金の盾と青い牢獄 第3巻 β版

村岡真介

第3巻 決戦編

 はじめに


 大戦はドーネリアの一方的な勝利に終わったかに見えたが、ゲリラ戦によって戦局は逆転。ドーネリアの兵は敗走し戦争は幕を下ろした。一方カルムは悪魔召喚の儀を行い、憎き敵リーガルに挑む!




   リュドミュラの罠




 宿場町の飲み屋のすぐ近くにボレロのアパートはあった。カルムが中に入る。

「おじゃまします」

 ボレロが閑散とした部屋を見回す。

「まあこれといった荷物もなし、質素なもんさ。世捨て人にはお似合いの部屋だろう。ウォンティアを覚えるとな、全てがどうでもよくなる。飯も酒もタバコも出せる。働く意欲なんか当然なくなり、人間が駄目になっていく。この状態を『生き疲れ』と言うんだそうだ。廃人だよ、有り体に言えば。ウォンティア!」

 ウイスキーの瓶が表れる。

 それを一口飲むと瓶をカルムに渡す。カルムはごくりと飲んでみる。胃が焼けそうなのに驚き、オレンジジュースを出しごくごくと飲み、一息をつく。

「じゃあ、兄者はもう何もいらないというのか。富も名誉も」

「はっはは。そんな人間とは根本的に人種が違うんだよ。そう、リーガルのような奴とはな」

「うーん、そんなもんか」

「ウォンティア!」

 ボレロがグラスを二つ出す。二人はソファーに座ると改めて乾杯をする。

 カルムが上目遣いに探りを入れる。

「兄者の本当に欲しいものを当ててみせようか」

 ボレロが若干心を動かす。

「女だ。それもとびきりの」

 ボレロが手をふりながら否定する。

「女なんか足りてるよ。飲み屋街にいけば腐るほどいる。偽のダイヤでも渡せば一晩中付き合ってくれる」

「いや、それで心の底から満足したことはない。違うか」

 ボレロはうなっている。

「娼婦なんて顔も体もだいたい十把一絡げで、しかも三十より上の女ばかりだ。本当はとびきりの、しかも若い女を抱いて心の底から満足してみたい。これが本音だろう?」

 ボレロが狼狽する。

「仮にそうだとして、どうすると言うんだ?人間を出す魔法なんてないぞ」

 カルムがニヤリとしてウイスキーを口に含む。

「あるんだよ、それが。もう禁じられた太古の昔の魔法だ。お師匠様の家の古文書をあさっていると偶然見つけたのさ。しかしこの魔法はとてつもない魔力を必要とする。つまり」

「悪魔が乗り移ってなければ駄目、というわけか」

 カルムがたたみかける。

「このまま一生どうでもいい女を相手に虚しい夜を過ごすか、これからずっととびきりの女を抱いて一生を終えるか。決断の時だ」

 ボレロは手のひらをカルムの前に出す。

「二、三日考えさせてくれ」

 ボレロはそう言うと頭を抱えた。

 カルムが立ち上がる。

「待ってるぜ。兄者」

 カルムは魔方陣で消えてしまった。

 残されたボレロ。氷をカランと傾ける。真剣に考え始めた。

(権力欲も、金銭欲も、結局はいい女を抱きたい。これにいきつく。それがかなうかもしれない、おそらく最後のチャンスだ。どうする?)

 シャワー室に入った。惑いながら。


 サキヤは難民キャンプに戻ってきた。母とミールと合流する。

 母が言う。

「サキヤ、私とミールはクッキー屋を開こうと思ってるんだよ」

「クッキー屋?なんだよいきなり突然に」

「明日からクレイルの町に行って店舗兼住宅の物件をミールと一緒に探して回るつもりさ。クッキー作りには自信があるからね。繁盛すると思うよ」

 サキヤが心配そうに言う。

「クッキー屋なんて。まあ母ちゃんのクッキーは確かに旨いけど。採算とれる見込みはあるの?」

「なかったら言わないよ」

「私もお母様にクッキー作りを習ったのよ。きっとうまくいくわ」

 サキヤは二人の意気込みを見て、好きなようにさせようと思った。

「いいんじゃない。少なくとも宅地つきなら。それで寒さとおさらばだし。応援するよ。ところで開店資金はどうするの?」

「銀行をあたってみるよ」

 母はこともなげに言う。

「借金で始めるのか。やめといた方がいいと思うけどな」

「大丈夫だよ。母ちゃんに任せといて!三種類のクッキーを焼くんだよ。プレーンでしょ、チョコチップでしょ。それにサキヤの好きなベーコンサンド」

 サキヤは二人が盛り上がっているのを見て、しょうがないかと思う。こんな難民キャンプで不安な日々を送るより、何か目標を持ったほうがいいと思ったからだ。

「じゃあ俺は疲れたんで寝るよ。おやすみ」

「毛布返すよ。寒いでしょ」

「ああ、ありがとう」

 サキヤは眠る。うまくいくように祈りながら。

 翌日、三人は銀行回りに出た。最初の二行は断られたが、三行目が食いついた。

「うーん、パン屋はたくさんあるが、クッキー専門店なんて聞いたこともない。当たるかもしれませんね。目論見書もしっかりしてるし、州兵さんが保証人についてるし、いいでしょう、百万ガネル貸しましょう!」

「やったぁ!」

 手を取り合って喜びあう母とミール。

 こうしてクッキー屋の開店準備がスタートした。


 ボートランド城の前の道にズラリとテントが並んでいる。ドーネリア軍の本隊である。その前に広がる町の路地裏に、オーキメント軍の兵士たちが続々と集結してくる。

 ゲリラ戦を仕掛けるためだ。緊張感が、一気に高まる。

 横からバーム率いるラミル流の魔導師軍団が待機している。

「ウォンティア!」

 バームは大砲を現出させると、砲撃を開始する。他の魔導師もそれに続く。

 朝まだ早いうちから兵士が寝ているテントが爆破されていく。当然ドーネリア軍は騒然となる。そこへ剣を抜いた軍団がせまる!

「押せ、押せー!」

 ジャン率いる一団がドーネリアの兵士たちを斬りふせていく。オーキメントが仕掛けるゲリラ戦になすすべもなく崩れていくドーネリア軍。かなりの兵を削ったところでジャンが手を回す。

「退け、退けー!」

 忽然と消えるゲリラたち。それを聞いたリュドミュラが激怒する。

「何だってー!卑怯なまねしやがって。お前は指揮をしていた男を見たんだね」

「は!しかとこの目で」

 リュドミュラがその男の頭に手をかざす。

「アウディーレ!」

 リュドミュラの脳裏にジャンの顔が刻みつけられた。

 水晶を出し、呪文を唱える。

「クウァエレ メル」

 リュドミュラが集中し顔を思い出す。

 水晶にはビリー大佐の家に集まっている将校らの姿が。

「いた!アウディーレ!」

 ジャンから様々な情報を抜き取っていくリュドミュラ。その中に面白い記憶が。

「金の盾!こいつは金の盾に関係している!」

 さらに記憶を深く辿ると、サキヤの顔が。

「こいつが金の盾の持ち主かい。まだガキじゃないか。名前はサキヤ・クロード。少尉。あの怪物と戦った?とにかく面白い見っけもんだよ。こいつを誘い出す方法は」

 コツコツと机を叩くリュドミュラ。そしてニヤリ。

「これでいってみようか」


 サキヤのテントにジャンとバームがやってきた。サキヤはピリアに唐辛子をやっている最中だった。

「サキヤ、剣とその金の盾を持ってついてきてくれ」

「分かった」

 サキヤは軍服に袖を通すと、ジャンとバームのあとを追う。

 難民キャンプを離れた所で、ジャンが振り返える。

「サキヤ、これから大将首を取りにいくぞ」

「よし!」

 敵はもう眠っている。城下町の路地裏に着いた。ジャンが城の様子をうかがっている。

 三人は門から中に入る。しかし衛兵もいない、おかしな雰囲気を感じとるサキヤ。

 その時!

