金の盾と青い牢獄 第2巻 β版
村岡真介
第2巻 大戦編
あらすじ
オーキメントとドーネリアの戦争は膠着状態に陥っていた。そこへ死の淵から復活したリーガル教皇がやってきてオーキメントの兵をことごとく蹴散らしていく。なすすべもなく撤退していくオーキメント軍。負傷者を治そうとバームは仲間を引き連れカリムド正教の本部にむかう。そこで出会ったヨブ・シモンと名乗る謎の大司教。その口からこの世界の成り立ちと悪魔の正体を聞き驚くサキヤたち。戦局は凄惨を極め、大統領府はことごとく破壊される。みな東の州、ボートランドへ疎開するが。
入隊
サキヤはミールと一緒に船に乗り、故郷のアルデオ島に向かっている。
サキヤは軍に入ることを決めた。そうなると首都に住まなければならない。母は住み慣れた自宅で生涯を終えたいと言うであろうが、首都に移ってもらうように説得するつもりだ。
アルデオ島におり立った。久しぶりの故郷だ。あいつらどうしてるかな。あいつは、あいつは。友の顔が次々に浮かぶ。母に会った後、友の消息も探るつもりだ。
「ミール、目一杯の笑顔でな」
「私なんかが行って大丈夫かな」
「なーに心配ないよ。母ちゃん、明るい人だから」
実家に到着した。この辺りは大火からまぬがれて、家はそのまま残っていた。
「母ちゃん、母ちゃん!」
母が二階から降りて来た。
「お帰りーサキヤ。あれから音信不通だったんで心配してたんだよ」
サキヤは母とハグをする。
「この子は誰だい?」
「紹介するよ。俺の彼女のミールだ。挨拶に来たのさ」
「ミールです。お初にお目にかかります。よろしくお願いいたします」
ミールは頭を下げる。
母はミールを上から下にじろじろ見る。
「へー、かわいい子じゃないか。サキヤにもやっと彼女ができたんだね。私はフラウ。よろしくね」
そう言って二人はハグをする。
「生活に不便はないかい?」
「とりあえずは大丈夫だけどねー。貯金を取り崩す日々だよ。不安だね」
サキヤは顔を輝かせる。
「じゃあもう、ここから離れて大統領府に行かないか?めぼしいアパートも探してあるんだ」
「大統領府に?そりゃまた話が飛躍するね」
「俺、軍に入隊するつもりなんだ。父ちゃんのあとをついでね。入隊すると、まずは大統領府に行き訓練しなきゃならない。そのために母ちゃんにも一緒にいてほしいんだよ」
「そうかい。ここは名残惜しいけど、世話になろうかね。町がこんなじゃ仕方ないね」
母とも話がついた。夕食時にあれからの冒険譚を話して夜が暮れた。
「君が噂のサキヤ・クロード君だね。ジャンから話は聞いてるよ。なんでも金の盾を取ってきたとか。並の人間じゃあないね。軍は大歓迎だよ」
「ありがとうございます。いま戦況はどうなっているんでしょうか」
面接官は苦々しい顔をする。
「とにかく動きがない。毎日矢の撃ち合いが続くだけさ。あ、それはともかくとして、上官から言付かっているよ。君の階級は少尉だ。よろしくお願いするよ」
「し、少尉ですか。私に務まるでしょうか」
「なーに心配ないよ。なにしろ金の盾を持ち帰った者は英雄だ。自信をもちたまえ」
「は!」
いきなりのエリートコースから出発だ。「よっしゃ!」サキヤは自らに喝を入れる。最初から父の階級「兵長」を何段階も抜いたのだ。それは気合いも入ろうというもの。
軍の施設の中を歩きまわり、ジャンとバームを探す。聞いてまわると、いまは事務所にいるとのこと。喜び勇んでそこに入る。
「ジャン中尉殿!」
ジャンが顔を上げる。
「おー、サキヤ!久しぶりだなあ。元気か」
「はい、故郷の母を連れてこちらに移ってまいりまきた。そして入隊し、いきなり少尉に抜擢されました。ジャン中尉」
「まずは歓迎するよ、おめでとう。でも、ジャン中尉はおかしい。ジャンは俺のファーストネームだ。公の場では、ベルト中尉って呼んでくれなきゃ」
「ああ、そうか。まだ入りたてで、右も左も分からす失礼しました。ベルト中尉殿。敬礼!」
「ま、そのうち慣れるよ」
「何を書いているんでしょうか」
「まーだレポート書いているんだよ。怪物騒動の顛末を。特に教皇のリーガルのことだ。やつが戦争に関与すると大変だ。そうなったときの対抗手段を考えているのさ」
サキヤは後ろに人の気配を感じ振り返ると、でかいバームが真後ろに立ちにやにやしている。驚くサキヤ。
「こ、これはバーム、じゃなくて。なんだっけ」
「わっはっは。一回言ったことあるぞ」
「トリ、メリ、じゃなくて」
バームがしびれを切らして言う。
「ドリアーナだよ。バーム・ドリアーナ」
「失礼致しました。ドリアーナ中尉!」
バームがサキヤとハグをする。
「よし、今夜は俺の家でパーティーを開くぞ。こっちでは酒は飲めないからな。ジュースで乾杯だ。サキヤ、ミールは?」
「今、一緒に住んでおります」
「この野郎、うまいことやりやがって」
ジャンがサキヤの胸をパンチする。
「母も連れていっていいですか」
「ああ、勿論かまわんさ」
ジャンが満面の笑みを浮かべた。
「軍から大量の文が届いておりますが、リーガル教皇様」
「放っておけ、ジョーカーは最後まで取っておくものだ」
「しかし、すでに死者千五百人、重症者七千人となっておりますが……」
「ふーん。ただ出張るのでは面白くない。ヒームスを呼べ」
「は、至急」
ニムズがかしずく。
「フフン、ドーネリアの準備が遅れたことでかえって面白くなったではないか。はっはっは」
「ですな。これで教皇様が出ていきオーキメントを制圧すれば大陸の東側は教皇様のモノ。次に狙うは西の大国ガーマリア」
「まあ、それはまだ先の話よ。その前に倒さなければならない奴がいよう」
「おっと、そうでした。教皇様のお力をもってしても難しいのですか」
「倒すのではなく謀殺してやる」
リーガルはワインの詮を開ける。
「奴をはめ、あの世の果てに追いやる。そして奴の手下どもをこの手にする。しかるのちにガーマリアを手中に納める」
「どのようにはめるおつもりで」
「考え中よ」
しばらくしてヒームスが到着した。
「教皇様のお耳に入れたき儀がございまして」
「なんだ?」
「実はオーキメントの大統領を暗殺した黒幕はガジェル将軍だともっぱらの噂が飛び交っておりまして」
「なんだと、それは面白い」
「私が聞くにまず間違いないかと」
「そうか、オーキメントの指揮命令系統をぐしゃぐしゃにできるな」
「どうやってでございますか」
「ふふ」
リーガルはグビグビとワインをあおった。
「お師匠様、好き嫌いはダメですよ」
キリウムが野菜スープのジャガイモだけを横にどけているのを、カルムが目ざとく見つける。
「いいのじゃこんなもの食わなくとも、死にゃあせんわい」
カルムがキリウムの肩を揉み始める。
「あぁ、極楽じゃのう」
「お師匠様には長生きしてもらわねば」
カルムはキリウムに、亡くなった祖母を見ているのだ。
キリウムが思い出して言う。
「そういえばお主はピザを切る魔法『セカーレ』を面白がっていたのう。ついでじゃ教えてやる」
「ありがとうございます!」
キリウムはリンゴを取り出す。
「まず二つに切ってみよ。切るイメージをしっかり持って『セカーレ』と唱えよ」
「はい。セカーレ!」
パカッ
「ほっほ、次は八個」
「セカーレ!」
パカッ
リンゴは八個に切れた。
「うーん、まことにカンのいいやつじゃ。お主は鍛えがいがあるわ」
「ありがとうございます!」
「セカーレはここまでとして、次はいわゆるテレパシーでも教えてやるか」
「テレパシー?あまり必要ないような」
「いや、覚えておくと便利じゃぞ。相手の思っていることが分かると、敵か味方かすぐに分かる」
カルムが頷く。
「なるほど」
「それではいくぞ、ワシの思っていることを念じながら『アウディーレ』と唱えるのじゃ」
「『アウディーレ』ですね」
カルムが構える。
「アウディーレ!」
「どうじゃ?」
「洞窟が見えました」
「なんじゃその答えは。鳥じゃ、鳥。しかし洞窟か。ふと思い出したが、あの金の盾を持ち出した者と一緒に怪物と闘ったそうじゃな」
「はい」
「ワシの予感じゃが、その男とお主は、なにか重大なえにしで結ばれている気がする。水晶を覗こうぞ」
(サキヤか)
カルムは空を見上げた。
戦局の崩壊
季節外れの霧が立ち込めるなか、ドーネリアの大砲隊が塹壕の一点に向かって一斉に砲撃を開始する。
ドーン、ドーン、ドーン!
