クズ公爵家の七男になってしまった転生勇者~魔力ゼロと冷遇され嫡出子の兄弟から虐められたので前世知識を活かして努力していたら、回復魔術がぶっ壊れ性能になった俺は奴隷ハーレムで幸せになる今更謝ってもう遅い
第29話 トリアージ~命の重さ~ 09月11日23時加筆修正
第29話 トリアージ~命の重さ~ 09月11日23時加筆修正
2024年09月11日23時 読みにくい部分と誤字があったので修正。元データ版が読みたい方はアルファポリスへどうぞ
https://www.alphapolis.co.jp/novel/551321058/874880413/episode/8427217?preview=1
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トリアージとは、傷病者の状態に応じて治療の優先順位を決めることを言い主に大規模な事故やテロ、戦争時の医療現場で用いられる。
日本人に馴染みやすい人物を上げれば、『白衣の天使』ナイチンゲールや『医者にして文豪』の
医者にして文豪って……文豪にして剣豪のキャッチコピーで有名な仮面ラ〇ダーが脳裏を過る。
コナンドイルや
俺は頭をふると仕事モードに切り替える。
一般的な能力の
少なくとも今回は……と心に決め行動する。
「大丈夫ですかー聞こえますか? お名前言えますか?」
声を掛けながら脈を取る。
「ディアベル……」
イタリア語で悪魔か……個人的にはラストアタックボーナスを取ろうとして、頓死したキャラクターが思い浮かぶが……いかんいかん。患者に集中しないと。
脈は正常、自分の名前も言えることから意識の混濁は無し、見るからに骨折しているので黄色のタグを付ける。
「後でまた来ますのでそれまでは、痛み止めにポーションを呑んでいてください」
ポーションは傷の回復効果が薬効だが、微弱ではあるものの呪いへの抵抗を上昇させたり、痛み止めとしての効能を持つ。
言い方は悪いが手足の骨折程度では即死しない。
だからディアベルさんの優先度は二番目。
入院治療が必要だ。
「大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫だ! 他の奴を!!」
脈も意識も正常。
軽度の火傷と言ったところだ。
問題なしの緑のタグを付ける。
ひたすら走り回りながらタグを付けつつ、適宜対処をする。
「判りましたポーションをお願いします。判りますか?」
ゆすりながら声を掛けるが反応はない。
脈を取るが脈拍は薄く呼吸も荒い。
鎧は変形し大きな爪痕によって引き裂かれている。
不味いかもな……
「【鑑定】」
【鑑定スキル】を発動させると病状が確認できた。
恐らくは肺の損傷か……重症だな……
優先度一位の赤いタグを付けることなく、治療を開始する。
「この場で回復魔術を発動します。【ヒール】!!」
回復魔術をピンポイントに胸の上に発動させる。
淡い緑の光が弾け【ヒール】が発動する。
「なんて緻密な魔力制御なの!」
多くの回復術師のように離れた場所から発動すればロスが多く、その効果は十二分に発揮できない。
最小限の魔力で最大の効果を得ようとすれば、文字道理に手を当て術をかけることが最も効率的なのだ。
脈は正常に戻り、呼吸も安定している。
入院措置が必要であることを示す黄色のタグを付ける。
「――っ戻りません!!」
涙目で声を上げた若い回復魔術師が目に入った。
【ヒール】一回で入院すれば回復する程度に落ち着いたので、涙目の回復術師の方へ駆け寄った。
「処置変わります」
触診と眼球の反応でようすを伺う。
脈は低く出血状態が酷いようだ。打撲痕から考えると、サラマンダーの前足か尻尾による攻撃を真面に喰らったようだ。
【身体強化】を常にかけられていれば軽傷で済んだのに……
「【鑑定】」
小さく呟いて【鑑定スキル】で見れば、腹部で出血を起こしていることが判った。
――ショック状態を起こしかけている。直ぐに止血しないと……腹部に一度触れ触診で判別したアリバイ作りをした後こう言った
「腹部の中で出血しているようです。今出来る対処方法は三つ……中級以上の回復魔術で無理やり血を止めるか、ポーションの服用による止血作用に期待するか、腹を裂いて直接血を止める必要があります」
「無理です! 中級以上だなんて私使えません!! それに腹を切裂くなんて勇者様でもあるまいし……」
この時代には外科的手法は廃れてしまった技術のようだ。
一般高校生の俺達でも知っているような手術を、他に方法がないからと言う理由で行ったことがあった。
回復魔術やポーションと言った既存の技術以外の治療手段を、既得権益者が嫌ったのだろうか?
