第23話 奴隷契約
「それでは奴隷紋を刻みましょうか」
奴隷商は満足気な笑みを浮かべた。
奴隷には奴隷紋と呼ばれる魔術を施す。
例えば主人に逆らったら死ぬと言った非人道的なモノから、命令に逆らえば首輪が閉まると言った罰のようなものまでさまざまだ。
奴隷紋とは高度に圧縮・抽象化された魔術回路であり、その仕組みは魔道具と同じである。
そのため魔術回路である奴隷紋をどこかに描く必要がある。
「基本的な紋様は既に刻んでありますので、施術は直ぐに終わりますよそちらのインクに血を垂らしてください」
俺は作業用のナイフを自分の指に軽く突き立てる。
血が滲むのを待ち、小皿にあるインクに数滴落とすとインクの色は黒から赤に変色した。
奴隷商はインクを筆で吸い取り、洋服をはだけさせる。
少女達の奴隷紋は胸元や腹、二の腕、太腿と様々で、訊けば奴隷紋の位置はどこでもいいらしい。
ただし、奴隷紋は刻まれた部位を切り離せば無効化されるため、胸元や腹が望ましいそうだ。
素早く筆を走らせ模様を書き足すと数度魔力干渉光が明滅する。
魔術的な回路を形成しているのだ。
書き足された者から、苦しみだし地面に臥せるように丸くなる。
「あっ! ぬぅわぁぁあああああああんっ!!」
「おい!」
「御心配なく、主人と奴隷との間に魔術的な
強引に
「なら問題ない」
全員分の施術が終わると奴隷商は、決められたことを伝えるだけの淡々とした口調でこう言った。
しかもそれは、感情や説明しようと言う意思も感情も感じさせない定型文だ。
「お客様は彼女らの所有者となりました。所有者には奴隷に衣食住を与え税を支払う義務が御座います。義務を怠った場合、契約は無効となり行政に奴隷の所有権が変更されます」
ヤることヤったあとに賢者になった男かよ!! 商品が売れたらやったー! でアフターサービスはなしですか!? そうですか……
一瞬イラっとしたもののこの世界の商売と言うモノは、西洋風だとクラスメイトが言っていたことを思い出した。
「お客様はお若いですが、もしものことが御座います。奴隷に関する遺言作成の際には是非私どもをご利用ください」
一瞬、兄達のことが脳裏を過ったが性教育の一環で後が面倒にならないメイドぐらいはいるハズだ。と自分に言い聞かせ今は考えないことにした。
美少女とエルフには屋敷外の仕事は任せるつもりはないからな。
「グレテルを呼んで来てくれ……」
部屋を退出させていたグレテルを呼び戻し、奴隷を購入したことを伝えた。
「買ったんですか? 100万ゴールドの奴隷を?」
信じられないとでも言いたげな表情を浮かべるグレテルに俺はこう言った。
しかしそれは奴隷を売り買いすることを咎めている訳ではない。
無駄高価な奴隷を購入したことを信じられないと言いたいのだ。
「グレテルは知らないだろうが、冷遇されていた時代に屋敷を抜け出しては街にでていた。そこでここの主人と知り合って仕事をしていたその一つが、回復魔術を用い奴隷の価値高めることだ」
「……」
でっちあげの嘘っぱちだが、一気にこの場で奴隷を治したと言うよりは説得力があるだろう。
「報告はしないでくれると助かる」
「……回復魔術の腕が良いとだけは伝えさせていただきます」
「助かるそれと、こいつらの服を見繕ってくれないか?」
「わかりました……」
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