塹壕の中で寝ていたオーキメントの兵士たちが生き埋めになっていく。大将のナラニがようやく戦術を転換したのだ。塹壕は次々に埋まっていく。
工兵たちが出ばり即座に十メートルに渡って塹壕跡を平にならしていく。大砲台を前に進めるためだ。
「最初からこうすればよかったんだよ。あんなに死人を出しやがって」
工兵の一人がぶつくさ言っている。
「し!上の者に聞かれるとヤバいぞ」
「分かってるよ」
作業は続く。
ガジェル将軍は猜疑心が強い。まだ大統領暗殺の噂を気にしている。
そのテントの中に突然ヒームスが表れた。
「だ、誰だ貴様」
「ただの薬屋にございます。ガジェル将軍。お初にお目にかかります。ヒームスとお呼び下さいませ」
「その薬屋が朝も早くから何の用だ」
「実はよき薬をお持ちいたしました。気にいってもらえるかと」
ガジェルは興味が湧いた。
「どんな薬だ?」
「はい、実はこれでして。自白剤にございます」
ヒームスは「ウーラ」を取り出す。
「自白剤?」
ヒームスはひそひそと用法をガジェルに耳打ちする。
「それはいい、不穏なやからをあぶり出せるというわけか」
「はい、朝のスープに私が入れて参りましょう」
「頼んだぞ」
「御意」
ヒームスは消えた。
霧が晴れてきた。前線ではすでにドーネリアの工兵隊とオーキメントの弓矢隊が激しい攻防を繰り広げている。
この前線が突破されたらオーキメント側には命取りになる。必死の戦いが続く。
朝食が終わると将校たち約四十人が、ガジェルの呼び出しに集まる。皆朝の食事でウーラを飲んでいるので足元がおぼつかない。
原っぱの中座っていると、ガジェル将軍の登場だ。
「ご苦労」
皆が立ち上がり敬礼をする。
「さて今日集まってもらったのは大したことではない。みな気分はどうじや、いつもよりいいであろう?ん、どうじゃ」
「言われて見れば」
「んー、よき気分にございます」
「そうであろう、そうであろう。それでは順番に一人づつわしのテントにやってくるのだ」
最初の少将がテントに向かう。テントの入り口には左右に憲兵がものものしく立っている。
いぶかしく思いながらもテントに入る。
「まあ、座れ」
「何のご用でございましょう」
「気分がいいであろう」
「はい、空を飛ぶような心地にて」
ガジェルは小瓶をとりだす。
「みなが気分が良くなるように、これをスープにいれてあげたのじゃ。もう一本欲しいか」
「はい、いただけるのならば」
「そうであろう、そうであろう」
小瓶を取ろうとしたので、手で制止する。
「待て待て待て、まずはわしの質問に答えてからじゃ」
少将の目がだんだん血走ってきた。
「お前はあらぬ噂を吹聴したことはないか」
「そ、それは、将軍が大統領暗殺の黒幕だという話ですか」
「それよ。誰かに話したか」
「はい、同僚に伝えてまわっておりますが? 答えたので、その薬を」
「よく効くのうこの薬は」
「将軍。薬を!」
「えーい、やれるか!おーい入ってこい!」
憲兵がテントに入り、少将に手錠をはめる。少将は訳が分からない。
「連れていけ。段取りは分かっているな。城の地下牢だ」
「は!」
少将が叫ぶ。
「薬を、薬をー!」
ガジェルは隠していたウイスキーをうまそうに舐めた。
ヒームスが総本部に戻ってきた。リーガルに近づき報告する。
「ただいま戻って参りました。どうやら幹部将校の粛正が始まった様子。リーガル様の狙い通りでございます」
「そうか、ふふふ。これで指揮系統はズタズタ。ドーネリアが一気に優勢になったということだな。では、参るとするか。ニムズも行くか?」
「お供いたします」
リーガルが左手を軽く振ると、円形の魔方陣が表れた。
その上に立つリーガルとニムズ。ゆっくりと体が消えていく。
「えーい、こりゃきりがねーな」
負傷兵をヒールの魔方で治していくバーム。次々と詰所に運ばれてくる兵を見ながらつぶやく。
「応援が必要だ。俺はもう魔力切れだ。カリムド正教の本部に行ってくる」
バームは同僚たちにそう告げると、事務所に顔を出す。中ではジャンがまだリポートと格闘中である。隣にはサキヤが。
「ジャン、サキヤ。付いてきてくれ。カリムド正教の大礼拝堂に行く。ラミル流の使い手たちに応援を頼みに行くんだ」
「おう、そんなに戦況がひどいのか」
「ドーネリアの方が戦術を変えて大砲をぶっ放し始めたんだ。おかげで俺は魔力切れだ。ラミル流の魔導師をかき集めてくる」
「分かった。緊急事態だな。来いサキヤ!」
「はい!」
そこへピリアが表れる。
「サキヤよ。唐辛子をくれ」
「ほれ!」
少しピリアに腹が立つサキヤである。
三人は軍事施設を馬で後にする。早馬で半日の距離だ。一目散に馬を飛ばす三人。三時間もすると、馬のペースが落ちてきた。
「少し馬を休めさせよう」
手綱を引き川の水を飲ませる。
「ジャン、リーガルが来た場合負傷者はさらに多くなるぞ」
「分かっている。やはりキリウムをぶつけるしかないな。うちの大砲は十台だ。これでリーガルを倒せるとは、とても思えない」
「それしか手がないようだな、ウォンティア!」
バームが馬に与えるかいばを出した。
「わ!なんだよその魔法」
「はは、見せたことなかったかな。このウォンティアって魔法は、流派を問わずまず身につける初歩の魔法だ。ひじょうに便利な魔法だよ。俺はなるべく使わないようにしているが」
「魔法剣士恐るべし、だね」
サキヤも驚いている。
「ははは、そういうこと言われるから普段使わないんだよ」
しばらくしてからジャンが号令をかける。
「よし馬も十分休んだだろう。出発しよう」
「は!」
(夕方までには間に合ってくれよ)
サキヤはそう念じ、また馬を出した。
戦場に表れたリーガルとニムズ。まずは大将のナラニの所に行く。
「戦局はどうなっている。俺がリーガルだ」
「こ、これはリーガル教皇さま。来ていただけましたか。恐縮でございます」
ナラニが頭を下げる。
「オーキメント側は最初国境線いっぱいに塹壕を掘っておりました。そこで矢で倒そうとしましたが、向こうは塹壕から矢を撃ってきますものですからこちらは断然不利。そこで作戦を変えて大砲で塹壕を責め、ようやく大砲台が進める道を作ったところでございます」
「塹壕内に敵はまだ潜んでいるのか」
「ずらりと並んでおります」
「そうか、ではそこから攻めよう」
「ありがとうございます!」
リーガルが塹壕の方へ歩いていくと無数の矢が飛んでくるが、透明な盾を持っているかの如く、リーガルの前で弾かれてしまう。
塹壕までやってきて右手を伸ばすと
「フレア!」
呪文を発すると塹壕内の兵たちが紅蓮の炎に包まれる!
