第37話 エルフの秘魔術
「それではナオスさまの魔術を確認させていただきます」
「色々出来るよ」
離れの空き地で前世にコピーした魔術を披露する。
電撃、竜巻、業火、水流、土壁、閃光、影――。
魔力を増やすために毎日マニュアルで使えるように練習しているためか、かなりスムーズに発動できた。
しかし専門家にはまだ及ばないようで……
「それだけ器用に全属性を使えるのは才能です。しかしどれも変なアレンジがついています一つを極めるか数を絞った方が良かったのでは?」
ワイトもそう思います。
でもそのおかげで前世は大変便利だった。
その時の反省から今は全部即興で術を組んでるんだし……。
「せっかく全属性使えるならって……テヘ?」
「要領は有限なんですよ? 同じ属性の上位魔術なら術式を書き足すだけで済みます」
「はい……」
能力バトルマンガの奇術師が「キミの敗因は
しかし今世は既にそれらを解決しているか解決する手段を得ている。
「【万能者】を目指さないのであれば、私としては方向性を固めることをお勧めします」
「ありがとう。もうでも少し頑張って見たいんだ」
「判りました……では癖をなんとかしましょうそうすれば、術の発動速度や魔力効率をなんとかできると思います。酷い術者を見本にしたのでしょうね」
――と憐れむような反応が返ってくる。
戦争中に魔術の効率化なんか真剣に取り組んでいる暇はなかったし、今世に至っては魔術剣士のグレテル先生と馬鹿兄弟しか見本が居なかったせいだ。
やっぱり前世の知識があったとしても指導者という存在は必要なようだ。
「いいですか? 例えば火魔術はこのように風魔術を複合することで火力をあげ爆発させることが出来ます」
アイナリーゼは的に向かって【ファイアーボール】と【エアボー】を放った。
地面に付いた脚から地脈、霊脈、龍脈と称されるエネルギーの本流の魔力を吸い上げ自分の魔力に上乗せする。
【
【
オタク仲間は「『仙術』だ!」「『仙法』だ」と騒いだものだ。
しかし良く視て見ればあくまでも上乗せしているだけで、燃費向上以外の相乗効果を生んでいるとは言えない。
そして火と風を複合させることも、エルフの秘術と言うよりは俺達勇者が伝えた科学知識を魔術に生かしているようだ。
確かに術単体の威力と効果を見れば俺の術は稚拙と言える。
しかし俺はその先を見ることが出来た。
「このように【
「ダブルキャスト?」
奴隷娘たちの疑問に答えるように説明がされる。
「同時に幾つの魔術が使えるかを指します。
例えば、A砲身を作る魔術→B砲弾を作る魔術→C推進力を生じさせ砲弾を飛ばす魔術 の三段階で行う【砲撃】と言う術があったとします。この場合全て一つずつ行えば単一工程のシングルキャストになりますが、AとBを同時に行えばダブルキャスト。ABCを同時に行えばトリプルキャストとなります」
魔術は一度発動させれば、核となる魔法陣が破壊さるか魔力が切れない限りは発動し続けるため、シングルキャストでも十分な効果を持つ。
「ダブルキャストって難しいんじゃ……」
「左右の手を別々に動かすようなものですから、ピアノやドラムを練習に使うかたも居ます。慣れればこんなこともできますよ」
あいつら楽器も広めていたのか……
因みに【
リボルバーのように六発の火球が複数生じる。
「発射」
声を合図に火球が放たれ即座に次弾の火球が生成される。
恐らく発射の号令を合図に火球を風魔術と共に発射し、次弾となる火球を生成すると言う一連の術式を、条件設定してプログラムのように機械的に実行しているのだろう。
さらに放たれた【ファイアーボール】は板野サーカスよろしく、ただ真っ直ぐ飛ぶだけでなく複雑な互いが絡まり合いそうな軌道を描きながら的に向けて飛翔する。
全て自分で制御しているのか!?
俺は驚愕する。ある程度補助術式が組み込まれているだろうが、並列思考と魔力制御の腕に脱帽する。
「こんなところです。今のは属性と複数キャストそれに魔術の術式をその場で書き換える高等技術を織り交ぜたデモンストレーションです。みなさんもこれだけ出来れば一流の魔術師と言えると思います」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます