【9-17回目】

 

【9回目】


 僕一人では、B5Fの軍隊蟻が突破できないため、冒険者のヤンとミレイに頼るしかない。あのオークと対峙させることになるため、死に近づけているという意味では罪悪感は強いが、背に腹は代えられなかった。


 だが、やはりB10Fのオークを突破できない。二人の火力ではあと一歩届かないのだ。自分の非力さを痛感する。


 8回目と同じく、僕はオークの棍棒によって、すり潰された。


 次。


【10回目】


 9回目と変わらない。やはり、オークを突破する手法が思いつかない。


 次。


【12回目】


 他の冒険者を頼る方法では、限界を感じる。B10Fの壁を突破することが出来ない。B10Fで、もたついているようではこの先も不安だ。だが、そんな僕の焦りを嘲笑あざわらうかのように、オークの無慈悲な一撃が僕の身体を粉砕した。


 次。


【15回目】


 他の冒険者に頼れないのであれば、自分が強くなるという手法はどうだろうかと、思いつく。低層の1-3Fでレベルを上げて、一気に最下層を目指すというやり方だ。正直、レベル上げが出来る時間は短時間だが、もし、死に戻りしても、経験値が引き継げるのであれば、最強へと至れる気がする。今回でダメだったら、その手法を試みてみようと決意した。


 ミレイの氷魔法とヤンの正拳突きをオークの巨体にかました後に、僕のナイフでの一突き。だが、その程度では、オークを倒すには至れない。


 二人は転移石で帰還して、僕はダンジョンに残り、オークからの鉄槌を受け入れたのだ。


 次。


【16回目】


 僕はB1Fのスライムやゴブリンの雑魚狩りを繰り返す。もちろん、【隠密】スキルを解除して。盗賊のスキルで便利なスキルがあり、【口笛】というスキルがある。


 これはモンスターを呼び込むスキルだ。このスキルによって、僕の近くにいる低レベルのモンスターを呼び込んでは、ナイフで狩る。モンスターたちは僕に殺される。もし、この中に死に戻りのモンスターがいたのであれば、僕と同じような残酷な運命を辿っているかもしれないなどと、無駄なことを考えながら。


 かなりの時間が経過した。


 だが、あまりに経験値効率が悪すぎる。広範囲魔法でも使えれば、落とし穴にモンスターを落として、一網打尽に倒せるのに。それでも、一体、一体から得られる経験値はごくわずかだ。16回目の僕だけで、レベル上げを成し遂げられるなんて思っていない。


 夕刻ギリギリまで、雑魚狩りを繰り返す。


 経験値集めを夕刻までと定めたのには二つ理由がある。一つは、死に戻りにも条件があるかもしれないということだ。例えば、最長でも一日しか巻き戻すことが出来ないのであれば、追放からスタートすることが出来ずに、レオン達の死が確定してしまうかもしれない。そんなリスクを簡単に犯すことが出来なかったのだ。もう一つは、レオン、マミ、ナイツやキュアの四人を、魔物の手でむやみやたらに蹂躙じゅうりんされてほしくなかった。いくら巻き戻せるにしても、僕にとっては大事な仲間だ。殺されるのをヨシとはしたくなかった。


 だから、現時点でタイムオーバーだ。


 やはり、1レベルを上げるにすら至らない、微々たる経験値。だが、持ち越せると信じて、僕はナイフで自分の首を掻っ切った。


 次。


【17回目】


 結論から言おう。経験値は引き継げなかった。再度、作戦を練り直す必要がある。だが、何も思いつかない……。現在のレベルのまま、最下層まで到達して、ボスを倒さなければならない。


 流石に無理では?


 自分は強くなれないのに、ボスを倒せと?他の冒険者の力を借りても、B10Fが限度だったんだぞ。


 ユニークスキルの説明にあった、輪廻に囚われるとは、こういう状況を指しているのかもしれない。諦めるわけにはいかないし、だからと言って、引き返すことも出来ない。そして、現状を打開する方法も見つけることができない。八方塞がりの状況だ。


 僕は絶望する。レオン達に追放されたあの宿屋の一室で首を吊って自殺した。


 次?

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