「シレンティウム!」

 サキヤは動けなくなった。

 ジャンとバームは全くの別人に変化し、こちらを見てへらへら笑っている。

(なんだと!ワナだったのか)

 リュドミュラが二階からすーっと降りてきて、顔を近づける。

「あんたにはいろいろ聞きたい事があるんだよ。おい。連れていきな!」

「はは!」

 サキヤは四人の兵士に担がれ、城の中へ引きずり込まれていった。




   拷問




 サキヤはガランとしたレンガづくりの部屋で、後ろ手にロープで縛られ椅子にくくりつけられている。

 目の前にはテーブルに置かれたランプとドーネリア軍の上官らしき女。後ろには二人の男が木剣を持って待機している。

「始めるよ」

 リュドミュラが低い声で尋問を開始する。サキヤはあきらめ顔で死をも覚悟した。

「名前は」

「サキヤ・クロード」

「階級は」

「少尉だ」

「ゲリラ作戦の詳細は?」

「知らない。俺は休暇中で家族と銀行回りをしていたからだ」

 ふんぞり返っていたリュドミュラが激怒する。

「知らない?そんな大切なことを尉官が知らないはずないだろう!」

 リュドミュラがあごを上げると、肩にきつい一打が。

「くそ!知らないものは知らないんだよ」

「もういいよ。アウディーレ!」

「何の呪文だ」

「お前の心を読んでいるのさ。おおまかなことは知ってるじゃないか!」

「本当におおまかなことだけだよ!」

「おやり!」

 バーン、バーン、バーン

 いたるところを三発殴られる。

 リュドミュラの目が光る。

「さて、本題といこうか。この金の盾はどうやって手に入れたのさ。ラミル流の使い手なら考えられなくもないけど、あんた魔導師でもなんでもないだろう」

「なんとなく入って、なんとなく取れたんだよ」

 また三発食らう。

「痛い痛い!くそ!」

「吐かないのならいいよ。アウディーレ!」

「卑怯だぞ!人の心を勝手に読むなんて」

「うるさいわね、集中してるんだからおだまり」

 リュドミュラが右手をサキヤの頭にかざす。

「なになに白く光る矢?こんなもんなの、第一の試練て?次は温泉、こりゃきつそうだね。小人との対決、最後は盾で防いでるじゃないか!こんな簡単なもんなの?何百年も破られていない、三つの試練って!」

 サキヤがぼそりと言う。

「何かが導いてくれたんだ。大いなる意志とでもいうのかな。そうとしか考えられない」

 まっすぐにリュドミュラが、サキヤの目を見て問う。

「神の導きだとでも言うのかい?それが本当なら、あんたは死なずにここから出られるとでもお思い?」

「もちろんさ」

「ふん、やりな」

 ドスッ!バシッ!

 顔面を殴られ、蹴り飛ばされ、容赦のない拷問が始まった。

 そこに表れる魔方陣。

 カルムが表れたのだ!

「戦局の様子を水晶で見ていると、ここにたどりついた。大将の姉さんよ。この戦争勝ったと思っているみたいだがな、負けるぜ、ドーネリアが。その証拠にガレリアの様子を見てみるんだな。壊滅している。風は明らかにオーキメント側に吹き始めた」

「な、何だってー!」

 リュドミュラが、水晶を出しのぞいている。

「ほ、本当だ。しっちゃかめっちゃかじゃないか!か、母ちゃん、リドル、フィルサス!」

 立ち上がるリュドミュラ。一目散にその場から消えて、二度と戻ることはなかった。

「さて、こいつはあずかっていく。戦友なんでね、放っておくことはできない」

 人差し指をくるんと回すとサキヤを縛っていたロープが全て外れた。気を失っているサキヤを宙に浮かせ魔方陣の上まで移動させると、サキヤはかき消えた。

 隅で震えている兵士二人。

「お前たちも目障りだ。ムターティオ!」

 二人はネズミになり、何処かへ消え失せた。

「サキヤは神に導かれている?ふふ」

 金の盾を持ち、カルムもその場を後にした。


「サキヤ遅いねー」

「せっかくお店見つかったのに。ねぇお母様、ベルトさんに言って昼間は改装工事でいないって伝えとけばいいんじゃないかしら。そうしたら安心よ」

 母は、ため息をつく。

「せっかくこれからだっていうのに。じゃあまだ二階の宅地には移れないね。ここで待つしかないみたいだね」

 ミールが励ます。

「もう大分寒さもやわらいだし、あと少しの辛抱よ」

「あんたは楽天家だね」

 恥ずかしげにミールが呟く。

「サキヤと会ってから性格が変わったみたい」

「おー、お熱いねー。はっはっは」

 母は、楽しげに笑った。


「撃てー!」

 ゲリラ戦は夜にまでおよぶこともあった。確実に削られていくドーネリア軍の兵士たち。

「撤収ー!」

 そして忽然と姿を消す。

 ドーネリアの兵たちは寝ることもできない。互いに喧嘩が絶えなくなり、最後は斬り合いまで起こる始末だ。

 それを見ていた少尉が上官に耳打ちする。

「読まれました?あの文を」

「ああ、ガレリアが壊滅したというやつか」

 さらに声を落とす。

「大将のリュドミュラのやつも家族を探しに帰ったとか。戦争を叫んだエレニア王も死に、いまやなぜこの戦争をしているのかさえ分からなくなりました。補給線も途絶えこのままでは確実に全滅です。引き上げた方が賢明かと」

 それを聞いた少佐は目をつぶって腕を組む。

「うーん、ここらが限界か」

「そのように思いますが」

「分かった。明日中将に進言しよう。よくぞ言ってくれた。今夜は早めに寝ろよ」

「は!」

 次の日朝から将校たちが集まり、作戦会議が開かれた。

 中将が宣言する。

「もはやエレニア王もいない。補給線も断たれた。進退きわまった。全軍を退く!」

 ドリーナ峠に向けて退却していくドーネリア軍。そこへ砲撃の嵐が。

 ドガーン!

 ズガーン!

 歩いて退却していたドーネリア軍だが、皆あわてて走り始めた。

 大笑いするオーキメント軍の兵士たち。ドーネリア側は戦慄していた。

「ここまで攻めておいてむしろ逆に追い詰められていたとは!」

 ドリーナ峠に着くと今度は前から砲撃が!

