一つの夏の青い春
常磐海斗・大空一守
第1話 君の気持ちを
俺の名前は「時折篝(ときおりかがり)」俺は学校でもそこそこ有名で、趣味が友達と服を買いに行くと言ういわゆる「勝ち組」と言われている奴だ。
みんなからも先生からも好かれていて、このまま何事もなく人生が終わればどれだけ良かったか。
でも、たった一つの好奇心のせいで、僕の人生は大きく変わったんだ
「なぁなぁ!この話知ってる?」「しらん」
俺はとにかくめんどくさがりで、相手の話を詳しく聞くことはあまり多くない、なのにみんなが寄ってくるのは正直言って目障りだ。
「まだ何も言ってないだろ!今回はいつもの奴らのつまんない話じゃなくてお前に合いそうな話だぞ!」
こいつの名前は「小菅庄司(こすげしょうじ)」小学生からの友達で、約束破りの常習犯だ。
こいつの話は大抵面白くないし、まずこいつのことが嫌いだ。
でも、なんだかんだ言って関わっている。服を買いに行こうと言ってもまったくこないし、休みの日にゲーセン誘っても、来たらきたで途中でいなくなる、正直言って反省しない暴走機関車みたいな奴だ。
「聞くだけ聞いてやるよ、その面白い話ってやつを」
「聞いておどろけ!お互いがお互いのことを思って願い事をすると、別世界の恋成就の神社に連れていかれるらしいぞ!」
「しかも、その願い事をしたその男女は次の日にはいつのまにか付き合ってるらしい!」
はぁ、馬鹿馬鹿しい、そんな話があるわけないだろうが、仮にあったとしても、そんな危険なパラレルワールドに自分から足を踏み入れる何て真っ平ごめんだ。
「俺は信じない。信じたところで何の役にも立たない」
俺はクールに決めてみせた。俺にそんな現実離れした話は通用しませんと言わんばかりにひらりと闘牛のように返してみせた。
「いやいや!もしかしたらありえるかもしれないぞ!?まあ、信じるか信じないから貴方次第ってか?!ガハハハ!」
あいつは笑いながら去っていった。何がしたかったか理解が出来ないが、騒がしい奴がいなくなって静かに本が読めるからいいことだと思う。
「あんたも大変だね、昔からだけどー」
黒い艶のある綺麗なロングヘアーをなびかせる少女は保育園からの幼馴染「青木唯(あおきゆい)」昔からの付き合いで、とにかく仲がいいと言うしかなかった。他の人からしたら彼女は取っ付きにくい存在らしく、休み時間は誰とも話さずに1人で本を読んでいる。
そんな彼女のことを、俺は小学四年生の頃から少し気になっていた。
「そういえば、唯は知ってんの?恋の神社の話。」
とてつもなく省略した話だ。普通の人なら何言ってるんだこいつとなるだろう。この地域に住んでいる人なら大体は分かるらしいが、俺は中2まだ知らなかった。
「ああ、その話ね?だからさっきだるそうに話してたんだ。まぁ、興味なさそうだもんね。」
彼女はクスッと笑いながら肯定した。それほど有名な話なのか、知らなかったのは恥じるべきなのかもしれないと、心の奥底で思った。
「そんな事あるわけないと思ってんだけど、唯はどう思ってるんだ?」
「てか座れよ」
俺は無意識に自分の椅子の半分を開け、唯と一つの机に2人で座った。
「えぇ?!何あの唯とか言う奴!」
「篝くんにベタベタしやがって!」
教室の端で女子の3人組が小声で唯の悪口を言っているのが聞こえた。
ここで出動するのも悪くはないが、とにかくめんどくさくて、唯の肩に頭をのせてダラーっとするのが1番ゆっくりできた。
「ちょっと、重いよ」「いいだろ、慣れてんだから」
あの女子たちに俺から行っていると思わせるために俺の方から積極的に動くことにした。
ちょろっと見えた下から見る美しい唯の顔は、少し頬が赤くなっていた。
—2日後—
金曜日の夜布団の中で考えていた。
俺はずっと心に残っていたことがある。何事もないかのように振る舞っていたが、あの恋成就の神社が気になって仕方がなかったんだ。
でも、俺が唯のことを思ったところで、唯が俺のことを思っていなければ、よくあるただの中2男子の妄想となってしまう。
まぁ、それも悪くないかと目を瞑り、俺は唯と結ばれることを思った。
突然、目をつぶっていると黒いはずの風景が白く輝いていた。
そこは、まるで京都の伏見稲荷神社のように鳥居が何本も何本もある、とても幻想的な神社の風景だった。
何でこんなのところにいる?俺は考えることが沢山あったが、1番最初に出たの結論は、
「明晰夢」だ。それは自分が夢を見ているとき、頭が冴え、自分の見ているものが夢だとわかる事である。
自分の見ている神社の風景は、唯と結ばれることを妄想していたためか知らないが、おそらくその神社の夢を見たのであろう。
「なら話は早いな、もしかしたら唯と結ばれる夢が見れるかもしれない!歩き回ってみるか!」
俺は神社のどこかに唯がいて、結ばれると言う夢のような夢が見れるかもしれない
夢のような夢という謎の言葉には今は頭を突っ込まないでくれたまえ
そんな馬鹿なことを考えている時、目の前に唯が寝ているのが見えた。お、とうとう来たかと、思った俺は唯の肩に手を触れて、揺さぶって起こそうとした。
「唯!唯!起きろ!」
俺はまるで恋成就神社があるパラレルワールドに来たかの様にしたかったため、何も知らないような演技をして起こすことにした
「え?ここはどこ?、、伏見稲荷神社?」
鳥居がたくさんある光景を見たからかは分からないが可愛い表情を露にした。
「俺にもどこなのかがわからない、でも、もしかしたらどこかに出口があるかもしれない、探してみる価値はあるかも。」
「そうね、探してみないことには変わりないわ」
なんと、まるで別人のような性格だな、こんなに積極的だったか?まぁ、ひとまず置いておこう、これは俺が積極的になって欲しいと言う願望が夢に現れたのであろう。なんせこの世界は夢なんだ、何でもできそうな予感がしてならない。
今なら空も飛べるかな?
「ここは、、、、、」
俺たちは無我夢中で走り続けていたため、周りが見えていなかった。
そんな中、目の前に現れたのが、大きな参拝用の小銭入れが置いてある神社の宮殿だった。
俺はこんなこと望んでないぞ?と困惑を残しながらなぜかポケットに入っている、ハート型の錆跡がついた5円玉を空気に飲み込まれ、投げ入れた。
唯も持ってはいたが、手に握りしめ、投げることをしなかった。
なぜかは考えなかった。だって、考える余地もなく、目が覚め、窓から入り込む光に目を細くして、朝6時のアラームで目が覚めた。
もっとあの世界にいたかったとは思ったが、遅刻しては意味がないので、支度をして学校に向かった。
ホームルームまで時間があるので皆んながザワザワしている時のこと、唯と話していた俺は、一つ気になることを思い出した
「右ポケットに5円玉って入ってない?」
「ん?何で?」「いいからいいから」
「分かったよ」唯は右ポケットに手を入れて、ゴソゴソした後に俺の机の上に5円玉を乗せた。
その5円玉にはハート型の錆跡が残っていた。
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