第19話 魔力量はたったの5?
―――魔術。
それは前世では物語やおとぎ話の中にしかなかった空想上の概念だが、この世界においてそれは確かに実在する技術体系だ。
奇跡である魔法と区別される魔術は、『火』『水』『土』『風』『雷』『闇』『光』など幾つかの
「それではナオスさまの魔力量を調べさせていただきます。さ、手を触れて下さい」
グレテルはそう言うと水晶玉をテーブルの上に置いた。
「魔力量は……5ですね」
「「……」」
魔力量たったの5かゴミめ……なんて言えたら空気が軽いのに……
これ105とか1005とかWEB小説で良くある。ケタ表示が対応していないとそう言うのだったりしません?
「ナオスさま気を落さないでください『魔力は量より質、質より使い方』ですから……」
「あ、ああそうだな……」
「気を取り直してまず魔術適性と魔力量は、基本的に親子で受け継がれます。父親が火で母親が水であれば、火だけ水だけの可能性、その両方が使える可能性、そしてそれ以外の場合がありこれを隔世と呼び――」
ここら辺は前世で知っている知識と相違ない。
しかし、
祖父母世代からの隔世遺伝や養子縁組など表立った理由のならまだしも、不倫や托卵って可能性も……まあ真相は藪の中ってやつだ。
「――テキストでご存じの通り、平民でも魔力があり魔術が使える者もいますが、貴族あるいは聖職者の子孫とされているように魔力とは貴族を貴族足らしめている要素なのです」
「魔力を持たずんば貴族に
そしてそれを後押ししているのがこの世界の諸宗教であり、いわゆる王権神授と言うものだ。
「どうやって魔術適正を調べるんだ?」
「簡単ですよ。属性を帯びた魔石に魔力を流す方法、これは魔力があっても適正がなければ魔法は発動しません」
「他にもあるのか?」
「例えば、特殊な魔力の籠った水『魔力水』に魔力を流すことで最も得意とする属性を判断できます。他には魔力に過敏に反応する特殊な植物の葉を用いる方法もありますが……属性魔石を用いる方法であれば、すべての属性に適正があるのかを目で見て判断できます。半面、複数得意な属性がある場合判別が難しいのですが……」
グレテルは言葉を詰まらせる。
彼女は俺が循環系以外の魔術を使えると思っていないのだ。
しかしそれを今この場で明かす訳には行かない。
「他の方法を組み合わせることで確度の高いモノになるという訳か……」
「その通りです」
昔は長々とした呪文を詠唱し術を何度か発動させ、その平均値で適正を確認していたのだが随分と進歩したようだ。
首振り人形のようにウンウン頷くと、赤、青、緑などの色とりどりの強大な結晶の前に立つとそれを指し示した。
「石に手を触れ意識を集中し魔力を流してみて下さい。適性があればそれに即した現象が生じます……」
この世界には希少属性と言われるものがあり殆どの人間が、『火』、『水』、『風』、『土』、『雷』の基本属性しか使用できないが中には、『光』、『闇』などの珍しいものに適正を示すものもいる。
五属性全てや全属性に適正を示す天与の才を持つモノもいれば、努力によって後天的にその属性を使えるようにした人間もいることを俺は知っている。
石に触れ順々に魔力を流していく……
火柱が立ち、濁流が生じ、突風が吹き荒れ、稲妻が迸り、雹が落ち、地面が割れる――なんて目立つことはせず。
マッチ程度の火が付き、水滴が生じ、隙間風程度の微風が吹き、静電気程度の電気が弾け、雪が指先で溶け、砂が付いた。
「まさか全属性に適正を示すとは……お辛くはありませんか?」
「大丈夫だ。続けよう……最も適正のある属性を知りたい……」
他の検査も行うが結果は変わらず。
「満遍なく才能があるようですね……」
「取り繕わなくていい器用貧乏だ」
前世でも器用貧乏だった俺だが努力して器用万能、魔王を倒す頃には万能者と呼ばれるまでに至った。
自分が器用貧乏だということは嫌と言う程に判っている。
しかし、なぜ前世同じ鑑定スキルや魔術適正が使えるのだろう? これも転生の特典なのだろうか? だったら魔力量も……俺は仮説を証明するため深夜こっそり離から抜け出し、河を経由してベネチアンの街の外に出た。
◇
「スラちゃんってボディースーツにも出来るし便利だよなぁ」
河を泳ぐときにスラちゃんをダイバースーツのように使用した結果、服がぬれずに済んだ。
前世での戦いを思い出すとあの時スラちゃんが居ればとつい思ってしまう。
魔力とは身体使い勝手のいいものだと、頭髪や血と言ったものに宿るとされている。
前世の感覚から言って魔力量がたったの5と言うのは違和感がある。
前世での魔力量の測定方法は、【ファイアーボール】のような基準魔術を何回撃てるかで判断していた。
これには二つ理由がある。
一つは当時魔力量を数値化出来なかったことと、【
しかし【
刻み込める術に限りがあり、例え複数の適性があっても通常は一種類を極めることになるため基準となる術は、高位の術者や専門の術者にとってゴミになる可能性が高いのだ。
だからこの方法が好んで用いられた。
魔術で火をおこすし、短剣で髪を乱暴に引き切ると火に切った髪をくべる。
火の光を浴びながらパラパラと潮風に流されながら護摩壇に髪が到達し火が燃え移る。パチパチと閃光花火のように炎が弾ける。
刹那。
ボウっ! と轟音を立てて炎が猛り燃え上がり、閃光と共に火を噴いた。
BOOOOOM!!
なーんて
それは炎と言うよりは爆発に近い現象いものだ。
炎の差それがの現在持っている魔力量の多さを雄弁に語っている。
「前世よりは少ないけれど十分に膨大と言っていい。魔力量53万と言わないけど、12,666や13,584ぐらいは行きたいよね」
闇夜に紛れて離れに戻った。
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