 ドーン!

 バゴーン!

 次々と倒れる兵士たち。数百名が逃げ延びたものの、ほぼ全滅という末路をたどった。

 こうして戦局は見事に逆転。オーキメント紛争は幕を下ろした。


「目が覚めたか」

 サキヤがベッドから起き、庭に出てみると、男が何かを壁に作っている。

 男が振り返ると懐かしい顔が。

「キミは確かカルムじゃないか!?」

「まだ少し顔が腫れてんな。」

 サキヤは思い出す。

「そうだ、おれは確か拷問にあっていて、あとは思い出せない。キミが助けてくれたのか」

 壁に四ヶ所鎖を取り付けているカルム。

「気まぐれさ」

「あ、ありがとう、死ぬのを覚悟したよ」

 カルムが笑う。

「人間そんなに簡単には死にはしないさ。だが酷い怪我だった。だれが治してくれたと思う?」

 サキヤはあれこれ考える。カルムが言う。

「そこにある金の盾の小人だよ。あの爺さんメールド流だけじゃなくて、ラミル流も使えるみたいだ。『こりゃいかん!』ってヒールの魔法でお前を治してたよ。感謝するんだな」

「そうか、ピリアが」

 ガツガツ

 カルムは鎖を引っ張っている。

 サキヤがそれを見て質問する。

「何を作っているんだ?」

「張り付けの壁さ。これからある儀式を行う。そのために必要なんだ」

「儀式?」

「なんなら見学していくか?」

 サキヤは少し興味が湧き、うなずく。

「見てみよう」

 軽い気持ちで同意するサキヤ。まだ事情を全く知らない。

 そこへ庭に魔方陣が光り、その上にボレロが表れた。

「来てくれると思ってたよ」

「準備はいいようだな」

 カルムがボレロと握手をする。

「ところでこいつは誰だ」

「見物人さ」

「ふーん。まあいいだろう。 インウォカーティオの経文が書庫にあるはずだ。探してくる」

 上の服を脱ぎ、壁に張りつけた鎖で両手両足を縛るカルム。

 これから儀式が始まる。




   悪魔召喚の儀




 ボレロが前に出て鎖を絞め直し、一つ一つに鍵をかける。これでカルムはほぼ動けない状態になった。

「後悔はしないな」

「ああ、おれは大陸一の魔導師になってやる。そして」

 ボレロが配置につく。

「リーガルを殺す!」

「お前には話してなかったがな、あの魔導師」

「なんだ?」

「あの怪物を作り出した魔導師よ」

 カルムが身を乗り出す。サキヤも。

「名をゼネ・コルヘという。リーガルの手下だ」

 血相を変える二人。サキヤが叫ぶ。

「じゃあ、あれも命じたのはリーガルか!」

「そういうことだ」

 ボレロが淡々と答える。

 カルムが肩を震わせている。

「両方とも殺してやる!婆ちゃんと姉ちゃんに誓ったんだ! やってくれ。兄者!」

「その前にお互いに眠らなくなる魔法を。クスシターティオ!」

 覚醒の魔法を互いにかけあう。

「では参る」

 おごそかにボレロは経文を開き詠唱を始める。しばらくするとカルムが首をふり、暴れ始めた。

 やがてカルムは下を向き何か黒いものを大量にはきだした。それはおびただしいほどの数のムカデのむれだった。

「うわー!」

 サキヤが叫ぶ。

 ムカデはやがてカルムを覆い尽くしてしまい、カルムの全身に噛みつく。

「うぎゃーーー!」

 始めてから三十秒で、カルムは後悔をした。まさか自分の一番嫌いな虫が口から出てくるとは。予想外の責め苦にガクガク震え、ついに小便を漏らしてしまった。

 しかし祖母、姉、キリウムの顔が脳裏に浮かぶと、不思議と力が湧いてくる。やがて少しづつ慣れていった。

 このような責めが一時間ほど続くと、ボレロの詠唱のトーンがかわる。するとムカデがすっぱり消え失せ、今度は業火がカルムを焼き付くす!

「死んでしまうぞ!」

 サキヤが叫ぶも、ボレロも絶世の美女がかかっている。やめる訳にはいかない。

 炎は間違いなくカルムを焼きつくしている。熱さ、痛み、苦しみは本物である。しかし不思議なことに火傷をしない。

「あー!」

 カルムは声にならない叫びをあげ続ける。時おり体を狂ったように動かす。火あぶりの刑がこんなに苦しいとは。気絶しそうになるが、できない。あまりにも苦しすぎて。

 そんな一時間が終わったら今度は冷気である。これはさほどでもないと思いきや、体中が震えて身の置き場がない。

「うー」

 体に霜がつく。凍てついたその身をよじり、心の中で叫び続ける。

(助けてくれー!こ、これが七日七晩も続くのか!)

 意識が散漫となり時おり遠退く。通常では明らかに凍死しているであろう冷気にただただ耐えるしかない。「やめてくれー!」と言ってもボレロが無視するだろう。お互いにやめないと誓ったのだから。

 虫、炎、冷気の三獄が一巡した。またムカデに戻る。

「ごぼぁー!」


「サキヤ、五日間もどこに行ってるのかしら」

 ミールが心配してつい口にする。もうこの言葉は言ってはいけないことなのに。

「軍人さんにはね、いろいろあるんだよ」

 母も同じことしか言わない。

 そこにジャンとバームが表れた。

「朗報だぞ、お二人さん。サキヤは生きてる!」

 二人の顔が輝いた。

 バームが言う。

「おれの部下に、メールド流の使い手がいてな、サキヤの居どころを調べさせると、なんとカルムの家にいるみたいなんだ。カルムは何か儀式のようなものをうけていて、念波でサキヤに問いかけるといま非常に重要な事態なので離れる訳にはいかないそうだ。なにやら父の復讐がかかっているらしい」

「父ちゃんのかい?」

 フラウが、身を乗り出す。

「ああ、あの怪物を生み出した魔導師、そしてそれを影で操ったリーガルという男。この二人を抹殺するそうだ」

 ミールが心配げにバームに聞く。

「それは危ういことなの?」

「おそらくな。儀式はあと三日間で終わるということなんで、そのころおれたちも合流するつもりだ」

「気をつけてね、無理するんじゃないよ」

 フラウのねぎらいの言葉に、

「ああ、分かっているよ。母上もミールも体を壊さないように。では行ってまいります」

 ジャンとバームが敬礼をし去っていった。

 緊張の糸が切れ、泣き出すミール。フラウはそんなミールを優しく抱きしめた。


 六日目に入った召喚の儀式。カルムもボレロも疲労困憊している。

 ムカデと冷気には慣れてしまった。意識を別の世界に飛ばすのだ。すると現世での苦しみはやわらぐ。心ここにあらずといった感覚か。

 しかし火あぶりだけは慣れない。最強の苦しみがカルムを襲う。

「ぐう」

 もう、声すら出ない。しかしあと一日。その思いだけがカルムを支えている。

(ここまで来たんだ。どうか成し遂げてくれ)

