第62話 実験と神気


 『聖水』は『神水』とも呼ばれ混同されるが両者は厳密に言えば異なるらしい。

 広く流通している『聖水』は高位聖職者が祝福した水のことで、『不死神』や『死霊術師』の眷属たる『不死者アンデッド』を撃退するために用いられる。


 また交戦意識の低い低級のモンスターを避けることも出来る効能を持つ。

 特に最上位神官や『聖女』や『聖人』が自ら作り出した『聖水』はプレミア価格が付くとか……聖女の聖水なら欲しがる男は多そうだ。



―――あるいは使う薬草にこだわることが考えられる。

 魔力を多く保有した薬草は質が良いと言われているからだ。


 そして優れた薬草農園の多くを所有しているのは、神殿と錬金術師だ。

 時間は掛かるが品種改良なども方法として考えられるか……


「今はそんな時間がないんだよね」


 神殿の聖職者は『結界』と呼ばれる魔術を行使することが出来る。

 そして『聖地』や『秘境』と呼ばれる霊場の多くは魔力にあふれている。

 そのためかそう言った場所にしか生えない薬草もある。


 『結界』は霊場を人工的に再現できるとされており、通常の薬草の品質と効果を高めるとされている。

 そのため既に俺の畑には『結界』を張ってある。


「『結界』以上の効果か……あ、人間がポーション中毒になるように薬草をポーション漬けにした効果は上がかな?」


 でも結局時間の問題が邪魔をする。


「こういう煮詰まった時は散歩が一番だ」


 と言うことで外に出た。

 散歩を終えた俺は、薬草畑に脚を運んでいた。

 無理やり魔力を込めた水を撒きながら考え事をする。


 薬草に回復魔術をかければその性質を蓄積し、生物濃縮するだろうか? 前回はポーションに回復魔術を込め性能を無理やり強化したものだった。


 そしてあんな芸当を出来るの人間は『聖人』や『聖女』と言った高位聖職者ぐらいだろう。だから量産出来ないが今回のケースが成功すれば誰でもより性能の高いポーションを製作できる。


 オマケに前回のポーションと比較できる。ものは試だ。

 早速実験してみることにした。

 【魔力感知】と目視で周囲に人や虫以外の生物がいないことを確認すると、魔力を練り上げ回復魔術を発動させる。


 回復魔術の対象は『畑』、『薬草』そしてその両方だ。

 女神の力が発動しないように加減して術を発動させる。


よし成功だ。


 女神の力が混じった時は金色の光が混じる。

 しかし巧く加減した時には緑の光のみで効果も落ちる。

 何度も回復魔術を使って加減できるようになった明確な成果だ。



 【鑑定スキル】で確認してみると、『畑』だけは少し上昇とで、継続的に魔術をかければより質は上がるだろうと言った感じだ。


対して『薬草』のみは畑のみに比べ明確に質が向上しているものの、しゃりの上に切り身を乗せただけの寿司のようにどこか不安定に感じる。


最後に『畑』と『薬草』に魔術をかけたものは、両者の良いところを併せ持っているようで特別何か悪いと感じるところはない。

量産するならこれが正解だろう。


 一先ず半分ほど収穫し、立て看板をたてて収穫しないように通達する。

 実験とレポートは科学の授業でよくやった。

 教師の方針なのか、新しい単元の度に実験をし教科書などを見ないでなぜ失敗したのか? などを交え考察を交えたレポート用紙を書いた。


 実験とレポート二つ共に評価が付いていたため、CとCで「CCレ〇ン」などのように評価で駄弁ったものだ。

 なんとも懐かしい気分だ。


 しかし『薬草をポーション漬け』にするのと同じく時間が掛かる方法に落ち着いてしまった。

 インスタントに出来る方法は何かないだろうか?


 うんうんと唸る。

 

 水や空間に魔力を込め間接的に薬草に魔力を含ませることが出来るのなら、どうにかして直接薬草に魔力を含ませることが出来るのではないだろうか? 


 とりあえずもう一反の畑で実験をすることにした。

 『結界』や回復魔術をかけるイメージから離れ、入れ物に水を注ぐイメージで薬草に魔力を込める。


バチン。


 突如、静電気のような痛みが指先に響いた。

 薬草に目を向けると急速にかれてしまう。

 どうやら失敗したようだ。

 “注ぐ” イメージはどうやら間違いではないようなので、今度は中の魔力を交換するイメージで魔力を送る。


 一定の魔力を送ると一瞬魔力が途切れ、その後一気に帰ってくる魔力の量が一定になる。

 そのタイミングで魔力を流すのを辞める。


「成功だな……」


 しかし結構難しく二回連続失敗と結果は芳しくない。

 どうやら個体差が激しいらしく許容する魔力量にも違いがあるようだ。

 何度か試す内に失敗率は段々と低下する。


「俺レベルの魔力操作技術をもってしても成功率三割って低すぎだろ……個体差によるもんだいもあるだろうから、品種改良や選別をすればある程度は簡易にできるかな?」


 女神由来の【ヒール】を用いれば簡単にできるのではないだろうか? と好奇心が溢れて来る。


「【ヒール】」


 金色の粒子が混ざった魔力は薬草に良くなじむようで、薬草は見るからに最高にハイって状態に見える。

 何というか薬草なのにオーラがある。

 試しに通常の魔力を注いだポーションと、【ヒール】経由で魔力を注いだ二つのーションを作ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る