第十三話

場に出るカードに一喜一憂する二人。


 その勝負がついた頃、俺は作戦会議をすることを提案した。


「作戦会議?」


「そうだ、これから先なにがあるかわかんない。さっきみたいな三人組にまた襲われるかもしれないし、どんな奴らと会うかもわかんない」


「確かに、スタンガンと懐中電灯じゃ心許ないわね」


 そうだ。今の持ってる武器じゃ、隙をつくことで精一杯で到底まともに殺り合える気がしない。……それこそ刃物とかがないと。


「いいの? それって物理的に人を傷つけるってことだよ? 俺は賛成しないけどなー。やるならやっぱり拳で」


 誰だよ、いざって時に、騒ぐだけ騒いでなにも出来なかったやつは。でも確かにあんまり傷つけたくはない。敵も、味方も……。


 ……だけど。


「いーい? 翔太。相手を傷つけたくはないのは大いに結構。むしろその心意気すごいと思う。でもね、世の中綺麗事だけじゃ生きていけないの。残念なことにね」


 そう。世の中綺麗事だけじゃ生きていけないのだ。表面ばっか取り繕った所で今更どうなるっていうんだ?


「そうだよ……。もう片足突っ込んじまってんだ。このゲームに参加しちまってる、それだけで世間からしたら大犯罪者だ。いや裏のゲームだから世間には公表されないのか」


「とりあえず、私も3人くらい、んで二人共経験あるでしょ? ゲームが始まってから誰か時計を外したことが」


 俺は静かに頷く。


 そうだよ、俺たちもう殺っちまってるんだ。


「どちらにせよ武器調達するならするで探しに行かなきゃなんねぇし、あとは立ち回り方はその時の臨機応変でいっか」


 とりあえず俺と翔太でも戦える武器が必要。そしてもう一個。


 武器ついでに、一つ気になったことあるんだが聞いてもいいか?


「時計が身体から外れたら心臓が止まるんだよな」


「そうね。少なくともGMはそう言っていた」


 だったら時計が身体から外れたら死亡するのは明確。つまりリタイアだ。でも……


「身体から身体が離れた場合ってどうなるんだ?」


 気になったのは、例えば腕時計の場合、多くが片腕にそれを着けるだろう。その場合、仮に左腕に着けたとして、左腕が切断された場合、心臓は止まるのだろうか、ということだ。


 そんな俺の疑問は「さあ? 止まるんじゃない? 心臓」と、鈴香の発言で見事に崩れ去ったわけだが。そりゃあ、そうか。


「なら、刃物で切断したほうが効率的だと考えるやつが出てきてもおかしくない。普通に時計を取るだけなら拘束して、動けなくする必要があるからな」


「確かに、一理あるわね……」


「なになに、どういうこと?」


 やばいやつはこの事実に気づいちまってるってことだ。もしかしたら刃物を振り回している奴がいるかもしれない。それはつまり、そういうことだ。


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