 祈り続けるサキヤ。

 七日目がきた。不眠不休でボレロのほうもふらふらだ。

 そこへ庭の隅に魔方陣が出現し、ジャン、バーム、そしてもう一人知らない男が表れた。

「あ、悪魔と戦うんでしょ?そんな恐ろしいこと。私は約束通り、これにて失礼させていただきます」

 男はそそくさと帰って行った。

 ジャンがサキヤに聞く。

「魔力を上げる儀式だって?」

「らしいね。もう二人とも七日間何も口にしてない。あと半日耐えれば終わるらしいんだけど」

 ジャンとバームは驚く。カルムが真っ黒な虫で覆われていたからだ。二人、よく目をこらすと、

「ギャー!ム、ムカデだ!なんだよこの儀式」

「まだ火あぶりと、極寒の地獄もある。この三獄がカルムを襲っている。成功するように祈るしかないよ。おれたちに出来ることは」

 サキヤは、もう達観している。

「そ、そうか。パンとウインナー買ってきたんだがな、あの二人に悪いな。家の中でこっそり食おう」


 深夜になった。ついに十二時を迎える。

 するとカルムの前になにか黒い影のようなものが表れた。

 カルムが瀕死の気力をふりしぼって「インウォカーティオ!」と呪文を唱える。黒い影はするするとカルムの中に引きずり込まれていった。

 カルムがみるみる元気になる。右手を見ると鎖が砕けちり、左手を見るとまた鎖が砕ける。

「これだー。この感覚だー!おれの求めていたものは!気力が充実し、なにも恐れることのない境地。これでリーガルと対等だ!必ず復讐してやる!」

 悪魔召還の儀式は終わった。

 一同が見守る中、「フレア!」と唱えると、大きなもみの木が一瞬で燃え上がり炭になった。

「兄者よ、約束を果たそう」

 へろへろになり座り込んでいるボレロ。

 カルムが呪文を唱える。

「ヒウマノ!」

 するとボレロのまえに真っ白な衣装をきた、とびきりの美女が表れた。しかも若い。二十歳前後だ。

 ボレロは狂喜し、女の手をとった。

「頑張れよ、カルム。応援してるぜ。女はいただいていく。じゃあな」

 ボレロは魔方陣を出すと女と一緒に消えてしまった。

 サキヤはカルムとハグをする。

「終わったのか。よく頑張ったな」

 カルムが鋭い目をして答える。

「まずはコルヘって奴を地獄送りだ。そして」

 カルムが前に倒れる。支えるサキヤ。

「覚醒の術をといて、二、三日寝たほうがいい」

「ああ、すまない。お二人さんも来てくれてたのか。庭の隅に軍が持ってきた一億ガネル入ったバッグがある。それで飲み食いしていてくれ。おれはシャワーを浴びる」

 ふらふらと家の奥に向かうカルム。バームが後ろ姿を見て言う。

「身内を殺された痛みはあのような拷問も乗り越えさせるのか。いたたまれないな」

 サキヤはバッグから金貨をいくらか掴み取り、二人に告げる。

「近くの商店街で臨時のバザーが開いている。そこで食料が調達できる。出発しよう」

「もう夜中だぜ。大丈夫か」

 ジャンの問いかけに

「元居酒屋の店があって二時まで開いている。ハンバーガーが食えるよ」

 三人は夜の街に出た。街は瓦礫の山だ。戦争の爪跡から復興するのに、まだ長い年月がかかりそうだ。




   涙の復讐




「クッキーの家」

 店の名前はこれにした。なんのひねりもないが、分かりやすさを第一にしたのだ。

 もとはピザ屋だったこの店、窯もそのまま使える。それになんと言っても二階が住居になっているのがありがたい。安い簡易ベッドと布団を二セット。これで春といってもまだまだ寒い中を暖かくして眠れる。

 最終的なメニューはプレーン、チョコチップ、ベーコンサンドに加え、ココア、塩味の計五種類。前日から道ゆく人にチラシを配り、今日十時から開店となった。

 母はクッキーを焼く作業に大わらわだ。

 ミールが恥ずかしげに、勇気をふりしぼって声を出す。

「いらっしゃいませー!」


「ゼネ・コルヘと言ったな」

 あれから二日、カルムはこんこんと眠り続けた。今日の朝やっと起き出してきたのだ。

「ああ、間違いない」

 するとカルムは水晶台の前に座り、呪文を唱える。

「クウァエレ メル ゼネ・コルヘ」

 男の顔がはっきり見える。コルヘは仲間たちと一緒に酒を飲んでいる。

「アウディーレ!」

 カルムがコルヘの頭を探ると、カリムド教前の宿場町であるらしい。なんと総本部の神父である!

「腐ってやがる。カリムド教は」

 少し疲れたようなカルム。サキヤが心配そうに言う。

「休んでからいくか」

「いや、今から行こう」

 ふらふらしたまま、庭に魔方陣を現出する。カルム、サキヤ、ジャン、バームの順に魔方陣から消える。

 四人は大通りに表れた。静かに酒場に進む。横にはあの、カリムド教の総本部が暗闇の中そびえ立っている。

「ぶっ潰してやる!」

 酒場には普通の客のふりをして入った。早速カルムがコルヘに向き直り聞く。

「お前がコルヘだな」

 コルヘは異変を感じ、素早く盾の魔法「スクートゥム!」と唱える。

 しかしカルムはなんとその喉に、五本の指を突き刺した。驚いたのはコルヘの仲間たちである。三人がかりで二人を引き剥がそうとする。それを見てジャンが剣を仲間たちの顔の前に出す。三人が大人しく引き下がる。

「グー!」とうめくことしか出来ないコルヘ。カルムの指は喉深くに達した。飛び散る鮮血。

「こ、これが悪魔の力!」

 サキヤはただその光景を見ているしかなかった。身内をあの怪物に殺されたのは自分も同じだ。

 カルムの指はついに首の後ろの皮を突き破った!

 その顔は醜く歪み、人を寄せ付けない。

「人の命を虫けらとしか思っていないお前のような奴は」

 そして首の骨を握る。血が流れる。コルヘはもう虫の息だ。

「これがふさわしい死に方だー!」

 ボギィ!

 首の骨が折れた音がした。

 コルヘは息絶えた。

 鬼のような顔をしながら大粒の涙を流すカルム。

「ばあちゃん、姉ちゃん」

 サキヤも父を思い出し、つつーと涙をこぼす。

 手を首から抜き出し、上を向くカルムは一言。

「おれを止めることはもう誰にも出来ない」

 そう言うとがくりと膝をつく。倒れそうなところをバームが抱き止める。

 そのまま気を失うカルム。

 あとに残された仲間はただガクガク震えている。

 ジャンが剣をしまう。

「行こう」

 四人は店をあとにした。


「いまコルヘが死んだな」

 ここはカリムド教の地下深く。教皇リーガルがぼそりと呟く。

「なんと、あれほどの使い手が」

 ニムズは驚き、リーガルの顔を見る。

 リーガルは水晶をのぞきながら、血だらけのカルムをじっと見つめる。

(こいつもあの七日七晩の地獄に打ち勝ったか)

 リーガルは自分の半生を思い出していた。

 田舎の農家の家に生まれ、貧しい子供時代を生きてきた。食べるものも少なくいつも腹をすかしていた少年のころ、口減らしのため辺境の協会に預けられた。神父になると食べものに困らなくなるという口実で親に捨てられたのだ。

