好きなコがアイドルになってしまった! どうする、俺‼

こばやし あき

第1話

1.

「ごめんなさい……私、メンメンガールズに入ることになったの」

 

 時は放課後、中学の卒業式の前日。

 藤見優(ふじみ ゆう)は、好きなコ、成島恵(なるしま めぐみ)に告白した。


 したら、このざまだ。


 二人は校舎裏の木陰、絶好の告白ポイントにいた。


「でも、嬉しい。優君にそう言ってもらえて……」

 辺りは夕焼け色に包まれているが、恵の表情は木の影でよく見えない。


 優は「ごめんなさい」のショックで、放心していた。

(振られた、振られた……もうだめだ……)


「メンメンガールズを応援してね!」

 風が吹き、恵の肩につくくらいの髪がさらりと揺れた。

 乱れた髪を耳にかける恵。

 枝が揺れ、恵の笑顔が夕日に照らされる。

 少し寂しそうに見えるのは、夕焼けのせいか。


 優はそんな笑顔にドキリと胸を締め付けられ、我に返った。

「……応援する、応援するよ!」


「おい、もういいだろ!」

 イラついた声に振り返ると、少し離れた所に列ができていた。

「成島さんに用があるのは、お前だけじゃないんだよ!」


 知らぬ間に、告白するための列ができていた。 

 黒い学ランを着た男子生徒がずらずらと、蟻のようだ。


 優は肩をドンとぶつけられ、よろけながらその場を去った。


「成島さん……」

 少し経って優が振り返ると、恵は次の男子生徒に頭を下げ「ごめんなさい」をしているところだった。

 少しほっとしていると、恵と目が合ったような気がした。

 優を見て少しすまなそうに淡く微笑む恵を見て、優は決心した。


(絶対応援する! ……この気持ちをどうしたらいいか、分からないけど)


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る