第九話
じゃあ私はパス、と鈴香。
理由を聞くと、有事の際すぐ対応できる人物が一人はいたほうがいい、とのこと。
「ずっと気を張り詰めてるのも大変だし、交替でね」
そう言って彼女はドアの近くに腰をおろすと乾パンを一つ口に入れた。
暗い部屋にも目はだいぶ慣れてきた頃でトランプのカードがよく見える。二人だったら、スピードか、戦争ゲームか……。
「流石に二人でババ抜きはきついよな……?」
「あたりまえじゃん。せめて三人はいないと」
そうだよなぁ……。よし。
「あのさ、翔太。スピードか戦争ゲームだったらどっちがいい?」
俺の問いに翔太は首を傾げる。
「戦争ゲームってなに……?」
やっぱしそうなるよなぁ。マイナーだしな。
「大富豪はわかる?」
「なにそれ?」
「あー……もしかして大貧民って言うてるタイプ?」
「あーそれならわかるよ。2が一番強くって3が一番弱いやつでしょ。あれ駆け引きが楽しいんだよね」
まさかの地域で呼び方ちがうやつだったとは。それはそうとして。
「んまぁ、大貧民にルール似てるんやけど戦争ゲームっていうのはだな‥‥‥まず五種類のカードを使います」
「五種類……?」
「そう五種類。JとQとKとA……そしてジョーカー」
全部ローマ字のカードだね、と翔太が相槌をうつ。
「まず、色分けして、さっき行ったカード達を手札として持っておく。そして、ここで重要なのはカードの相性だ」
「相性……?」
そうこのゲームは一番相性が重要なのだ。
まず手札を1枚裏にしておく。ふたりとも置き終わったらオープン。そしてここで相性……すなわちJが一番弱くてAが一番強い。そのため例えば場にQとAが出た場合Aの勝利となる。
しかし、JとAが場に出た場合、Jが下剋上し勝利を収めることとなる。これだけでも十分おもしろいのだがここにジョーカーが加わることでより駆け引きが成立する。
「ジョーカーはどういうカードなの?」
「よくぞ聞いてくれた……。ジョーカーはズバリ、最強のカードである」
ジョーカーを出した場合、確実に勝つことができる。つまり、最強のカードなのだ。
「あー、そうそう。忘れてた」
「ん?」
「もし、出したカードが同じカードの場合その試合は無効となってやり直しになるのでよろしく」
「やり直しにはなるけど、それも駆け引きに利用できそうだね」
翔太のやつ、賢いのか話が早いな。
「まぁ、とりあえずやってみるか」
まずはお互いの手札を選り分ける。
そしていよいよ1枚目のカードを選び、伏せる。
大体QかKが好ましいな……。翔太はなにを伏せてくるだろうか。まさか一発目からジョーカーはないよな‥。
まぁ、Qでも置いとくか。
二人とも場にカードを置いたのでオープンする。
翔太のカードはKだった。
こいつやりおる……。
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