呪物処分施設に勤務してます。
きゅうひろ
第1話 良くある話
「神社等でお焚き上げをしてもらえば安く済みますが、本当によろしいでしょうか」
わざわざ呪物処分専門施設なんかに来る時点で、断られたか行けない理由があるのは分かるが、規則なので一応は確認を取る。
「ええ、神社に行こうとすると車が故障してしまいまして」
「では、処分料十万円で引受けさせて頂きます。こちらの契約書に目を通し、サインをお願いします」
サインを書いた依頼者は、足早に去って行った。ここから調査と処分を始める。
ファラデーケージ及び、そのまま檻の役目を持つ、銀メッキ銅線で編まれた立方体。その中に今回の人形と計測器のセンサー、ライブカメラを入れる。
部屋を出て、重い扉を閉めて指紋認証と物理ロックを掛ける。電気を消したら準備完了だ。
「測定値異常無し」
「人形に動きありません」
「室内も異常無し」
観察した限りでは異常は発見できない。車の故障は偶然で、本当は呪物では無いかもしれない。しかし、見逃しや、大人しくしているだけという事もあるので、通常通り処分へと移る。
人形をワイヤーと清めた縄で縛り、テルミットの粉末を盛る。5分も焼けば跡形も無くなるだろう。
人形を入れた簡素な棺を火葬する。
中で暴れている様子も無いし、もう大丈夫だろう。熱が治まったら台車を引き出し、灰を写真に収める。
テルミット反応により焼けた台車の耐熱プレートを交換し、残った灰は、掌ほどの小さな壺に入れて安置所へ。
これで処分作業は終わりだ。異常反応が有る事はほとんど無く、有っても抵抗されるような事は数えるほどしか無い。
主に持ち込まれる『推定危険呪物』により、呪物処分施設は成り立っているが、極稀にある『本物』により、命を落とした職員がいる事を忘れてはならない。
呪いは、油断した心にこそ、容赦無く牙を剥くのだから。
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