「ぐわー!」「ぎやー!」
地獄の炎に焼かれ、兵が次々に倒れていく。
リーガルは振り返ると今度は反対側だ。
「うわー!」「げやー!」
「クレピタス!」
次は地上に展開している兵に向けて容赦のない怒涛の攻撃。
ズガーン!
バカーン!
大量の兵が吹き飛ばされ、前線はパニックに陥る。
「助けてくれー!」
後退する兵に向かってドーネリアの大砲が火を吹く。
ドーン!
ドーン!
なにしろオーキメント側は、すでに指揮命令系統が崩壊している。大佐たちが大声で叫ぶのみ。
「退却だー。退却だー!」
膠着状態はこうして突破された。
まだ部下の尋問をやっていたガジェル将軍。ドーネリア軍に捕まり、酒に酔った赤ら顔を上にあげ、連行されながら叫び続ける。
「さ、酒を、酒をー!」
悪魔の正体
パカラッ、パカラッ
大礼拝堂まであとわずか。三人ははやる。
小山の中腹にどてかい入り口。衛兵などはいないようだ。信者たちが自由に行き来している。
「案外無防備だな。しかし入り口がでかいな。中はどれだけでかいのか想像もつかねーや」
「恐ろしくでかいぞ、サキヤ。カリムド教の総本部など比べるべくもないほどに」
三人は馬から降りて手綱を横の木につなぐ。そして正面から入っていく。
バームは迷いもなく事務所に向かう。
「勝手知ったる我が家だ。小さいころから魔法を教えてもらいに通ったもんだ」
中は巨大な礼拝堂となっていた。圧倒されるジャンとサキヤ。
その一角に事務所があった。入っていく三人。
「司教様!」
「おおバームよ。そくさいか」
「実は今日はお願いしたいことがございまして」
「なんじゃ」
「戦局が悪化しております。重症者も増えるばかり。ラミル流の使い手を三十人ほど貸してはもらえないでしょうか」
「三十人とな。ほぼ全員ではないか。うーむ、私の一存では決めかねるな。大司教さまに判断を仰がねば。付いて参れ」
バームが聞く。
「大司教様とは、あのヨブ・シモン様ですか」
ジャンが言う。
「俺も聞いたことのあるお名前だ。自らをヒールし続けて、もう何百年も生きているとか。ラミル流最強の使い手」
「そうじゃ。私など足元にもおよばぬ術者じゃ。急ごうぞ」
礼拝堂の真ん中に小さな入り口がある。サキヤが進もうとすると……
「止まるのじゃ!」
「え?」
「そこから先に進むと切りきざまれるぞ。『顔認証』なるものが必要じゃ。ちょっと待っておれ」
司教がなにやら壁の前に立つと、装置らしきものが緑色に光った。
「これでよし。ついて参れ」
少し進むと、ドアが自動で開いた。
「ニカラーニャです。お目通りを願い出ている者たちがおりますが」
遠くから返事がする。
「構わん、通せ」
「はい」
司教が振り返る。
「進み出よ」
バームを先頭にみなが男の方に進むと、男は机に向かいなにやら書きものをしている。男が振り向くと、皆が「あっ!」と声をあげた。
そこにはイメージしていた老人の姿ではなく、三十歳くらいの若い男がいたからだ。
「私がヨブ・シモンだ」
戦局は苛烈を極めていた。リーガルの術が猛威を振るう。大砲が鳴り響く。オーキメント軍は退却につぐ退却。死者も重症者も膨れあがるばかり。ラミル流の使い手たちは魔力切れを起こす者が続出する有り様。一方的な展開が続いている。
大統領府ではフラウがミールに母直伝のクッキーの焼き方を伝授している。
「お母様、どうですか」
「こりこり、もう少し焼いたほうがサキヤ好みだね。サクサクしてというよりザクザクしているのが好きだからね、あの子は。私はこのくらいでいいから、お茶の時間にしましょう」
フラウがお茶をいれ、二人で出来上がったクッキーをいただく。
「今日は帰ってくるの遅いですね」
「そうね。軍人はいろいろあるから。でも驚いたよ、いきなり少尉でしょう。少尉っていったら幹部候補生だよ。金の盾様様だね」
フラウは横に立て掛けてある金の盾を見ながら言った。
ミールがふと窓を見ると、大勢の人が通りに出て何やら話し込んでいる。
外に出ると、何があったのか聞く。
「なにやら国境を突破されて、ドーネリア軍がこっちに向かってるんだってさ」
「オーキメント側は総崩れ、みんな避難を考えていたところだよ」
(また潰されるのこの町)
「お母様、避難しましょう。殺されるわ!」
「そうね。じゃあ、アルデオ島に帰ろうかね」
「それがいいと思います。急いで!」
「ああ、もう怖いねえ、戦争は。あの人を思い出してまた涙がでちゃうよ」
「お母様」
ミールは泣き出したフラウの背中をさすり、自分も涙する。もしサキヤが戦場でやられたら、自分はどうすればいいのだろう。
(サキヤ)
二人は身仕度を始めた。
「君たちは、歴史に興味はないかい?」
「そりゃあありますけど、いまは一刻を急いでいるん」
「それを聞くと悪魔がいかなる者か分かると言ったら?」
「それは聞き捨てなりませんね。教えて下さいますか」
ジャンが身をのり出した。
「ふふ」
シモンが目をつぶり語り始めた。
「その昔、と言っても想像を遥かに超えた昔、一万年も昔のことだ。人類は超高度な文明を築いていた。科学は極限に達し、誰もが永遠の幸福と快楽を得ていた時代があったんだ」
サキヤが尋ねる。
「永遠の幸福?死なないってことですか」
「そうだ。君たちが死の病と恐れているもの、ガンと言うんだがな。それすら医療の発達で克服し、さらにヒールの魔法の原型となった技術も開発され、皆が不老不死になったと喧伝されるようになった」
ゴクリ
「しかしだ。臓器移植出来ないただひとつの箇所がある。どこだと思う?」
「心臓?」
「違う」
「きん○まじゃねーか?」
「違う」
「脳……ですか?」
サキヤが答えると、シモンがにやりとする。
「そうだ。鋭いな君は」
シモンがあらためて語り始める。
「脳にできたガンは摘出できる。だがもっと厄介な症状がある。それは『ぼけ』だ。これが進行すると自分が何者かすら忘れ、幸福も、快楽も欲しなくなる」
「なるほど、ぼけは厄介だ。治らないからな」
ジャンがうなずく。
「それを見ていたまだぼけていない老人たちは、新しい不老不死の技術にすがり付いた。それは脳を新品の量子コンピュータのチップに写し替えるというものだった。どのような手術を施されたのかは知らないが、麻酔から目覚めたとき意識も記憶も連続しており、生き返った気分だった。すると体にしがみついているのがひじょうに煩わしくなり、体を捨て、量子コンピュータのサーバーに直に直結するものが後を絶たない事態となった。その数一万人」