嫌、考察していている時間はない。
俺なら直ぐに治す事ができる。
しかし、それでは彼女のレベルアップには繋がらない。
心が折れた彼女に必要なのは自信……つまり成功体験と自らを奮い立たせてくれる存在だ。
「――先生っ!」
「無理だシッヌ様の治療中だ! 一介の兵士や騎士の命など捨て置け!!」
頼みの綱の老魔術師は貴族の治療で手一杯と言って彼女を突き放す。
絶望と言うのはこういう状況を言うのだろう……
そして老魔術師に治療されている貴族の容体は、鑑定スキルを使うまでもない軽症だ。
「泣き言を言っても仕方がありません。怒られたり、罵倒される時は二人で背負いましょう。それではポーションによる止血と回復魔術による止血を試みましょう」
「そうですね……」
「重傷者です! ポーションを回してください」
「「はい」」
「少しでも効果が欲しいので、飲ませつつ体に浴びせて下さい我々は回復魔術で治療します」
「はい」
「今から言うことを良く訊いて下さい。回復魔術は他者に循環系魔術をかける特殊な魔術で、その特性から循環系と放出系の性質を合わせ持ち、人によっては得て不得手がはっきりと分かれる魔術です」
「……」
「そのため『手当て』と言う様に、手などの部位で直接患部に触れながら発動することで、魔力のロスが減り効果も向上すると言います。実際にやってみてください」
若い女性魔術師は、患部に手を触れると目を瞑り集中し呪文を唱えた。
「【ヒール】」
淡い魔力干渉光が漏れ患者の傷を修復する。
しかし彼女は原因があることが判っていても、実際にどこにどんな傷があるのか判っていないため効果は低く、出血量が鈍るだけだ。
魔術とは超常現象を出来るだけ多くの人間が使えるよう調整したものでしかなく、その本質は今だ未知なのだ。
仲間との実験で超常的、物理的問わず判って居れば効果は上昇する。
見えていればさらに上昇する。
言い換えるのであれば “観測” さえ出来ていればいいのだ。
「治るまで繰り返しましょう俺も手伝います【ヒール】」
過度に手を出し過ぎない程度に補助する。
「人間を解剖したことはありますか?」
「ある訳ないでしょ!」
声を荒げ否定する。
やはり手術自体が禁忌となっているようだ。
「ブタや牛、ゴブリンなんかの魔物でもいい」
「――それならあります」
「それは良かった」
俺は腹を指さしなぞる。
「人間も中身は一緒です。大小の差異はあっても同じ生き物なんですから基本は一緒です。ここの臓器が収まっている空間の中に血が出ている状態です」
「――判りました」
「たっ助けてくれ! 仲間が仲間が――」
そう言って縋りついて来る冒険者から視線を離し、若い女魔術師の方を一瞥する。
そう言えばこの天幕では兵士や騎士は見ても冒険者はただの一人も見ていない。
もしかして治療されていないのか? 「行かないで、助けて!」と縋りつくような視線を無視して、「判りました行きましょう」と返事を返す。
「処置しても無理なら出血死するだけです。大丈夫です自分を信じて……判りました行きましょう! グレテル先生ポーションを出来るだけ持って来てください」
――と指示を出しながら、自分も木箱からポーションを何本も抜き取る。
「こっちだ! さあ早く!!」
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