第14話 業火

 物置からの煙は急速に増え、会場内に混乱が広がっていった。朝倉や他のプレイヤーたちも煙に驚き、一斉に物置に駆け寄ってきた。西田は状況を把握しようとしたが、煙が目に染みる。男も驚きながらも、煙の中から西田に向かって言った。


「ここはどうなっている!?」


 西田も焦りながら、冷静さを保とうとした。「緊急事態だ。みんな、物置から出ろ!」


 プレイヤーたちは駆け出していく中、西田は男にも物置から離れるよう促した。しかし、男は動こうとしなかった。


「俺はここから動かない。この煙が何なのか、説明しろ」


 西田は男を説得しようとするが、その時、物置から爆発音が轟き、炎が噴き出した。物置の扉が吹き飛び、炎が外に広がり始めた。


「危険だ!早く逃げろ!」西田が叫びながら男に手を差し伸べるが、男はなおも動かなかった。


 その瞬間、男は煙の中から取り出した小さな箱を西田に投げつけた。西田は箱を受け取り、中身を確認すると、そこには一枚の紙と鍵が入っていた。


 男は冷静に話し始めた。「この箱を渡してくれ。それと引き換えに俺はここから出る」


 西田は状況を理解し、男の要求を受け入れることにした。しかし、その紙には何も書かれておらず、不穏な雰囲気が漂っていた。


 西田は、煙と炎がますます広がる中、男から受け取った箱をしっかりと握りしめた。男は冷静な態度で西田に言った。


「それを持って、東の出口へ行け。そこで鍵を使えば、何があっても逃げられる」


 西田は男の指示に従い、煙の中を必死で進んでいく。火災報知器の音が轟き、消防車や救急車が急速に駆けつけてきた。会場内は騒然としており、プレイヤーたちは一斉に避難を始めていた。


 東の出口に到着した西田は、箱から取り出した金色の鍵を使って扉を開けた。外に出ると、消防隊員が水をかけながら火災を鎮火しようとしていた。西田は一度振り返り、物置からの炎と煙を見たが、男の姿は見えなかった。


 鍵を握りしめ、西田は会場から遠ざかる。朝倉も、煙が薄れる中、外に出てきた。彼は西田に近づき、驚きと疑問の表情を浮かべた。


「何が起きたんだ?あの男は?」


 西田は深く息を吐き出し、朝倉に向かって語り始めた。事件の全容を伝える中で、箱から出てきた紙を見て、その内容に疑問を抱いた。果たして、その紙には何が書かれていたのか。そして、朝倉と西田はこの事件の真相を解き明かすためにどう行動するのか。


 西田と朝倉は会場外に出て、騒がしい消防車や救急車の中を抜けて遠くに移動した。その間、西田は朝倉に事件の詳細を説明し始めた。


「まず、あの男が僕に渡したのは金色の鍵だ。それで東の出口から外に出ると、焼失したはずの卍館がそこにあったんだ」


 朝倉は驚いたような表情を浮かべたが、すぐに冷静さを取り戻して質問した。


「それはどういうことだ?あの建物は完全に炎に包まれていたはずだ」


 西田は考え込むような表情を浮かべながら続けた。


「確かにそうだ。でも、その男が渡した鍵で扉を開けると、中は火災の痕跡もなく、元の状態で残っていたんだ。そして、その紙には…」


 西田はポケットから取り出した紙を朝倉に見せた。紙には何やら謎めいた文字が書かれていた。


「これは何だろう。俺には読めないな」


 朝倉が言うと、西田も納得したように頷いた。その時、朝倉の携帯電話が鳴り始めた。朝倉が取り出し、画面を見ると、北野署署長からの着信だった。


「なんだろう、こんなタイミングで」


 朝倉は電話に出て、署長の声が聞こえた。少し間をおいてから、朝倉は西田に向かって言った。


「署長からの指示だ。俺は卍館の調査に従事することになった。早めに現場に向かおう」


 西田も同意し、二人は急いで車に乗り込んで現場へ向かった。焼け落ちたはずの卍館が復活し、謎が深まる中、彼らは真相に迫るために行動を開始した。

 

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