あの日、星の降る夜空の下で誓いを

一ノ瀬詩音

第1話 悪夢

待って、待ってよ。待ってってば…。」

俺は決して振り向かない。前にひたすら進み、走り続ける。

「はーちゃん、はーちゃん。」

何も見ない。ただ前だけ見て走る。絶対に戻らない。

「はーちゃん!」

「っ。何だよ、ついてくんな。ほっといてくれ。一人にさせてくれ。」

立ち止まり、振り返ってそう俺は告げた。そしてうつむきだす。

「私ははーちゃんの味方だから。いつまでもいつまでも味方でい続ける。だから、だから…。」

やめろ、やめてくれ。そう言うこと言うな。そんなことしたらお前が狙われる。そんなことはさせない。やはりこうするしかないんだ。

「うるせー。黙れよ。お前に何が分かるんだよ。俺の気持ちもわからないくせに、私は味方だよとか、知ったようなこと言ってんじゃねーよ、ムカつくんだよ。お前に同情されるつもりもない。どっか行ってくれ。二度と俺の目の前に現れるな。」

ああ、とうとう言ってしまった。本当はこんなことは思っていない。なのに俺は…。

「うぅ、ぐすっ。ん。そんなごと思ってない。ひどいよ。私はだだ、はーぢゃんを助けたいだげなのに。ぐすっ。う。」

彼女は泣き出してしまった。俺の一言は彼女にとってどれほど傷つくことなのかこの時の俺には何も分からなかった。最低だとしか思わなかった…いやそう思うようにした。

「あのな。泣いて喚いても俺は気持ちを変えるつもりはない。それとはーちゃんて呼ぶのやめろ、ガキっぽいし暑苦しい。うざいから二度と言うな。いいな。」

そう言って俺はその場を立ち去る。彼女は崩れるように座り込んだ。そして多くの涙を流して、蹲ってしまった。微かに聞こえるのは謝る言葉と嫌いを連呼している。

「今のはーちゃんより、今までの優しいはーちゃんの方が大好きだったのに。」

その言葉が最後に耳に入った。

俺は、俺は間違っていたのかな…。 

何をするのが正解だったのだろう…俺は…俺は……………。

「っはぁー。えほっえほっ。ハァ、ハア。またかよ全く。いつまで続くんだよこれ。」

日差しが眩しく照りつけ、鳥たちが鳴いている朝、俺は変な夢を見て、目覚めた。俺にとってはとても嫌で、でも懐かしく、切ない思い出だ。最近は毎日見るようになり、正直疲れている。

「はぁー。ちょうどこの頃だったかな。あいつ、今何してるんだろう。会いたいな。」

そう、それは今日のようなとても暑く、涼しい風が吹き抜ける日に起きた。ある意味事件でもある。

 

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