「一万人!シモン様もそのうちの一人なんですか?」
「そうだ。私の頭脳は、ほれ、その青色のサーバーの中にある」
「え?じゃあここにいるのは」
「魂はあるのだよ。死んではいないのだ。しかしな、この量子の海には途方もない広さのある街もあり、人との接触もあり、旨いものも食えるが、やはり生の実感が足りない。男はリアルな女を求め、女はリアルな食を求めて、いつしか魂だけ抜け出す輩が出るようになり、いまにいたる。これで察しはついたであろう。その人間に取りついた魂こそ、悪魔の正体よ」
「な、なんと!」
「抜け出す魂、だと?」
「じ、じゃあ、その量子コンピュータとかいうのさえ壊せば」
「それは無理な相談だ。私はこの量子コンピュータの番人だからね」
シモンは右手を空中にかざし「フレア!」と叫ぶと、巨大な炎の塊が渦をまく。
「このようにメールド流も使える」
シモンがニヤリとする。
「ここの動力源は核融合でまかなっている。その期間は一万四千年後だ。そこでこの量子コンピュータも止まり、一万人の魂もようやく天に帰っていくだろう。まだまだ先の話しだかな」
シモンは語り終えたとみえて、満足そうな笑みを浮かべる。
「お願いいたします。ある一人の悪魔によって、もうすでに何千人も殺されています。その男のチップだけでいいんです。何とぞ」
「出来ない相談だな、私は裁定者ではない。あくまで番人だ。合議で決まっているんだよ。一人でもチップをとりのぞき、故意に壊したりすると、私は殺人者になる。むこうの街にも刑務所があってだな、途方もない罰を受けるんだ。勘弁してもらいたいね」
「分かりました」
引き下がるしかない三人であった。
キリウム死す
ラミル流の使い手を連れていくことはシモンの許可がおりた。魔導師三十四名全員を前線の詰所に連れていくのだ。
全員白いローブを羽織り、馬に乗り大礼拝堂を後にした。
サキヤはまだ考えている。
(一万人の皆が悪魔じゃないよな。一部の悪い魂を持った奴が悪魔なだけだろう。人外の存在になっても、良心は忘れまい)
すでに真夜中である。サキヤは母とミールを心配する。
(たぶん、大統領府に進軍するだろう。逃げ遅れなければいいが)
一緒に付いてきているニカラーニャ司教が、バームに声をかける。
「大司教様の話を聞いてどう思った?」
「話が突拍子もなく、まだ頭の整理が付いておりません」
「そうであろう。大司教様は人間ができたお方じゃが、残りの一万人がこちらに大量に出てきたとしたらこの世は悪魔だらけの地獄と化す。大司教様は楽観的じゃが、私は悪い予感しかしないのじゃ」
「ごもっとも」
「大司教様には悪いが、なんとかあの悪魔の予備軍の巣窟を壊す手立てはないのか、私がこの道に入ってからずっと考えている問題よ」
「よーし宿場町に着いたぞ。ここで一旦休んでいこう」
ジャンが声をかけると、皆が同意するのであった。
ミールがサキヤの大きめのリュックに下着など最低限の荷物を詰めそれをかるうと、金の盾も左手に持ち準備は整った。母はバッグに荷物を入れている。
人々は、寄り添いながらこの町をあとにする。
ミールは「アルデオ島に行きます」とサキヤに置き手紙をし、母と二人で通りに出る。避難する者たちの流れに身をまかせ、歩き始めた。
しばらくして宿場町に着いた。しかしどの宿も避難民で満杯である。しかたなしに夜通し歩こうと決めた。母にそう告げると、母が応じる。
「平気よそれくらい。まだそこまで歳をとっているわけじゃないつもりよ」
と、母は笑った。
翌朝、バーム率いる魔導師の一団が、負傷兵でごったがえす詰所に入っていく。
「こりゃあひどいな」
バームがうめく。
ラミル流の使い手たちが早速ヒールで手当てをしていくと、治った者が口々に訴える。
「ドーネリアの前線に怪物のような魔導師がいるのです。こちらの攻撃も全く当たらず、オーキメント側が束になってもかなわず前線は地獄と化しております。必ず大統領府にたどり着くでしょう、私は家族がいるので退却いたします」
兵が続々と撤退していく。大統領府に向かって。
ドーネリア軍は大統領府まで、あと一日の距離にまで迫っている。霧が晴れてくると大量のテントから、兵があくびをしながら出てくる。
その前線に二つの魔方陣が浮かび上がった。そこに人の影が表れた。一人は老婆、もう一人は軍服にマントを羽織った若者。キリウムとカルムである。
「お師匠様、気をつけて」
「なんということはない。寿命もたっぷり頂いたしな。若返った気分よ。ほっほっほ」
さかのぼること一時間前。
もみの木の家にオーキメント軍の人間三人がやってきた。そしてキリウムに出陣するように乞い願う。
「とにかく一人の魔導師さえ倒してもらえれば、それでかまいませんので!」
キリウムがまだ眠そうに言う。
「ワシゃもう隠居の身じゃ。若い魔導師を当てればよいではないか」
「いえ、相手は化け物のような魔導師。キリウム様でないと到底かないません。報酬もほれ、この通り」
バッグには大量の金貨が。
「金などいらんわい、どうしてもと言うんならそこに置いていけ」
「で、では」
「しかたない。行ってやろう。ただしじゃ、お主らの寿命を十年ずつ貰う。文句はないな?」
「我らは兵士、もとより死を覚悟した身。十年くらい喜んで差し上げましょう」
ゆっくりと、ゆっくりと、リーガルが歩いて来る。そして止まった。キリウムとの距離三十メートルに迫る。
「ついにこの婆さんまで出陣とは、オーキメントもいよいよネタ切れか、ふっふふ」
「ほざくな、リーガル!これまでの悪逆無道の数々、逐一お見通しじゃ。観念せい!」
「はりきってるな、婆さん。また寿命でももらったか。これから死ぬというのに」
「こちらから参るぞ、クレピタス!」
リーガルの前で大爆発が起きる。煙がもうもうと上がりリーガルの姿が消えた。
「よっしゃ、いったか?」
叫ぶオーキメントの軍人たち。
しかし煙が晴れてくると、リーガルは無傷で立っている。
「ではこちらの番だ、セカーレ!」
「セカーレじゃと?」
リーガルが人差し指を真横に払うとキリウムの防御陣を切り裂き、さらにキリウムも上半身と下半身が切り裂かれた!