 それからは親を呪い世を呪い、生まれて来たことさえ呪い続けた。最下層の神父になると、その呪いは、やがて野望に変わっていった。(教皇になってやる!) と。そのためには上の邪魔な奴等を全員潰していくしかない。書庫にあったメールド流の本で独学で魔法を身につけ、上へ上へと昇っていった。しかし魔法が通じない男が表れた。部下を使い探査をすると、なんと本で見た悪魔召還の儀式を行い、悪魔の力を持ってカリムド教を手中にしていた、前教皇であった。

 リーガルは決意する。少なくとも同じ力を手に入れなくてはならない。それはもう執念であった。悪魔召還の儀式を行い、七日七晩の地獄を味わい、ついに悪魔が乗り移った。そしてその夜がきた。寝室に忍びこみ無防備なところを狙い、頭の内側を狙い小さな爆発を起こした。脳内出血であっけなく死んでしまった前教皇。副教皇だったリーガルは、そのまま教皇の座を手に入れた。

 しかしリーガルにとってはそこがゴールではなかった。カリムドの十三戒など取っ払い、世界を手にすることを夢見るようになっていった。

 いまはまだその端緒にいるにすぎない。

 生きてきた道筋をたどるリーガル。ワイングラスを揺らしながら、前の老いた肉体を思い出す。

 肉体の衰えは魂の永続性に比べはるかに早い。

 こんなところでぐずぐずしている場合ではないのた。

 量子の海に生きていた時を思い出す。そう、これは悪魔の記憶だ。

 あの頃は平和だった。平和であるがゆえに退屈だった。次第に争いを望み、この一見巨大に見える街が小さな仮想空間であるのを思うとき、猛烈に外の現実世界で暴れてみたくなった。

 リーガルに召還されると魂の融合を果たし、いまこうして望んでいた戦争の最中にいる。

「ふふふ、あっはっは!」

 突如笑いだしたリーガルを困惑の表情で見るニムズ。

「なにかおかしなことでも?」

「ふっ、おれはたまに自分の犯したことに戦慄を覚えることがある。そうは思わんか、ニムズよ」

「戦争というものはそういうものかと」

 リーガルは唇を歪め、またワインを口に注ぎ込んだ。


 カリムド教の総本部にほど近い宿屋で夜明け前に目を覚ましたカルム。横のベッドでサキヤはまだ熟睡している。

 ベッドの中で考える。三人はメールド流の魔導師ではない。自分とリーガルの戦いに巻き込まれて、命を落とすことも十分考えられる。ここは一人で挑むしかない。

 リーガルとの決戦を前にして、様々な思いが心の中を行き交う。

(おれはやれることは全てやった。思い残すことはなにもない)

 ぐっと拳を握りしめ、サキヤの横顔を見る。

(もしおれが悪魔でなかったら、よき友になれたものを)

 上着の軍服に身を包み、静かに部屋を出ようとした時、後ろから声が。

「一人でかたをつける気か」

 金の盾のへりに座っているピリアである。

(なんだこの小人は)

 と、目を細めるカルム。

「金の盾は持っていかんでもいいのか」

 ピリアの問いかけに顔を険しくするカルム。

「必要ない。それはサキヤのものだ」

「ならばもう何も言わん。慎重に行ってまいれ」

「分かった」

 そっと宿屋を抜け出し、そこで魔方陣を出す。そして消える。リーガルとの決戦のために。


 朝がきた。サキヤがジャンの部屋に倒れ込む。

「カルムがいない!」

「何だって!一人で行きやがったのかあいつ」

 バームが起き上がりながら言う。

「魔導師同士の戦いだからおれたちを巻き込むことを心配したんじゃないかな」

 サキヤが焦る。

「とにかく総本部へ急ごう!」




   諸悪の根源




 三人は走る。カリムド教総本部を目指して。

 総本部前の広場についた。剣と槍を抜く三人。

 その時総本部の扉が開いた。出てくるリーガル。

 手に何かを持っている。それをサキヤらの方に放り投げる。何だとよくみると、皆絶句した。

「カルムー!」

 カルムの頭部だったのだ!

 リーガルに殺されたカルム。その顔は目をひんむき口を大きく開け、苦悶の表情で固まっていた。

「あ、あー悪魔めー!」

 どれだけの拷問を受けたのか、それだけで察することができた。

 リーガルはにやついている。

 サキヤは反射的にリーガルに向かっていった。短剣で首を跳ねようとしても盾の魔法に弾かれる。

「フレア!」

 炎がサキヤを襲うが金の盾が防ぐ。

 ジャンもバームも構えたまま動かない。いや動けないのだ。二人とも家族がいる。子供の顔が脳裏に浮かぶ。悪魔に挑むのは無謀すぎる。

 ピョンと出てきたピリアが盾の上に腰かけて言う。

「手詰まりのようじゃのう」

 するとなにやら念じ始める。

「・・・・・・・・・!」

 聞き取れないほど小さな声で呪文のようなものを発っするピリア。

「おい、バームとやら。ラミル流のあの魔法を使ってみい」

 バームが直感的に理解する。

「テンデラー!」

 リーガルに決死の勢いで走り込みながら、槍を突き出すと三倍の長さに槍が伸び、なんとリーガルの腹を突き破った!

「ぶふぅ!ぐっスクートゥム!」

 リーガルが悶絶しながら盾の魔法をかけるが、ピリアが叫ぶ。

「もうその手は使えんぞ、観念せい!」

(ピ、ピリアって、一体?)

 それを見てジャンも前に出る。

「クレピタス!」

 リーガルの必死の反撃がジャンに迫るが金の盾がサキヤの意思とは関係なくジャンの前に行き、爆発を防ぐ。

「おりゃー!」

 ザクッ!

 ジャンの剣がリーガルの肩口を捉えると、リーガルの右手が吹き飛ぶ

「くわーっ!おのれ!」

 右手は吹き飛んだがそこに右手の黒い影のようなものが。

「サキヤ。ボケっとしとらんと行かんか!」

 目の前で起きている信じられないような光景に、ぼうっとしていたサキヤに再び闘志が湧く。

「うわー!」

 サキヤの短剣が再びリーガルの腹を突く。槍を抜いたバームがその心臓を貫く!

「ぐふぉっ!」

 リーガルが崩れ、片膝を地面につく。

「くそっ!な、何なんだその小人は?スクートゥムを剥がすとはー!がはっ」

 口から大量の血を吐き出すリーガル。体を揺らしながら前を向く。

「こ、こんなところでは殺ら、れん、ぞ……」

 ズンッ!

