嫌いな彼氏の探し方

渡辺よしみ

ダメなところを箇条書きに

子どもの頃、動物園でライオンを見ながら思ったことがある、人間がライオンを飼育しているのではなく、ライオンが人間を飼育させているの、ライオンは人からの愛情を理解し、受け入れ、喜ぶ、人がライオンを閉じ込めているんじゃないの、ライオンが人を働かせて世話をさせているの、人にライオンを研究させ、ライオンを学ばせ、個体の好みを分からせ、これ以上ない環境を作らせ、住処とする、肉を食し、動物園という居住地を開拓したの


金曜の夜、仕事終わり、ハルトと待ち合わせをして、飲みに行き、そのまま家に泊まりにくる、土曜の朝はハルトと過ごす


おはよう、コーヒー飲む?

あー、ありがとう、お願い


お酒は2人とも好きだ、たくさん飲むわけではないし、酔っ払うわけでもない、お酒で気持ちよくなり、まったりして、そのまま愛し合う


はい、コーヒー入れたよ

サンキュー

今日どーする?

あー、お昼に予定あるわ

予定あるんだ…


予定があるなら先に言って欲しい、なんで予定あるのよ、と言い返してみたが、土曜の約束ないじゃん、と言い返された、そうじゃない、約束なくても土曜の朝を迎えるじゃん、そのあとのデートぐらい考えとけよ


あーわたしも友達と約束あるんだ、と返事した時は、無関心に、じゃー、一緒に出ようと言われた、あなたは起きて5分で家を出れますが、わたしは1時間以上は必要、部屋の片付けを考えると、もっと時間は必要です


今日これから出かけるから、と先手を会ったこともある、ベッドで寝てるだけ、わたしが準備をしていても起きる気配はなく、出かける直前まで寝ていた、出かけるよーって声をかけたら、起き上がり、パンツを探し、ズボンを履き、あくびしながらシャツを着て、顔も洗わずに、一言、行こうか…行こうかじゃないよ、昨夜のハルトの面影もない


いくつものベストアンサーはあると思うが、ハルトの性格を考えると、今日どーする?で相手のチョイスを聞いて、それにあわせることにしている、けど、これで良いの?なぜ、わたしがハルトにあわせないといけないの?ハルトがあわせることもできるし、ハルトがリードしてくれてもよいじゃんと思いながらも流されるのが、わたしです


友達のアイリはこの辺りが上手い、アイリは言える女である、言うことに抵抗はなく、思ったことを口にできる、男は言われた方が分かる生き物である、女は誰でも言えるとは限らない、長く付き合っていれば言わなくても分かるでしょ、という考えが最も危険である


アイリに相談したことがある、アイリは、んー、意識して言ってるのではなく、思ったことを口にしているだけだ、思ったことを口にすることは女の子にとって武器になる、けど、わたしは子供の頃、思ったことを口にしてしまい、深く後悔したことがある、それから口にする前に、口にしたら、その後、どうなるだろうと考える癖がついてしまった、一度、その後を考えると、その後は、その後は、と木の枝のように広がっていく、どの枝をたどってもベストな回答になったことはない


コーヒーを飲みながらハルトに聞いてみた

たまには土曜のお昼にデートしない?

どこ行きたいの?

どこ行きたいじゃなくて、映画とか公園散歩とかないの?

別に良いけど、観たい映画あるの?

別にないけど…

行きたい公園あるの?

御苑とか?

そうだね、散歩行こうか


何かモヤモヤが残るし、伝わってない気がする…そうだよね、ハルトはわたしがしたい事をしてあげたいと考えてるけど、わたしはリクエストしたことをして欲しいんじゃなく、ハルトから誘って欲しい、誘ってくれるなら映画でも良いし散歩でも良いし、カフェでコーヒー飲んだり、買い物したり、なんだって良いのに


なんとなく聞いただけ、予定の会う日は一緒にいれるし、お出かけしてるから楽しいよ

なら映画や散歩は良いの?

うん、行きたいって訳じゃないから

なにそれ?

来週もうちくる?

うん、仕事終わったらメッセージするよ

わかった

来週の土曜は何か予定あるの?

別にないけど、映画行くの?

行かないよ、予定を聞いただけ、土曜予定を入れる予定ある?

別にないけど、何聞いてるの?

もし、予定を入れるなら、わたしも予定を入れようと思って

予定入れるなら入れても良いよ

う、うん、予定入りそうなら前もってメッセージするね


ハルトなりの気の使い方、束縛男子よりましだ、若い頃束縛男子と付き合ったことがある、大量のメッセージ、電話、出先からでもテレビ電話したこともある、少しの間メッセージがなければ、心配したと、若い頃はこれが愛情だと勘違いしたこともあるが、いまはただただ面倒なだけ、結局、失敗を繰り返し、自由にさせてくれるハルトに行き着いた感じだ、ただハルトは自由すぎて、物足りなさを感じてきた


お願いをすれば色々してくれる、行きたいお店や、コンサートなど付き合ってくれたし、これは難しいかなーと思ったディズニーも行ってくれた、車で旅行したら運転してくれるし、悪くはない、むしろ良いカレシだと思う


今日何時ぐらいに出るの?

