第50話 神殿の誘い「破戒僧に私はなりたい」
副神殿長は神殿長の誤解を正す。
「神殿長今回のサラマンダー事件では初動医療、そして今この場で数十人にも及ぶ欠損部位の再生を魔術でやってのけた大魔術師です」
「ワシでさえ月に数人再生するのがやっとだと言うのに、欠損部位の再生を数十人行ったと言うのか?」
「その通りです」
「馬鹿な! 『使徒』さまや『聖女』や『聖人』に並ぶ存在とでも言うのか!?」
「齢を加味すれば上回る存在かと……」
信じられないと言った顔で周囲を見回せば、覚えのある患者ばかりなのか納得した様子で答えた。
「確かに見覚えのある患者ばかりだ……ナオスの実力は本物のようだ。一日で数十にも及ぶ部位を再生するなど神々の寵愛を受けた者に勝るとも劣らない腕前だ」
「『使徒』ってことはつまり、勇者さまに匹敵する回復魔術の実力って……コト!?」
「『聖女』や『聖人』って勇者さまと共闘し魔王を滅ぼしたって言う凄い人でしょ? そんな人たちと並ぶなんて凄い!」
――と俺に治療された患者達は俺を褒めそやす。
褒められて悪い気はしない。
「新たな『聖人』級回復魔術となったナオス君、神殿に興味はないか? 神官は善なる神々に尽くし人々のために身を粉して祈る素晴らしい仕事だ。君の能力を存分に生かせると約束しよう」
神殿長は謝罪の言葉一つなく出世の道具にするために綺麗ごとを並べ立てる。
前世からの疑問がある。
宗教に似ていると感じる。NPOの職員って上層部と同じように意識が高い目的のために働いているのだろうか? いや補助金の不正問題とかあったし上層部が意識高いとは限らないわ、確信が持てないわ言及するのやめとくわ。
少なくとも俺は、仏教の『五戒』や『殺生禁止』、キリスト教の『清貧』とかは絶対に無理だ。
キモイ生き物は殺すし肉や魚は好物だし、女も好きだから絶対に無理だ。『
「いえ俺は『魔力ゼロの庶子』なので、辞退させていただきます」
「人類に奉仕することを拒否するのかね?」
「ええ俺は自由に生きたいので遠慮させてください。それに謝罪の言葉一つ口にしない人間は信用できないので……」
神官としての地位は、魔術の腕と政治力で決まる。
つまり神官としては、自分の成り上がる道具になる俺と言う才能を、諦めきれないのだろう。
とんだ博打打だ。
神殿はこの大陸では国家規模の大きな派閥であり、時には国家や貴族と対立する存在だ。
無下に断れば敵対する貴族や神殿から嫌がらせをされ兼ねない……が俺には殆ど関係ない。
「神殿長の非礼をお詫びする。もしよければ一度だけでいい。神の下僕として生きる人生を真剣に考えてくれないか?」
副神殿長の言葉には善意を感じた。
しかしそれは俺にとって有難迷惑な話に過ぎない。
俺は贅沢と自由が好きだからだ。
「基本的に自分のために生きたいので……」
聖人級と持て囃されたところで俺にとっては有難迷惑な話だ。
そんなことを考えてい兄姉四人が俺を守るように前に立ちふさがった。
「神殿長、今日はナオスも疲れていますので、正式な打診であれば日を改めて当家にご連絡をください」
つまり、「ナオスも貴方も疲れているから、神殿長(神殿)に対して失礼な発言をしてしまったのでしょう。今の話は訊かなかったことにしてあげる。本気でナオスが欲しいのであれば日を改めて家長がいるときに話をしろ、じゃあ帰るからな」(意訳)と言っている訳だ。
「ですな。聖人級の回復魔術師など遠目で見たのみで、お恥ずかしながら興奮してしまいました。ご無礼をお詫びします」
副神殿長は冷や汗を浮かべている。恥ずかしいと言って苦笑いを浮かべているものの目だけは笑っていない。
公爵家の権威を恐れているようだ。
一方危ないところを助けて貰った神殿長は、憎しみと怒りが入り混じった憎悪の篭った瞳を向けて来る。
実に愚かだ。
俺達家族は神官や患者達の視線を背に受けながら一早くその場を後にした。
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『あとがき』
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