 ジャンがその首を落とした。前に転がる首。

「や、やったか?」

 バームがジャンに聞く。うなずくジャン。

「ああ、これで、おだぶつだろう」

 ジャンが剣をしまう。しかしその首にも黒い影が。

 サキヤが気づく。

「この黒いものは一体?」

 すうっと後ろに下がるその黒い影。リーガルの体から離れるとリーガルは前のめりに倒れた。

「あれが悪魔の魂よ。剣や槍ではどうにもならんわい」

 黒い影は静かに天に登っていった。

 サキヤが叫ぶ。

「じゃああれがまた人間に取りつけば、第二のリーガルが生まれる!」

「あんな小悪魔ほっとけ」

 ピリアの一言にサキヤはピリアに噛みつく。

「あれが小悪魔?あんなに死者を出したのに!?」

「まあ、大元を絶つしかあるまい」

「大元って、まさか」

「そのまさかじゃ」


 一仕事を終えて放心状態のジャンとバーム。

「カルムには可哀想なことをした」

 バームがため息混じりに呟いた。

 ジャンがピリアに問う。

「ピリア、あんたもしかして神のようなものか?」

「そうじゃのう、ホッホッホ」

「とにかくカルムの遺体を探しにいこう」

 バームの言葉に皆うなずき、総本部へ向かった。


 サキヤたちは総本部の内部に入った。どうやら何人かの人間が一部始終を見ていたらしく、神父らは皆逃げ惑い声をかけようにも叶わない。

「あのドアに進むのじゃ」

 なんとピリアが道案内をかって出た。

「つきあたりに階段がある。それを地下へ」

「そこを右に」

「ずっと奥のドアを開けてみい」

 一同、その部屋に入ると驚愕した。手足がバラバラになったカルムとみられる遺体が散らばっていたのだ。

 嗚咽するサキヤ。

「お前のことは一生忘れない」

 カルムの遺体を一ヶ所に集めると、ピリアが前に進み出る。

「フレア!」

 燃え上がるカルム。皆で最後を見届ける。

 バームがリュックを出して、遺骨をかき集めそれを背負う。

「帰ろう」

 リーガルを倒せた喜びと、カルムを失った悲しみが半々。

 胸の内に大きな重石がのしかかりながら、ピリアが出した魔方陣でボートランドの難民キャンプへ帰っていった。


 サキヤが自分のテントに帰ると置き手紙が。そこには州都クレイルの商店街の大まかな地図と、クッキー屋の場所が書かれてあった。

 クレイルの町に入っていくサキヤ。書いてある通りに商店街を進んで行くと、

 あった!「クッキーの家」だ。サキヤは小走りで店の前に行くと、まだ十日ほどしか経ってないのに、懐かしい顔が。

「ミール!」

 ミールは一瞬目を見開き、カウンターから出てきた。

「サキヤ!」

 と叫びながらサキヤに突進し抱きつく。クッキーの甘い香りがした。

 そして人目も気にせずに強いキス。ミールは泣き声で今度は怒りだす。

「突然いなくなっちゃって、本当に心配してたんだからー!」

 サキヤがなだめる。

「すまない。もう黙って行くことはしないから」

 サキヤとミールはクッキーを焼いているフラウのところへいく。フラウはクッキーを焼く手を止め、静かに抱きあう二人。

「正直、今回は死を覚悟した。それも二回も」

「そうかい、いろいろあったんだね」

「父ちゃんの仇を討ってきた。」

 それを聞き、涙ぐむ母の肩に手を置くサキヤ。

 ようやく張りつめていた心がほどけていった。


 ビリーの家で三人がリーガル教皇を倒してきたお祝いのパーティーをしている。

 サキヤはミールと参加している。

「と~にかく恐ろしいんだ。リーガルって奴は!」

 ジャンが皆にリーガルとコルヘとの戦いを朗々と語っている。悲しい魔導師カルムについてもつつみ隠さず。

 みんな戦争の本当の黒幕を知り、顔を青くしたり赤くしたり。

「完全に手が出なかった。おれたちは絶望的な戦いを強いられた。その時に表れたのが、金の盾の精ピリアだった。みんな拍手を!」

 しーんとしている。呼ばれたからといって素直に出てくるほど単純な爺さんではない。

「ま、まあ恥ずかしがっているんだろう。その盾の精が」

 サキヤとミールはそんなことより、ずらりと並んだ料理に夢中だ。

「以上でおれたちのあの戦争の黒幕退治は終わりだ。ご静聴に感謝する。ありがとう、ありがとう!」

 話し終えたジャンが満足げにサキヤに近付く。

 食事を子どもに取ってやっている。

「ところでさっきのピリアと話したという最後の倒すべき相手のことだが」

 サキヤが顔を曇らせる。

「あの、リョウシサーバーとかいう青い棚みたいなやつを壊してもらわないとまたリーガルみたいな者が表れてしまう。ピリアが言うには番人のヨブ・シモンこそが倒すべき相手なんだそうだ。おれは大司教様なら頼み込めば事情を汲んでくれると思っているんだが。甘いかな」

 ジャンがバーベキューの肉に噛みつきながら胸に秘めた覚悟を話す。

「甘いだろうな。いくら大司教であろうが拒めば倒すだけだ」

「また、危険なことをしにいくの?」

 ミールが不安げな顔をしながら聞いている。

「ははは、今度は危険じゃないよ。カリムド正教の大司教様に会いに行くだけさ」

 サキヤはにっこりとしながら受け流した。

 しかし覚悟は決まりつつあった。




   決戦の朝




 次の日。霧がクレイルの町をおおっている。出立の日にふさわしい。

 サキヤとジャンとバームは州軍の本部で馬を借りる。三人は馬に乗り、カリムド正教へ向かう。正教までは馬で三日の距離だ。

 サキヤは後悔はしていない。心残りはやはり母とミールのことだが、商売をし始めて経済的に自立をしたようだ。あとは母に任せるだけだ。

 この三ヶ月で、本当に様々なことがあった。怪物騒ぎからリーガルを倒すまで。いろんな思いがサキヤの胸を去来する。

(おれは強い。いや強くなっているはずだ)

 そう自分を鼓舞する。でないと大司教様を倒すなんて尻込みしてしまう。

 昨日の夜にピリアに聞いた。

「相手が動けなくなる魔法なんてないの?」

「メールド流にある。しかしあやつには魔法はきかんぞ」

「ピリアは知り合いなの?大司教様と」

「知り合いもなにも、まあ、よい。いずれ分かることじゃ」

 歯切れの悪いピリアの言葉にやきもきするサキヤ。しかし行くことを止めないとは、ピリアに秘策があるとみてとった。

 三人は馬を軽く走らせている。ジャンが近付く。

「大司教ヨブ・シモン。全く得体がしれないが、サキヤ、何か案はないか」

 サキヤは考え込む。

「案なんて思いつかないよ。まずはサーバーとやらを止めてもらうように正面堂々頼みこむ。おれの考えはそれしかない」

 しかしジャンが否定する。

「それをやるとシモンも死んでしまうんだぞ。首を縦に振るとはとても思えない」

「ああ、そうか」

「とにかく戦いに備えて心の準備だけはしておけよ」

 ジャンの指摘に納得するしかないサキヤであった。


 途中の宿場町で二泊し、決戦の朝がきた。サキヤの胸が高鳴る。大きく息をし馬に乗ると、三人揃ってまた走り出す。

 あと一時間ほどでカリムド正教の大礼拝堂に到着する。

 その時金の盾からピリアが表れる。

「皆止まれ。止まるのじゃ」

「なんだなんだ爺さん。なにかいい案でも思いついたのかい」

 ジャンがからかい気味に聞くとピリアが真面目な顔をして答える。

「思いついた訳ではないわ。ワシの知ってることを話しておこうかと思うてのう」

 ピリアが遠い目をして語り始める。

「その昔、そう途方もない昔に天界はある天使によって荒れに荒れておった。その名をマスティマという。マスティマは傲慢で自分は最高神ゼウス様より力があると思い込み、仲間の天使たちと一緒に神々に戦いを挑んだ」

