神様の慈愛
三戸翔馬
第1話 慈善活動
あぁ、なんて無慈悲な世の中なのだろう。
「死のう。」
今日を生きる意味も明日を生きる希望さえも感じない。
この高さから飛び降りれば死ねるだろう。
下を歩く人がいないことも確認した。
あとは一歩踏み出すだけだ。
「よし、いこう。」
その瞬間、なにかが目の前に舞い降りた。
「その命、ちょーだい」
見た目通りの非常にチャラそうな言葉とともに空飛ぶ不思議な男がナンパしてきた。
「だれ?人間なの?」
いくつもの疑問が頭を埋め尽くしたがふり絞られた質問をしてみる。
「見てわからないかな、浮いてるんだよ!人間にこんなことできるかい?」
なんかむかつくがそんなことはどうでもいい。
「人間に見えないから聞いてるんだ」
「ぼくはね、神様だよ。みんなは死神って呼ぶけどね」
死神か。
「なるほどね、それなら君の言動に納得がいったよ。」
「えっ、もう?ちょっと早くない」
「私が死のうとしてるから死神が現れただけでしょ。」
「ちがうよ。言ったじゃん僕は神様なんだよ!」
「死神でしょ」
「それはみんなが言ってるだけでほんとに神様なんだ」
神様と死神に差なんて感じない。本当に神様がいて私の人生がこれならほとんど死神のようなものだろう。
「わかったよ、神様それで要件はなんなの」
「だから命をちょーだいって」
意味がわからない。やっぱり死神だ。
「いやだ」
「なんで?今から死ぬんでしょ?じゃあその命もったいないじゃん。」
・・・。
「・・・だからって君に命をあげるメリットがない。」
「強情な子だね。君のいらないものをもらってあげる。いわばこれはごみ収集みたいな慈善活動なのに。」
「・・・」
「ごめんね。じゃあ、君には特別に寿命と引き換えになんでも願いをかなえる。この契約ならどうかな」
「寿命と引き換えなら願いが叶っても意味ないじゃん」
「寿命をすべてとは言わない。君には少しの間僕の眷属として一緒に慈善活動を手伝ってもらう。それならきっと価値があるはずさ。悪いようにはしないから。」
怪しすぎるがどうせいらない命使う価値はあるだろう。
「わかった。その話のった」
「案外あっさりだな。
じゃあ君の願いを聞こうか」
願いか。
「願いは後でもいい?」
「よし。じゃあこの活動が終わるまで決めておいてね。」
これから私の慈善活動が始まった。
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