「ぐ!ピザを切る程度の魔法を、ここまで増幅するとは、がは!お主は悪魔か……」
リーガルはさらに指先をピッピッピッと横に払う。キリウムはドシャメシャと至るところ切り裂かれ崩れ落ちた。
「お、お師匠様ー!」
駆け寄るカルム。しかしすでに息はなく、ただの肉塊になりはてていた。
「うわー!」
覆い被さり泣きわめくも、すでにキリウムは旅立ってしまった。
「クレピタス!」
カルムが必死で反撃するも、リーガルはにやにやするだけで一歩、また一歩と近づいてくる。
「お前を氷の中に閉じ込めてやろう。グレイス!」
「スクートゥム!」
見えない壁が冷気を受け流す。その隙にカルムはキリウムの頭部だけをつかむと、魔法陣に走って行き、かき消えた。
詰所の重症者もラミル流の僧たちによりあらかた治った。
「撤退だー、俺たちも撤退するぞー!」
皆に号令をかけるバーム。そこに忍びよるリーガルの影。
ドーン!
大砲の玉が詰所を爆破する。間一髪逃げ出す僧たち。馬に乗り大統領府へ走り去る。
その時!バームは何者かの影がドーネリア軍側に走って行く気配を感じた。
「まさか!いや、まさかな」
「どうした、バーム」
親しい僧が聞く。
「いや、俺が軍師なら、この間隙をついて魔導師をドーネリアの首都ガレリアに送り、同じく街を崩壊させると思ったんだがな。この状況じゃあな」
ふと思い出す。前リーガル教皇を殺害し、逃げ去った男のことを。
(ふん。そんなことが)
「は!」
バームは馬を飛ばした。
サキヤはアパートに帰った。これからドーネリア軍が進軍してくる。狙われるのに、この一角も入っているのは間違いない。
「ただいまー!」
人の気配はない。
中に入ってテーブルにある置き手紙を見つけた。
(よーし、よかった。アルデオの実家に帰るようだな)
サキヤは近所のジャンの家に向かう。
ちょうどジャンと玄関で鉢合わせた。
「おー、サキヤか。家族は多分避難した。無事だ」
「こっちもです。アルデオ島に向かっています」
「よし、俺たちも避難しよう。軍人としては口惜しいが、反撃のしようがない。これからこの街は破壊される。逃げるが勝ちだ」
「はい。行きましょう」
二人は街を離れた。
フォン
空間が切り裂かれカルムが帰ってきた。
庭に佇み、しばしキリウムの顔を見る。たったの二ヶ月ほどの弟子入りだったが、ユーモアと笑いにあふれた生活だった。祖母と姉のつらい死を忘れさせてくれた毎日だった。
「お師匠様」
キリウムの頭を抱きしめると、渇れていた涙がまたあふれ出た。
穴は自分の手で掘った。
「くそっ!くそっ!」
穴に首を安置し、好きだったピザを横に添えて祈りを捧げる。たった一人、いやたった二人っきりの寂しい葬儀だった。
シャワーを浴び、ベッドに体を投げ出す。
憎きリーガルの顔を思い出し、脳裏に刻み込む。
(なぜあんなに魔力が強いんだ)
怪物退治の時もそうだった。あまりにも差が開いている。
(なぜだ)
リーガルは悪魔だということがカルムには分かっていないのだ。
(どんな手を使ってでもリーガルを倒す!)
うつらうつらし始める。
(どんな、手を……)
カルムは眠る。より良い明日が来るのを信じて。
月が出てきた。もうすぐ冬が終わる。
壊滅、大統領府
ドーネリア軍が大統領府の目前に迫る。大砲隊はまだ破壊されてない、旧市街へ向かう。リーガルはそこを離れ、大統領官邸を目指す。
「撃てー!」
ドーン!
人口の八割は逃げ出したが、まだ動けない老人、身寄りのない子供、地下室に隠れている市民。
ズガーン!
そうした者たちが、次々に犠牲になっていく。
五十台もの大砲の威力は絶大であった。
しかしもみの木の家は壊れない。あるようでない。そうした空間に飛んでいるからだ。
その中でカルムはキリウムが残した膨大な古文書を読んでいる。古代の魔法、失われた魔法などから探しているのだ。魔力を上げる方法を。
砲撃の音が聞こえる。カルムは背もたれに体を預ける。
「この街ももうおしまいだ」
小さな頃からの記憶をたどり、まだ幸せだった昔を思い出して、少しだけ目を潤ませる。
しばらくそうしていると、もう全てがどうでもいい気がしてくる。
「いけない、誓ったんだ。きっとお師匠様の仇を取ると」
また古文書を探して図書室に行くと、なにやら手書きの文書を見つけた。
カルムはそれを手に取る。
「日記か」
椅子に座り興味深く読んでみると、こよみから二十年前の物だと分かった。
読み更けるカルム。「最後の弟子」という記述。
「俺の兄弟子か。計算するといま四十歳くらいか。何か知っているかもしれないな」
カルムは考える。
「接触してみるか」
夜がふけていく。
難民の群れは最も東のボートランド州を目指す。州兵が警備にあたってくれ、難民一人一人に毛布を配っていく。
となりのトータム州との境は両側が断崖になっており、もし敵が攻めてきた場合狭い谷の一本道を通ることになるので、崖の上からひじょうに攻撃しやすい地形になっている。いわば天然の要塞となっているのだ。
崖の上の砲台にバームが登っていく。
武器庫にいき、州兵と敬礼をする。
「プレゼントだ」
武器庫の中に入り「ウォンティア!」と呪文を唱えると、大量の爆裂弾が出現する。
「ここで踏みとどまってくれよ」
「は!」
州兵が敬礼する。
「クレピタス!」
新市街のまだ壊れていない建物も、リーガルが徹底的に爆破していく。
やがて大統領官邸の門の前に着いた。
リーガルは中に入り右手を構えると、極限に集中する。
「クレピタス!」
ズバーーーン!