「何でピリアがそんなことを知ってるんだ?」

「ワシも神の一人として戦ったからよ」

 ジャンがうなる。

「ピリアが神!やはり」

「戦いは二百年も続き、とうとうゼウス様みずからマスティマと決戦にうってでた。天使マスティマは、醜い悪魔へと変貌をとげ、天界から地獄に落とされた。当然の報いじゃ。ところがどうやって脱出したかは知らねどいまは地上におる。それこそが」

「おいおいおいおい、まさかそれがヨブ・シモンだっていうんじゃねーだろうな」

「そのまさかよ」

 バームがうめく。

「人工的に生みだされたリーガルなんかと違って、正に本当の悪魔、か」

「だからシモンの頭脳がサーバーの中にあるというのは全くのデタラメじゃ。人間の体を借りて何か企んでおる。良からぬことを考えているのは間違いない」

 ジャンが大きくため息をつく。

「最高神に逆らった悪魔なんて、全く勝てる気がしない」

 ピリアが自慢げに言う。

「やつを倒すのに一つだけ手はある」

「どんな?」

 三人同時に聞く。

「その神々と、天使との戦いに参戦していたディアボルスという天使がいてな。ワシがその剣を取り上げたのじゃ。真っ赤な剣でのう、魂まで斬ることが出来る。それを取りにいくのじゃ!」

「どこへ?」

「天に隠してある」

「天に?」

「空の上にじゃ。サキヤ、そこに立て」

 嫌な予感がしながらも道の上に立つサキヤ。

「金の盾を上に上げしっかり持つのじゃ」

 嫌な予感がますます強くなる。

「行くぞ!」

 ピリアが天に飛び立った。それに連れて金の盾が浮き上がる。

「うわ」

 サキヤは覚悟を決める。

 金の盾が一気に上昇する。

「うわー!」

 ジャンとバームがぽかーんと眺めている。

「死なないことを祈ろう」


 サキヤは超高速で天に向かうと、なにか光るものを見つける。

「これが『ディアボルスの剣』じゃ!」

 真っ赤な剣が斜めにくるくる回っている。

「一発でつかめよ!」

 サキヤは狙いをすまして持ち手をつかみ取った。

「よし!これで剣と盾が揃った!」

 サキヤが叫ぶ。

「よし降りるぞ」

「うわー!」

 今度は超高速で落下していく。

 地上に近付くにつれ減速する。「ふう」サキヤが一息ついた。

 ストッ

 無事に着地した。ジャンとバームが拍手でむかえる。

「すごい剣だな。本当に真っ赤だ。しかもでかい。サキヤに扱えるかな」

 サキヤが答える。

「それが見た目と違って、もの凄く軽いんだ。これならおれにもやれる!」

 ジャンがその様を見てうなづく。

「よし、シモンを仕留めるのはサキヤに任せる。俺たちは援護にまわる」

「おう!」


 三人は馬を飛ばしカリムド正教の大礼拝堂の前に立つ。そして真っ直ぐにシモンがいる部屋へと向かう。

 前に進むと、切り刻まれるという場所にきた。ピリアが表れてその装置をクレピタスで粉々にする。

 中に進むとシモンがやはり後ろを向き、なにやら本を読んでいるようだ。

 ピリアが大声で呼ぶ。

「ヨブ・シモン。いや堕天使マスティマ!」

 シモンが振り返る。ニヤリと笑い四人を見渡す。

「ほうこれはこれは守護と安寧の神ピリア様。今日はどういうご用件で」

「なぜこのようなところで司教なんぞに納まっておる」

「ふん。それを言ってどうするよ」

「下らん悪巧みならお主を倒すまでよ!」

「その後ろにあるサーバーに生きている魂を全員悪魔にした」

 ピリアが怒る。

「なんじゃとう」

 シモンがニヤリとしながら立ち上がる。そしてジャンを指さす。すると黒い影がサッと表れてジャンに乗り移る。

 ジャンがサキヤに剣で攻撃を始めた。盾で防ぐサキヤ。

 シモンが、目を見張る。

「ほう、そいつが持っている剣。ディアボルスの剣ではないか。面白い」

 次はバームだ。こちらも槍でサキヤを襲う。

 ピリアが宙を舞いながら呪文を唱える。

「えーい。シレンティウム!」

 ジャンとバームが固まる。

「う、動けん!」

「あとは頼むぞサキヤ!」

 ピリアが叫ぶ。

「どうせその一万人の悪魔を使って、この世を支配することでも画策しとるのじゃろう」

「この世界を?わははは小さい小さい!」

 シモンは正面に向かって立った。すると体が膨らんでいき、体中の肉が裂け、血まみれになりながら巨大化していく。全ての肉片が剥がれ落ちた。

 体が鈍い銀色に光る、醜い顔をした身長二メートルほどの堕天使マスティマが姿を表した。

 その異形で血まみれの体と、悪魔のまなこの威圧感。本当に勝てる気がしない。




   マスティマ墜ちる




 マスティマが全貌を表した。

「ふう。おれの目指しているものは、この世界の支配などではないわ」

 するとマスティマは人差し指を高々と上に向けた。

「天へ」

 するとピリアが気づく。

「天とは、天界の支配を目論むか!」

「その通り。狙うはゼウスの首一つ!」

 怒鳴るピリア。

「お主はまだ自らの力を見誤まっておるのか」

「おれは地獄に落ちて、逆に更なる力を得た。いまならゼウスと対等よ。ゼウスはなぜゼウスなのか。地獄にいる間考え続けた。そして結論を得た。それは信頼する仲間の神々の存在だ。その信認を得ているから奴は強い。ではその信頼に対抗するにはどうするか。それは恐怖しかない。恐怖と服従を植え付けた一万の悪魔と共に再度ゼウスに挑む。一万の悪魔の力をおれに集約させればゼウスなどひとたまりもないわ」

 マスティマが不敵に笑う。ピリアがにらむ。

「そのためにこのサーバーとやらを作らせた。人間に永遠の幸福と快楽を与え続けるために。おれがこの幸福を取り上げると宣言したら皆どうしたと思う?悪魔になってもいいから快楽を得たいと全員が賛同した。一万人全員がだ。一人残らずだそ。なんと弱く、あわれな生き物だと思った。それからおれの魂の欠片を与え続けた。人間は悪魔に変貌をとげ、おれはこやつらと共にこれから天界に行く。そして最高神に上り詰めたらゼウスとその家来を皆地獄に叩き落としてやる!」

 ピリアが首を振る。

「浅いのう、浅い。信頼に変わるものが恐怖と服従とは。お主は何にも分かっておらん」

「うるさいぞ、爺ぃ!なにが分かっていないというんだ!」

 ピリアが叫ぶ。

「恐怖で服従させられた者たちは、少しでもお主が不利になれば一気に寝返る。信頼がないからじゃ。逆に信頼を一身に受けた者は不利になると仲間から更なる力を与えられる。そのような勝負ははなから結果が見えている。お主は必敗する!」

