抵抗の炎
タケヒコは、王宮の地下牢に幽閉されていた。狭く、薄暗い独房の中で、彼はカヤとの別れを思い出し、苦しい思いに囚われていた。
「タケヒコ様!」
突然、独房の鉄格子の向こうから、リョウの声がした。
「リョウ! どうやってここに?」
タケヒコは、驚きと安堵の入り混じった声でリョウに呼びかけた。
「タケヒコ様、私たちは、あなたを助けに来ました。海虎のメンバーが、王宮の警備の隙をついてここまで案内してくれたのです」
リョウは、興奮した様子でタケヒコに説明した。
「よく来てくれた... だが、カヤはどうなった?」
タケヒコは、カヤの身を案じて尋ねた。
「カヤ様は、クニノミコト様の側近・イクサに連れられて、王宮の奥へと消えていきました」
リョウは、悲しげな表情でタケヒコに伝えた。
「イクサ... あいつがカヤを...!」
タケヒコは、怒りに身を震わせた。
「タケヒコ様、今はここから脱出しましょう。外で仲間たちが待っています」
リョウは、タケヒコを励ますように言った。
「ああ、待たせてはいけないな。リョウ、案内を頼む」
タケヒコは、リョウと共に地下牢からの脱出を試みた。王宮の警備兵の目を掻い潜りながら、2人は慎重に王宮の奥へと進んでいく。
一方、クニノミコトは、王宮の玉座の間にて、イクサからの報告を受けていた。
「主君、タケヒコが地下牢から脱走したようです」
イクサは、緊張した面持ちでクニノミコトに告げた。
「何だと...!? あのタケヒコめ、我が王宮を甘く見るなよ!」
クニノミコトは、怒りに身を震わせた。
「しかし、カヤ様は、無事に我がものとなりました。奴国の未来は、我々のものです」
イクサは、冷酷な笑みを浮かべた。
「ふっ、カヤを手に入れた今、タケヒコごとき、虫けら同然だ。イクサ、奴国中の海虎のメンバーを皆殺しにしろ」
クニノミコトは、狂気の笑みを浮かべた。その瞳には、もはや理性や慈悲の欠片も見られなかった。
「はっ、主君!」
イクサは、クニノミコトの命令に従い、王宮を後にした。
タケヒコは、リョウと共に王宮の脱出に成功した。奴国の首都・那珂の街は、夕暮れ時に包まれており、街灯の暖かな光が2人を迎える。
「タケヒコ様、こちらへ」
リョウは、タケヒコを那珂の街の外れにある隠れ家へと案内した。そこは、海虎のメンバーたちが集結する拠点であった。
「タケヒコ様、無事でしたか!」
隠れ家には、海虎のメンバーたちが待ち構えていた。彼らの瞳には、クニノミコトへの怒りと、タケヒコへの安堵の思いが浮かんでいた。
「皆、無事だったか...」
タケヒコは、メンバーたちを見渡し、安堵の息をついた。
「タケヒコ様、我々は、クニノミコトへの抵抗を決意しました。奴国の未来のために、戦いましょう!」
リョウは、メンバーたちの決意を代弁するかのように、力強くタケヒコに呼びかけた。
「ああ、クニノミコトの圧政から、奴国を救わなければならない。奴国は、海人族と天孫族が共存する国なのだからな」
タケヒコは、メンバーたちの熱い思いに応え、決意を新たにした。
こうして、タケヒコ率いる海虎のメンバーたちは、クニノミコトへの抵抗の炎を燃やし始めたのだった。
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