官邸は大爆発を起こし崩壊した。中にいた従者三十人が命を落とした。
リーガルは叫ぶ。
「面白い、面白いぞ!わっはっは。崩れろ!壊れろ!わーはっはっは」
「これでこの国も、教皇さまのものですな」
ニムズがつぶやく。
「ニムズよ。なぜ悪をなすと楽しいかわかるか」
「さ、さあ。私は一従者に過ぎないので」
「それはな、本能が充足されるからだ。虎を見よ、鷹を見よ。動物どもは、本能のままに自分より弱き者を殺害して生きている。人間も同じだ。動物を殺戮することで生きながらえてきた生き物よ。それを、法律や政府によって押さえこまれて生きている。人間が悪として恐れるもの、それすなわちむき出しの本能よ。だから悪をなすのは喜びなのだ。わっははは」
「性悪説ですか」
「自然の摂理よ」
「ともあれ、この国は滅びました。もとより兄弟国として宗教も同じ、言葉も同じ。征服しやすい国を手に入れられましたな」
「お前が治めてみるか?」
「わ、私がこの国を、ですか」
ニムズは狼狽する。
「考えておけ。ドーネリアと同じようにカリムド教の十三戒のうち酒もタバコも解禁する。住みやすい国にするのだ。そして酒とタバコに税をかけよ。儲かるぞー。はっはっは」
「しばらく考えさせてもらえますか」
「まあ、焦ることでもないわ」
「御意」
リーガルが椅子に座ってタバコを吸い始めると、将校が一人駆けてきた。
「旧市街地も、ほぼ壊滅させました。事実上この都はなくなりました」
「そうか。ナラニの所へ行こう。リュドミュラを連れてな。それと、あの金の盾が持ち出されたという噂は本当か」
「間違いないかと」
「厄介だなそのような者がオーキメント側におるとは、一刻も早く探してくるんだ。いいな!」
「は!」
リーガルは立ち上がり地面に魔方陣を出現させた。
パカパカ
サキヤとジャンは馬に乗り、難民と共にボートランド州を目指している。
「金の盾はもう持ってこなかったのか」
「いや、アパートにはなかった。おそらくミールが持ち出しているはずだ」
「しかしおかしな事態となったな。俺たちが金の盾を持ち出す間になぜかいきなり戦争となり、その宣戦布告をした大統領はその日に暗殺され、戦争には負け都落ちし今に至ると。人生不可解なことだらけだ」
「思いどおりには行かないことだらけだね」
「全くだ。ところでお前、州兵になるつもりはないか」
「州兵に?」
「ボートランド州のだよ。いまボートランド州には難民が続々と集まっているだろう。それをドーネリアの征服から守るんだ。軍人ってのはな、最後はそれが生き甲斐でもあり、目標でもあるんだ。攻める側にはまた出世や名誉など別の野心があるがな。守るべき人々を守って死んでいく。これほど素晴らしい命の使い方はない。どうだ」
「へー、ジャンもまともなこと言うんだね」
「蹴るぞ、お前」
サキヤたちは崖中の一本道のてっぺんにきた。
「ここがドリーナ峠だ。ここからボートランドだ。天然の要塞。ここを突破されると、もうアルデオ島にしか行き場がなくなる。しかしここの守りは鉄壁で崖の上から四台の大砲の台座があり、敵を向かえ撃つ。ドーネリア軍でも突破は無理だろう」
「州兵の話は考えておくよ。まずは母ちゃんとミールが心配だ。アルデオ島に帰るよ」
「そうだな。俺も家族のことが心配だ。そっちを優先させよう」
「了解!」
州兵から毛布を手渡される。まだまだ夜は寒い。
ナラニ大将の所にリーガルが表れた。驚くナラニ。
「ナラニ、お前は大将から総大将に格上げだ」
「大将がいなくなりますが」
「こいつが新しい大将だ」
リーガルの後ろから女兵士が表れる。
「これはこれは、総大将閣下」
「リュドミュラではないか!」
「は~い」
「リーガル教皇様、少佐ですぞ彼女は!」
「だからどうした」
困惑の表情のナラニ。
「務まりますかなー。大将が」
「これから全軍を指揮するのはこの女だ。メールド流の魔導師でもある。ドリーナ峠で必死の攻防が予想される。適任者はこの女しかいない」
リュドミュラはニヤニヤ笑っているだけだ。
褐色の肌にスレンダーな体。やや厚化粧だが、美しい顔。もちろんリーガルの女の一人である。
ナラニはかしこまって敬礼をする。
「それでは、そのように手配をしてまいります」
ナラニは去って行った。そしてテントに入る。
それを見ていたモントアール中将が同じテントの中へ。
「もう、王のつもりよ。リーガルのやつ」
「リーガルは誰にも倒せん。言うことを聞くしかない」
「ふん、物分かりのいいことで」
「お前も妙な気を起こすなよ。死ぬぞ」
「ふう」
ナラニはウイスキーを取り出し飲み始めた。
「あなた、しっかりして、あなた!」
ドーネリアの首都ガレリアの王城でフィリッツ・エレニア王が最後の時を向かえようとしている。
王妃ネーブルがその手をしっかり握って祈っている。
「あなた、フィリッツ」
ガクリ
「いやー!いかないでー!」
こうして王は旅立った。死因は薬物中毒。しかしそれはふせられ、心不全とされた。
三日後、国葬が始まった。ドラド総大将を公開処刑にした時は悪評もたったが、それまでは民思いの立派な王であった。
城からひつぎが衛兵によって担がれ運び出される。隊列は静かに前へと進む。
ドーン!
遠くで大砲の音がする。みな、それを礼砲だと思った。しかし次の瞬間!
ガシャーン!
怒りの砲撃
城の半分が吹っ飛んだ。葬儀に参列していた皆が仰天し、パニックとなり逃げ始めた。
ドーン!
次がやってくる。
ズガーン!
もう半分に当たり、城は瓦礫と化した。
城の裏の小山で、男が叫ぶ。
「魔導弾だ。威力は通常の十倍よ!はっはっは。どれ、次は街だ」
ドカーン!
ズドーン!
無差別に一人の男の手によって、街が破壊されていく。皆、通りに出て来て右往左往している。
葬儀の列を先導していたラミル流の司教が叫ぶ。
「あの小山からじゃ!」
近衛兵たちが一斉に登って行っても誰もいない。
ドーン!
また砲撃が始まる。
「今度は西の時計塔からじゃ!」
次は王府の兵が向かう。
「そこの男。降りてこい!でなければこちらからいくぞ!」
「ふん」
男が消えた。
兵が下で騒いでいる。
「おのれ、魔導師か!」
(腕は一流になったが、酒に溺れ、ここを去ったと、なるほど)
カルムはまだ日記を読んでいた。八年も弟子に付いていたのなら、魔力を上げる方法を知っているにちがいない。
水晶の前に行き、手をかざし念じる。
「クウァエレ メル ボレロ・ストゥーマ」
水晶に男の影が写しだされる。なぜか横に大砲らしき物が。
ドカーン!
「撃った!」
もう一発。
ドーン!
「戦争をやっているのか?このボレロとやらは?」
カルムは男の顔を覚える。歳は四十歳くらい。記述通りだ。平凡な顔に平凡な服装。思いきって頭に直接呼び掛ける。
「アウディーレ!」
(ボレロ、ボレロよ)
ボレロが頭の中で答える。
(誰だ、アウディーレで俺の頭の中を探るやつは!)
