その男も、要注意かもしれない④

崔 梨遙(再)

1話完結:1100字

 カズヤ君は着替えない。いつも同じ服装だ。同じジャケット、同じハイネック。同じデニムパンツ。それは、彼のこだわりなのだろうか?


 しかし、女子からは“清潔感が無い”と言われていた。



 そして、夜の繁華街。目が血走ってバキバキのカズヤ君。


「なあ、みんな、あれ行こうや。4900円でスッキリ」

「「「行かーん!」」」

「お前、この前3000円ポッキリでアカンかったやろ」

「いや、4900円も出したら何かあるやろ」

「「「いってらっしゃーい」」」

「みんな行かへんの?」

「「「行きませーん! 喫茶店で待ってるわ」」」


「ただいま」

「「「早いな!」」」

「4900円は入場料で、サービス料は別らしい」

「「「この前と同じ展開やないかーい!」」」



「崔君」

「風俗に行ってきたか?」

「行ったけど、本番禁止やった」

「そりゃあ、そうやろなぁ。それで?」

「本番できる店を教えてくれ!」

「もう、僕を巻きこむな! 自分で探せ!」

「また試験監督助手のバイトさせてくれ!」


「今度こそ!」



 1万円を握りしめたカズヤ君の目は血走っていた。正確には、バイト代1万円と小遣い5千円、1万5千円を握りしめて去って行った。



「崔君、行ってきたで」

「それにしては、まだ目が血走ってるなぁ」

「すごく良かったから、また行きたいねん。俺は目覚めたんや。もっとしたい!」

「あ、そういうこと」

「でも、これで俺は童貞ちゃうで」

「いや、“素人童貞”って呼ばれるで。要するに半人前扱いや」

「そうなんか? うおおお! せっかく童貞じゃなくなったのに! 残念や-!」


 カズヤ君は、雄叫びを上げた。



「ほな、やっぱり素人の女性を経験するわ」

「どこにそんな出会いがあるねん?」

「やっぱり、ナンパやろ?」



「崔君、アカンわ。美味くいかへん」


 そこへ、僕の好みの女の娘(こ)が通りがかった。


「カズヤ君、あの娘や!」

「すみません、結婚を前提に付き合ってくれませんか?」

「え、マジで言ってる?」

「マジです。さあ、行きましょう」

「何、こいつ。怖いんやけど」

「そこまでや!」


 僕は女の娘を庇う。


「これ以上の無礼は、僕が許さへんぞ。お姉さん、助けに来ました」

「ああ、ありがとう。あんた誰?」

「通りすがりの者です。あなたを救おうと思って来ました。お姉さんが、紫のよく似合う美人だったので、助けずにはいられませんでした」

「あ、紫、似合ってる?」

「はい、元々、紫は高貴な人の色。お姉さんにふさわしい。さあ、僕が来たから大丈夫、この男から守ります。そうや、女性1人は危険です。駅まで送りましょう」


 僕は女の娘と歩き出した。


「おーい!」



 後ろから何か声が聞こえたが、僕の耳には入らなかった。







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