12時ぐらいかな

え、あと1時間もないよ

大丈夫


そうだった、この生き物は5分もあれば、わたしを孤独にできる、わたしが寝坊したときの最短記録は30分だ、男という生物は化粧がない分、寝る時間に使うと過去に学んだ


おはようのハグもなければ、おでこへのキスもない、まったりとした雰囲気はなく、今日はどうするかという一緒の部屋にいて、別々の空間、時間を過ごしているようだ、この朝の時間に何を求めるのか、朝起きて、昨日の夜は良かったね、と話しかけてもらいたいのか、そんなことができる男子はこの世界にどれだけいるの、ずっと前にそんなおとぎ話は忘れてしまったし、そんなの求めていない、メルヘンを求めれば求めるほど現実と理想のギャップが開くだけ、開けば開くほど辛くなるのはわたし、それだったら理想を高く持つより、現実に近い理想が良いと思った


半分ぐらいコーヒーを飲んだところで、シャワーを浴び始めた、いつからだろう、高い目標も持たず、流されやすく、相手にあわせ、わたしを抑え込み、トラブルを避け、無難に生きてきたのは、リンスを流し、石鹸で泡をたて、顔を洗うと、ちょっとしたリセットができる、考え事は考えても流して良いと思う、考えて負担になるより、考えなくリラックスする方を選ぶ


タオルで体を拭き、部屋着を着て、お風呂上がりのルーティーンを始める、不思議とパックや化粧水を使えば使うほど、頭がリセットされる、ハヤトのことは考える必要はなく、部屋にいることすら忘れそう、今日は何をするかも決まってなければ、やることもない、けど、ハヤトが予定を入れるなら、わたしも入れる、わたしが支度しているときにハヤトはちゃちゃっと着替えて、出かけるのであろう、わたしが出かけるにはまだまだ時間が必要である


部屋に戻るとハヤトはベッドに戻っていた、コーヒーも飲まずに、本当に男とは便利な生き物だ、あと10分もないというのに寝てられる生き物だ、起こす気もなれず、口もつけられていないコーヒーカップからコーヒーを捨てると、カップの内側にコーヒーの線がついていた、洗えば落ちる程度の汚れだが、なぜか線が目に焼きついた、わたしは何がしたいのか…


土曜からなにこんなにモヤモヤしなければならないのか、昨日は本当に楽しかったのか、ハヤトに大切にされているのか、急に激しい感情が込み上げて、何かにぶつけたくなった何のために支度をしているの、何のために洋服を選ぶの、今日という日をどのように過ごすの、わたしが決めて、わたしの思うようにしてみせる


ベッドで寝ているハヤトをみて1つのやりたいことが見つかった、ハヤトの予定を狂わすことだ、行かないでなんて言葉は使わないし、体調が悪いと言っても、ゆっくり休んでねと言われるだけ、ハヤトを止めるにはこれしかない


ハヤトの上に馬乗りになり、寝ている顔に口付けをした、強引に舌をいれ、吐息を出す、ハァッ、一気に体が熱くなり、下がもぞもぞした、ハヤトも寝ぼけながらも起き始め、手で触るあそこが固く、熱くなっている、ハヤトの腕を掴み、わたしの胸を掴ませた、機械的に動かす手から気持ち良くさせる動きになる


どうした?これから?


返事なんてしてたまるか、わたしはわたしがしたいようにする、おまえは約束の時間になっても出かけることがでない、あなたはわたしと時間を過ごし、今日という日が狂うの、予定通りに物事が進まず、その代償と引き換えに、一人の女性を得る、これが今日起こるべき事実なの


胸を顔の前に押し出し、口でさせる、あそこを触れば触るほど、この生き物は返してくれる、少し強くすれば、その強さが口に返ってくる、わたしもいつの間にか口でしていた、これじゃ不公平だ、あなたも口でするの、頭の左右に膝をおき、少しずつ足を開き、腰の位置を下げる、もう少し、もう少し、どのくらい下げれば良いの?、お腹が顔に当たるまで、クゥッ、舌で味わっているのが分かる、もっと押し付ける、奥の方まで、こんなに男性を圧倒したのは初めてだ、ハヤトがどうなっているか分からないが驚いていることが伝わってくる


濡れた髪はさらに乱れ、毛布はグシャグシャ、乱れるという言葉を体験しているし、いつもより大きく、いつもより濡れている、指が入ってからお腹の方に刺激を与えられ気持ちが絶頂する、もう手なんてどうでも良い、この熱く、固く、そそり立つ物を入れたらどうなる、もっと満たされるの、ハヤトォッ


スマホのラジアルが流れる、ポロロロン、ポロロロン


ごめん時間だ、出かけるわ

え、、、

もう時間ないから行くね


ハヤトはむくっと起き上がり、そそくさとパンツをはき、着替え、ベルトを調整する、その1分足らずの行動はわたしは呆然と見ていた


じゃー、またメッセージするね


そのまま出ていってしまった、この気持ちは何だろう、あんなに熱くなったのは、初めてだ、体の内側から湧き出るものがあった、けど、スマホのアラーム1つで終わってしまう、時計は11時55分を表示していた

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