(俺はカルムという。キリウムが殺られるまで弟子入りしていたものだ)
(ふーん、じゃあ俺の弟弟子だな。何の用だ。こっちはいま忙しいんだ)
(そのようだな。何をしているんだ)
(ドーネリアの首都ガレリアをぶっ潰しているところよ。キリウム婆さんの仇討ちだ。ところで何の用だ)
(後で落ち着いたらまた連絡する)
(そうかい。じゃあまたな)
それきりボレロは心を閉ざしてしまった。
砲撃は夜になるまで続けられた。街の至るところが爆破され、人々は逃げ惑いやがて郊外に避難していった。
夜になった。カルムがふたたび水晶をのぞくと、ボレロは酒場のカウンターで飲んでいる。
(兄者よ)
(さっきの弟弟子か)
(そうだ。名はカルムという、よろしく頼む)
(で、用とは)
(魔力を上げたいのだ。兄者もリーガルとお師匠様の対決を見ていたんだろう?しかし仇討ちはリーガルを相手にはできない。それでうっぷん晴らしにガレリアを襲っている、そんなところか)
ボレロが眉をよせる。
(人の頭の中を読むのは得意みたいだな。キリウムとは何年一緒にいたんだ?)
(二ヶ月だ)
(たったの二ヶ月か!それでアウディーレまで教えてもらったのか。クレピタスは使えるのか)
(ああ、二日でモノにした)
(二日!)
(しかし、リーガルにはかなわない。それで兄者なら知っていると思ってな)
(魔力を強くする術か)
(ああ、教えてくれ)
ボレロはしばらく心を閉ざした。
カルムが再度念じると、ボレロはまだ考えている。
(一つだけ方法がある)
カルムが狂喜する。
(本当か!それでその方法とは?)
(言いたくない)
(なぜだ)
(とにかく言いたくない)
(そんなこと言わずに。いまからそちらへ向かう)
(それは勝手だが教えないぜ)
カルムは魔方陣を現出させる。場所は郊外の宿場町の飲み屋だ。
魔方陣の上に立つとスッと消えた。
リュドミュラ率いるドーネリア軍が足止めを食らっている。ボートランドへの街道が大きな岩だらけだからだ。大砲台が前に進めないのだ。
「うん、もう!これじゃあリーガル様にいいところ見せられないじゃないのさ」
リュドミュラは杖を出し、それを丸く振ると大岩が消える。こうして一歩一歩前に進むしかない。自分がなぜ大将に選ばれたのか。これで分かった気がする。
リーガルの方はすでに総本部に引き返し、眠りにつきここまでの疲れをとっている。
ニムズがオーキメントの王になることを真剣に考えている。
(王になれば金も女も思いのままだ。しかし常に命を狙ってくる輩があとをたちまい。とびきりの快楽を得て不安に怯える日々か、快楽も名誉もなく、しかし不安もないさえない毎日を送る人生か)
リーガルが起き、水を飲んでいる。
「リーガル様、この前のお話ですが」
「オーキメントを治めることか」
「はい。覚悟を決めました。見事治めてみせましょう」
「よし、分かった。オーキメントはお前に託す。ではこの戦争が終わるまでしばし待て」
「は!あとはボートランドだけですな」
「そうだな。リュドミュラのやつがあの悪路で四苦八苦しているのが目に浮かぶようだ。ふふ」
「魔導師しか切り開けないほどの街道とか」
「まあ、やり方はいろいろある。じっくり行くしかあるまい。そして最後の関門、ドリーナ峠が待っている」
リーガルが立ち上がると斥候から一通の文が。
「なに!やられた。ガレリアが壊滅したそうだ。」
「え!?」
ニムズに文を渡す。
「どうしますか。リーガル様」
「とりあえずガレリアに行くしかあるまい」
リーガルが魔方陣を現出させる。
そして二人は消えていった。
「母ちゃん!ミール!」
ボートランド州の州都クレイルの郊外に、難民キャンプが出来ていた。その中をサキヤが二人を探して回っている。
一時間もたった頃、「サキヤ!」と呼ぶ母の声。
「母ちゃん!ミール!」
三人は抱きしめあう。
「アルデオ島には行かなかったのかい」
「人に聞いた話だとアルデオは滅んだ町だからもう船が出てないんだと。仕方ないね。食料が届かないんじゃ生活できないよ」
サキヤがうなずく。
「そうだね、アルデオ島のことはもう忘れなきゃ。ここはどうなの。不自由してないの?」
「そうだね、食料は配給してくれるんだけど、毛布一枚だとやっぱり寒いんだよ」
母とミールが顔を合わせてうなずく。
「俺の毛布をやるよ。母ちゃん。まあとにかく無事でよかった。じゃあ俺はドリーナ峠に行かなくちゃならない。ミール、母ちゃんをたのむぞ」
「うん、分かった!」
サキヤはミールと熱いキスをし、三人でしっかりと抱き合い、金の盾を持つとその場を去った。
「おーい、サキヤ!」
ジャンが呼んでいる。
「なんだい、家族はいたかい」
「ああ、無事だった。それより紹介しよう。州兵のビリー・クロッツェル大佐だ」
「サキヤ・クロードです。よろしくお願いいたします」
「私がビリー・クロッツェルだ。州兵に志願したそうだね。大歓迎だよ。サキヤ・クロード、と」
ビリーは名簿に書きとめている。
「階級はそのまま少尉でかまわないね」
「は!」
「では早速ドリーナ峠で指揮を執ってくれたまえ」
「は!必ずや敵軍を阻止してまいります!」
「頑張れよ」
「はい!」
サキヤは馬にのり駆け出した。
「兄者」
軍服にマント姿のカルムがボレロの後ろに立つ。
「来たか、まあ一杯飲め」
「貰おう。ただしウイスキーじゃなく、ビールを」
ボレロの横に座るとビールが出された。ぐいっと一口飲むカルム。
「婆さんには可哀想なことをさせた」
「まったくだ。リーガルの強さを侮っていた。で、今はその報復攻撃をしていると」
「婆さんへのたむけよ」
ボレロはウイスキーをあおる。
「さて本題といこう。魔力を上げる方法を知っているんだろう?なぜ教えるのを拒む」
「それはな、二人一組じゃないと出来ない儀式をやらないといけないからだ。それができるのは俺だけ。まっびまらごめんというわけさ」
酒が入り、口が軽くなっているとみたカルムはたたみかける。
「方法とはどんな?」
「悪魔を乗り移らせるんだよ、お前の体にな」
「あ、悪魔?」
「リーガルにも悪魔が乗り移っている。だからあんなに強いんだよ」
カルムは狼狽している。しかしあえて聞く。
「で、その儀式とは?」
「俺がインウォカーティオという長い呪文を唱える。すると七日七晩とてつもない苦しみがお前を襲う。あるものは狂い死に、あるものは耐えきれずに舌を噛み、みずから命を断つものも多いと聞く。悪魔っていうのは気まぐれでな、自分が乗り移りたいと思う者には全く苦痛など与えず、召喚される分には地獄の苦しみを欲する。いい加減なもんさ」
「……地獄の苦しみ」
そこでカルムは怯んでしまった。
「世の中簡単にはいかないってことさ」
ボレロが、カルムを横目で見ながら言った。
決戦!ドリーナ峠
街道を抜けるのに苦戦中のリュドミュラ。弓矢隊を指揮するガーラ少佐を呼び、言いつける。
「こっちはゆっくり行くからさ、お前たちが先に行きな」
「先に行ってどうしろと」
「頭悪いね!向こうはドリーナ峠に前線をおき待ち構えているはずさ。一人でもその兵をやっつけてくるんだよ!」
「し、しかし我が弓矢隊は先の塹壕戦であと千人ほどしか残っておらず、向こうはまだ二万の軍勢がいると予想されます。これはもう、無謀を通り越して狂気の沙汰かと」
激怒するリュドミュラ。
「私が狂ってるとでも言うのかい!」
「いえ、決してそのような」
「大将の言うことは絶対だよ。先に行きな」
「は!」
納得しないまま戻るガーラ少佐。自分の弓矢隊の軍曹たちを呼びつける。
「あの塹壕戦でも大量の犠牲者を出した。作戦が無茶苦茶だ」
「どうするおつもりで」
「リュドミュラを殺る」
「そ、それは少し飛躍しすぎかと」
「いや、我らが生き延びるのはこの手しかない。あの女が安心しきっているところを後ろから一斉に射殺すのだ!でないと二万の敵の中に飛び込むことになる。全滅は必至よ。リュドミュラを殺し、その後、敵に白旗をあげ亡命する」
「分かりました。部下に伝えておきます」
一同は解散した。
十分後、弓矢隊が進軍してきた。
ヒュン、ヒュン
リュドミュラの背後に数十発の矢が迫る!
