第16話 ヒロインのヒミツ?

 転生徒たちを説教から解放してやった後、ふうぞうは静かになった学園長室の窓辺から外を眺めていた。

 特にこれという風景が見られるわけでもない。

 なんとなくそうしただけだ。


 まったく学園長も楽じゃないわい、とモッサリ生やしたあごひげをしごきながら彼は思う。

 小事から大事まで、何かというと自分にばかり仕事が回ってくる。

 さっきの説教なんぞ、そのごく一部に過ぎん。 

 しょっちゅう不在にするかいひで理事長に、の1つもぶつけてやりたいものだ。


 ……やれやれ。

 転生徒会なんていう厄介ごとの面倒を見るのは、なるべくゴメンこうむりたいもんだがな。

 それにあの5人のうち1人は、正確には転生徒とも呼べんだろう。


 かいユーシヤ。

 あの娘はほかの転生徒とは違う。

 何しろ半分は、本物の血を継いでいるんだからな。

 ワシらと同じ、異世界人の血を。

 しかもどうやら父親に輪をかけて、ゆうかんぼうときたもんだ。いや、ある意味じゃ母親も似たようなもんだったか。


 ……はあ、どっちにしろ大いに世話が焼けそうだ。

 はたしかに受け継がれている、ってわけかい。


 ひとりごとともボヤきともつかぬ調子で、ふうぞうはどこぞで油を売っている学園理事長――かいひでに語りかけてみる。


「なあ理事長、いや、元勇者ヒデオよ。こりゃ単なるワシのかんだがな、あの娘はひょっとすると、お前さんを超える《聖剣》使いに――《真の勇者》になるかもしれんぞ。いいかげん穏やかに暮らしたいワシとしては、考えたくもないことだわい」

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