第38話 更なる高みへ
「凄い……」
奴隷達は感嘆の言葉を漏らした。
高位の術ではないものの技術だけ見れば間違いなく、一流と言って差し支えないほどの魔術だった。
「ナオスさまいかがでしょう?」
「魔術単体だけ見れば特殊なもの一つもなかった。しかし技術的な視点で見れば絶技と言って差し支えない程のモノだった。術式の段階から工夫がみられ複数の術式を単一の術式として認識することで処理を軽くするアイデアには脱帽した」
「え……ちょっと待ってください見ただけ判ったんですか?」
アイナリーゼは驚き戸惑っているようだ。
俺のレベルを甘くみていたようだな……【魔力眼】ぐらいは使えるぞ?
「瞳に魔力を込めれば見えるだろう?」
「魔力眼なんて普通の人間は使えませんよ!」
勇者は使えていたし、仲間のエルフも使えていたから一般的ではないにしても、そこそこありふれたものだと思っていたがどうやら違うようだ。
「そうなのか?」
「エルフや一部の人間でないと使えません。常識ですよ……」
咎めるような口調のアイナリーゼに俺は以前から考えていた言い訳で対処する。
「年単位で軟禁されていたからな、俺は常識に疎いようだ……」
「常識に疎いのに魔力眼は使えるって不思議ですね」
アイナリーゼは何かを疑っているようだ。
「そ、そうだね……」
俺は日本人特有の曖昧な笑みを浮かべ誤魔化すことにした。
俺もどこかのWEB主人公のように【詐術スキル】や【弁護スキル】なんかがあれば完璧に誤魔化せるのだろか?
是非女神さまには検討を加速して速やかに対処して欲しい。
「複数属性を器用に使えるのは目がいいからでしょうか? グレテル様と打ち合えるほどの才能を持っているのですから魔術の上達も早いでしょう」
成功者は自信も成功への道も両方持っているから別ジャンルでも、成長速度が速いと言う話を訊いたことがある。
「そうだといいな。魔術の練習はグレテル先生に習った以外は独学なんだ何をすればいいと思う?」
「剣術と同じく地味な反復練習です。今まで覚えた術のやり方は全て忘れるぐらいのつもりで練習してください。一応手本を見せますので何を参考にするかまで自分で決めて考えながら練習してください」
小学生時代漢字の書き取りが嫌で、鉛筆を複数個繋げて一回で複数書ける道具を自作したことを思い出した。
あの時はやるべきことが漢字を書くことで、目的である漢字を覚えることを見失っていた。
だから自分で何をやる必要があるのかを考えさせているのだろう。
「判った。自分で考えてやって見る。でもアドバイスは貰えるかな?」
今までやっていた魔術が間違っていると判った。
そして優れた技術を持った魔術師からアドバイスを貰える。
だから自分の考えを試し、ひたすらに努力を続ければいいと判っている。
ひたすら魔術の練習を続けた。
奴隷少女達は魔力が切れたのかヘロヘロになっているのが過半数で、魔力切れが酷かったクレアなどはゲロを吐いたほどだ。
これで彼女達も魔力の最大量が増えたことだろう。
「一時間以上も魔術の練習を続けていますよ? ひたむきな姿勢は尊敬します。休まないと魔力切れでクレア見たいになりますよ?」
ゲロゲロしながら倒れている。
「ゲロインは嫌だな……」
「そんなこと言わないであげてください。女の子なんですから」
攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術!
思考。
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思考。
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よし! ようやく形になってきたぞ次は【
攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術!
思考。
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思考。
攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術攻撃魔術!
空が茜色に染まる頃魔力切れを起こして俺はへたりと倒れ込んだ。
クソ! もっと練習をしたいのに……地脈を流れる魔力を押さえつける魔力がない。
だったら直接地脈を流れる魔力を扱えれば……
「そろそれお休みになられてはどうでしょう? グレテル先生もお帰りになるころですよ? それに屋敷全体に張っている遮音結界を維持するのも限界で……」
アイナリーゼの方も魔力が限界を迎えたようだ。
確かに一日の結果としては十分すぎる成果だ。
俺は今日一日で魔術師としてより高みへ至ることが出来た。
しかし報告のことと次第によっては俺が直に調査に向かう必要がありそうだ。
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『あとがき』
読んでいただきありがとうございます。
本日で第3章が終了となります。
現在皆様にご提示している更新予定分までしか、お話のストックがないので人気が出なければ、その時点で打ち切りになります。
まだ自尊心が回復できていないので、現状第六章後半までしか書きあがっていません。
なので読者の皆様に、大切なお願いがあります。
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