公開処刑

イエスがローマの総督ピラトの前に引き出されたのは、それから間もなくのことだった。ピラトはイエスに罪を見出すことができなかったが、民衆の求めを無視することもできなかった。


「バラバとイエス、どちらを釈放すべきだろうか?」


ピラトが民衆に問いかけると、彼らは叫んだ。


「バラバを!イエスは死ぬべきだ!」


ピラトはイエスに罪がないことを知っていたが、民衆の求めを拒むことはできなかった。かれはイエスに十字架を運ばせ、公開処刑を命じた。


ゴルゴタの丘へと続く道は、苦しみと痛みに満ちていた。イエスが倒れるたびに、ローマ兵が鞭を打ち、イエスを促した。


「はやく歩け。おまえの身代わりになってくれる者はいないぞ。」


イエスが汗と涙に濡れた顔を上げると、丘の頂上に三つの十字架が立っていた。その光景を見たイエスが息をのんだその時、遠くから悲しげな女性の泣声が聞こえた。


「イエス!」


泣き叫ぶ女性は、マグダラのマリアだった。イエスが彼女に気づき、優しく微笑むと、マリアは駆け寄り、イエスの足元に倒れこんだ。


「主よ、どうしてこのようなことに...」


マリアは嗚咽しながら、イエスの足にすがりついた。イエスがマリアの頭を優しく撫でると、彼女は静かに泣きやんだ。


「あなたの信仰があなたを救った。安心しなさい。」


イエスがそう言うと、ローマ兵がイエスを十字架に磔にするべく、かれの腕を引っ張った。


「待ってください!」


悲痛な叫び声が響いた。それは、イエスの母マリアだった。彼女はヨハネに支えられながら、息子の処刑を見守っていた。


「母よ。」


イエスが弱々しく声をかけると、マリアは涙を拭い、毅然とした表情で息子を見つめた。


「あなたの父がどんな方か、私は知っています。あなたもご存知のはず。どうか、神を信じてください。」


母の言葉に、イエスは静かに頷いた。


「すべて、御心のままに。」


イエスが十字架に磔にされ、息絶えるまでには、長い時間がかかった。かれは苦しみの中、人類の罪を背負い、愛と赦しを説き続けた。


「父よ、彼らをお赦しください。彼らは自分が何をしているのかわからないのです。」


イエスが息を引き取った時、空が暗くなり、大地が揺れた。人々は恐れおののき、その場に倒れこんだ。

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