちの方を見るとあっちはあっちで苦戦しているようだ。


「よそ見している余裕あんのか?」


 声のした方に目をやると、背後に奴がいた。


 俺は慌てて前転し、攻撃をかわす。


「余裕しかないな」


 そのまま、ローキック。


 相手はジャンプして、かわす。それは読んでいた。


 俺はリーチを活かし、そのまま右アッパーをお見舞いする。


 相手はとっさにガードするも勢いを抑えきれず、そのまま吹っ飛ぶ。よし。


 俺は倒れた相手に背を向け、もう一人の方に目をやった。早く鈴香の手助けをしなくては。


「……まだ終わってねぇぞ」


 立ち上がる彼に闘志が消える素振りはない。


 やはり、時計をとるしかないのか‥。


 俺は今非常に悩んでいる。できれば仲間にしたいのだ。来るべき三銃士戦に向けて戦力アップがしたい。


 しかし、相手は戦う気しかない。やはり喧嘩っ早い奴は血の気が盛んなのだろうか……。


「今度はこっちからいくぞ」


 華麗なステップを披露する彼。そこから左のジャブ、右ストレート。俺は両手で防御の姿勢を取りながら考える。やはりここは優位に立たなけれな。

 

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