「なにー!これでも食らえ!」

 一人の悪魔がサーバーから飛び出し、なんとサキヤに取りついた。サキヤがうつむく。

「ここはどこだー。はっ!この二人はおれを倒した奴ら。成敗してくれるわ!」

 ジャンが気づく。

「その悪魔は、リーガル!」

「うーむ。ごちゃごちゃしてきたのう。仕方ない」

 ピリアがなにか念じる。

「スティペンディウム!」

 悪魔たちが三人から離れサーバーに戻る。

 それを見たマスティマはからだに手を突っ込み、二本の大剣を取り出す。

 ピリアが唱える。

「スクートゥム!」

 ジャンとバームに盾の魔法をかける。

 サキヤは眠りから醒めたように首を振ると、マスティマに向かって飛び出した。

「うおーーー!」

「かような小僧におれがやられるとでも」

 サキヤの剣が腹に突き刺さる。

「うぇ?」

 カーンとその剣を弾くマスティマ。

 用心深く大剣を振り下ろしながら「フレア」と叫ぶ。しかしそのどちらも金の盾が防ぐ。

 右、左と大剣を振るうマスティマ。しかしサキヤにスキはない。

「えーい。こうならばこの手だ。い出よ!」

 悪魔が一斉に二十人ほど出現する。そしてサキヤを取り囲み、それぞれが「クレピタス!」と攻撃を仕掛けてきた。

 サキヤを中心に大爆発が起きる。

「サキヤー!」

 ジャンが叫ぶ!

 煙が舞い散る。しかしサキヤには傷一つついてはいない。

 ピリアがニコニコしながら言う。

「それが金の盾の本当の力よ。別に盾を打ち付けなくとも全ての角度の攻撃を防ぐ。つまり」

 マスティマがピリアをにらむ。

「金の盾を持っている限り無敵だということじゃ」

 それを聞いてサキヤは奮い立つ。再びマスティマに突進すると剣を振り下ろす。

 それを受け大剣をぶん回すマスティマ。次第にマスティマが劣勢になってゆく。

 カン、カン、ガキィ!

 つばぜり合いになる。力はマスティマのほうがある。少しづつ押されるサキヤ。

「おのれのような小僧におれは倒せんわ!おれは天界の覇者となる者。その剣を叩き折ってやるわ!」

 マスティマがサキヤから離れた一瞬のスキ。

「おりゃー!」

 サキヤはマスティマを袈裟懸けに斬って捨てる。

「ぐお!」

 マスティマの上半身が斜めに切れ、ずりずりっと頭部と右手が滑り落ちる。

「ぬかった…わ……」

 サキヤはさらにその頭部を縦に一刀両断。

「おれ、は、必ず、復、活、す……」

 ズブズブと地面に溶け込み、墜ちていく堕天使の最後。

「ふん、また地獄の煮え湯にでも浸かっておるがいいわ!」

 ピリアが吐き捨てる。

「ふう」

 サキヤがその場にへたりこむ。

 ジャンとバームは飛び上がって喜んでいる。

「よくやったサキヤ!お前は英雄だ!」

 二人はサキヤの肩を叩き、もみくちゃにする。

「ピリア、ありがとう。あんたがいなかったら到底敵わなかった奴だった」

 バームが頭を下げる。

「まあ、それが守護と安寧の神の仕事のようなものじゃからのう。ホッホッホッ」

「俺たちはただの唐辛子好きの妖精の類いと思っていたよ。わーはっはっは」

 三人で大声で笑う。こうして緊張の糸はほぐれた。

 ジャンが真顔になる。

「最後の仕事だ。バーム、ハンマーを三つ出してくれ!」

「ほらよ」

 三人にハンマーが行き渡る。青い量子サーバーに鉄槌を下す。一時間ほどで粉々に砕けちった。

 量子の海は雲散霧消し、一万人の魂は天に帰っていった。


 帰り道、馬上でジャンが言う。

「一万年の幸福と快楽か、少しうらやましい気がするな」

 サキヤが首を振る。

「おれは普通に生き、普通に死にたい。愛する者と愛し愛され、ともに歳をとりながら」

 バームがジャンに聞く。

「ところでオーキメントとドーネリアの戦いはどうなったんだ?肝心なことを忘れるとこだった」

「どちらも首都が壊滅的な被害をこうむったしな。おそらく近いうちに停戦、いや終戦協定を結ぶだろう。そしてオーキメントの首都は多分クレイルに移る。軍人としては、これから大いに働かなくちゃならないな。まずは難民キャンプの人たちに住居を与える仕事が待ってる。細かいことはそれからだ」

「はっ!」

 三人は軽く馬を走らせクレイルの町に帰っていったのだった。


「サキヤ!」

 うちに帰るとまずはミールが抱きついてきた。店には行列が出来ていた。

「繁盛しているようだな」

「そうなの!評判が評判を呼んでるみたいで売り上げも右肩上がりなのよ!」

 奥に入ると母が必死の形相でクッキーを焼いている。

 軽く母と抱きしめあう。

「とにかくベーコンクッキーが出てねー。夕方には売り切れちゃうのよ。あんたのほうはどうだったの?ちゃんと大司教様と話は出来たの?」

 母とミールにはマスティマのことなど話すまいと心に決めている。

「ああ、全て終わった。無事に解決さ」

 母がピールでクッキーを入れている金具を取り出すと、ベーコンクッキーを素手で大皿に移しかえていく。


「そして今回最も大きな働きをしたサキヤ・クロード少尉は四階級特進の中佐に任ずる!」

 ビリーとジャンと、バームと握手をかわす。ジャンがビリーに今回の戦いのリポートを詳細に書いて報告したのだ。ジャンとバームは三階級特進の同じく中佐。つまり三人とも同じ階級に並んだわけである。

 ビリーがサキヤに勲章をつける。

「さてファッツロード大将からお言葉を」

 よぼよぼの大将が前に進み出る。

「んー、よくやった。一歩間違えればこの世の崩壊につながりかねない戦いに見事勝利し、平和を取り戻したその功績は見事というほかない!三人とも佐官にふさわしい働きである。これからもその気概でな。ワシからは以上である」

 満場の拍手と共に任官式は終わった。


「ただいまー。中佐になったよ、おれ!」

「まあ、なんて出世だい。お父ちゃんに報告しなくちゃ!」

 母は小さな祭壇に行き、祈りをささげる。サキヤはミールと熱いキスをする。

 愛すべき家族。全力で守り抜きたい。母が子を思うように。




 決戦編、了




……さてこれで一つの物語が終わった。みなさんには現実に立ち戻り、また新たな明日を迎えてほしい。


 地獄ではマスティマが煮え湯につかりながら、地上をにらんでいる……




   完


(この「金の盾と青い牢獄」β版はちかぢかアマゾンキンドルで販売する予定です!これで僕もキンドル作家や!)

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金の盾と青い牢獄 第3巻 β版 村岡真介 @gacelous

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