しかし……
フォン、フォン
矢はリュドミュラには当たらず、あらぬ方向へ飛んでいく。
「私を殺そうとしたねー!ガーラ!」
リュドミュラが振り向き、弓矢隊の中に割って入りガーラ少佐を見つける。
「フレア!」
「ひー!」
黒焦げになりガーラは絶命した。
それを見ていた弓矢隊の大部分の兵士が散り散りになり逃げ出した。
「ふん。あてにならない連中だね!」
リュドミュラはまた前を向いた。
サキヤがバームと合流した。サキヤは敬礼をするとバームに聞く。
「戦況はどうなっておりますか?ドリアーナ中尉」
「まだ持久戦だな。クロード少尉。いやサキヤ、二日間寝てないんだよ。俺は寝る。ここの指揮はお前が執ってくれ」
バームがウインクをしてその場を離れる。
「は!」
前線の指揮を執るのは初めてのサキヤ。緊張で足が震えてくる。
しかし現場の指揮をするのが少尉の仕事。岩に座り込み、時を待つ。
「それ!」
岩が一つ消える。先頭の大砲台がゴロゴロと前に進む。これの繰り返し。
日が暮れる。リュドミュラが駐屯地に戻ってきた。
テーブルの前に座り、出された夕食を食べる。
(大将なんか引き受けなけりゃよかった)
後悔してももう遅い。
その日は早く寝た。
次の日斥候を出し、この先の街道の様子を調べさせる。
「あと一キロメートルで平坦な道になっております!」
「よし。もう一息だね。気張っていくよ!」
リュドミュラは不屈の闘志で悪路にあえいでいる大砲隊を励ます。
「もうちょっとだよ!」
「負けるんじゃないよ!」
丸一日かけてあと百メートルでドリーナ峠のところまできて日が暮れた。
(明日が決戦だね)
サキヤは昨日三時間しか寝ていない。そこへ救いの神が。
「サキヤ、昨日は寝てないだろう。指揮を替わろう」
ジャンが駆けつけてくれたのである。
サキヤはキャンプに行きベッドに倒れこんだ。
ジャンが他の少尉や中尉と協議をする。そして命令を出す。
「敵はたかだか一万、こちらは二万だ。押し込むぞ!」
「おー!」
総勢二万の軍勢がドリーナ峠を越えて敵陣営に突進する。不意をつかれたドーネリア側はパニックになり総崩れとなる。しかし!
ドーン!ドーン!
リュドミュラの命令で敵味方の区別なく、大砲を撃ち始めた。
吹き飛ぶ両軍の兵士たち。
「退けー、退けー!」
退却するオーキメント軍の兵士たち。ドリーナ峠でまた進軍を待つことに。
「くそ!見境ないな」
ジャンが吐き捨てるように言う。
眼前の大きな岩がフッと消えた。あらわになるドーネリアの大砲隊。オーキメント側が一斉に砲撃を開始する。
ドカーン!
先頭の砲台に命中し、大砲がぐにゃりと曲がる。
リュドミュラが二台目を前に出す。
「崖上の砲台を狙うんだよ!」
ドスーン!
このようなやりとりが夕暮れまで続き、ついにオーキメント側の砲台は全て破壊されてしまった。
「やったぁ!」
無邪気にはしゃぐリュドミュラ。
進撃してくるドーネリア軍。オーキメント側は弓矢で砲手を狙うも、日がくれてなかなか当たらず、ついにドリーナ峠を越えさせてしまった。
「サキヤ、起きろ!退却だ」
バスーン!
キャンプに一発撃ち込まれサキヤは飛び起きた。バームに戦況を聞く。
「やられたんだよ。ドリーナ峠を突破された。もう逃げるしかない」
「そ、そんな!」
「急ぐぞ!」
敵の砲撃の中、サキヤとバームはほうほうの体で前線を後にした。
リーガルは廃墟と化したガレリアの街を見ている。
「災いとは跳ね返ってくるもんだな」
「どうなされました。リーガル様らしくもない」
とニムズ。
「なに、たわごとよ」
「街はどうするおつもりで」
「セルサ!」
すると横の建物が時間を巻き戻すように元に戻る。
「時を戻す魔法よ」
「これを一軒づつやっていくおつもりで?」
「ばかを言うな。一年かかるわ。復興は民が勝手にやるだろう。俺が考えているのはな、誰がやったかということよ。この砲撃は明らかに魔導弾だ。となると、砲手は間違いなくメールド流の魔導師。考えられるのは、キリウムの弟子の報復の可能性が高いだろう。それを探る方法は」
「分かるのですか」
「あの城の裏の小山、少なくとも一発以上はあそこから撃たれている。行くぞ」
「は!」
「街がよく見えるわ。城はここからやられている」
「なるほど」
「セルサ、ウィディーレ!」
しばらくすると浮かび上がってきたボレロの姿。
「顔は覚えたぞ。ふん、風采の上がらないただの中年男ではないか」
「ふふふ、確かに」
リーガルはギロリとボレロの幻影を見ながら思いを巡らせている。
「さて、どうするか」
難民や軍人が、ボートランド州の州都クレイルに続々と入り込む。リュドミュラはそこまで追わずに、途中にあるボートランド城を砲台で囲む。
あわてて出てきたのは城主ネイル長官である。
「これはこれは、ようこそ。して、何のご用で」
「見たらわかるだろ。城を開けな」
「はいー!」
ネイルとその部下は、クレイルに向かって一目散に逃げ出した。
リュドミュラと将校たちがボートランド城に入城する。城主の椅子に座り、「ふう」と一息つくリュドミュラ。こうしてドーネリアによるオーキメントの制圧は成し遂げられた。
大戦編、了
金の盾と青い牢獄 第2巻 β版 村岡真介 @gacelous
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。金の盾と青い牢獄 第2巻 β版の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます