世界を救う中二病

月夜アカツキ

第1話

 なんてことない入学式が終わり、わたしは高校生になった。

 かなりレベルの高い高校なだけあって、周りを見ればいかにも勉強できますと言った感じの人ばかり。

 ちなみにわたしと同じ中学校の人は誰もいない。

 まぁ、その、わたしの通ってた中学校はそんなに頭のいいところじゃなかったから。

 高校と違い近くに住む人が無条件で集まる公立の中学校なのにどうして差が生まれるんだろう。

 でもそのおかげでわたしのことを知る人は誰もいない。

 よーし!高校からは普通の輝かしい青春を送るぞ!

 バーン!!

 なっ!なんの音⁉︎

 どうやら教室の扉が勢いよく開いたみたい。

 入っていきたのはサイドテールをした女の子。だけど、それよりも目を引くのが明らかに改造した形跡が見られる制服にマフラーといった感じの服装、さらに怪我でもしたのか片目には眼帯。

 たしかにこの学校は制服に手を加えることには特に禁止事項はない。

 だからやっちゃいけない服装ってわけじゃないんだけど。

 でも、その服装を見ていると胸がちょっと苦しくなる。

「神崎さん!遅刻ですよ!」

 神崎と呼ばれた彼女は叱られているにもかかわらず平然としている。

「諸君!私こそが獄炎の支配者にして、聖と魔を操るもの!神崎燈火である!我が威光の前にふるえるがいい!」

 教室に変な沈黙が流れる。

「おや?私のすごさに声も出ないか」

 いや、そうじゃないでしょ。

 そう突っ込みたい気持ちをグッと堪える。

 ここでツッコんだら悪目立ちしちゃう。

「神崎さん。それよりどうして遅刻したんですか?」

「漆黒の闇騎士団が侵略を始めていたからちょっとばかし遊んでやっていた」

 しっこくの、やみきしだん?

 なんなんだろうその変な名前のは?

 先生は「はぁ」と大きなため息をした。

「もういいです。神崎さんの席はそこなので座ってください」

 先生がんばれ!とそっとエールを送る。

 って、神崎さんの席ってわたしの隣じゃん!

 とほほ、わたしの今年の運勢大吉だったんだけどな。

 ま、まあ隣だからってそんなにかかわるとは限らな

「これから私たちは運命共同体となるようね。よろしく。ところであなたの名前は」

 早速絡まれました。というかなに⁉運命共同体って⁉

「ゆ、結城沙羅です」

「結城沙羅、結城沙羅・・・」

 なんか繰り返しているけど聞かなかったことにしよう。

 そのあとは高校生活のいろいろな説明があった、まではよかった。問題はそのあとだ。

「じゃあせっかくですし隣の人と交流しましょう!」

 え⁉︎

 ど、どうしよう。

「なんでも聞いて構わないわよ!」

「じゃ、じゃあどうして眼帯をしているの?」

 流石に気になったので聞いてみた。

「これはわたしの魔眼の強すぎる力を封じるためにしているのよ」

 は、はぁ。

 ま、まぁひとまず分かったのはあれは怪我しているからつけているわけではないということ。

 けがじゃなくてよかったって思うべきなのかな。

 でもじゃあつける必要ないんじゃ。

 いや、それは不躾な意見だろうな。

「次は私が聞くわね」

 ゴクリ

 何を聞いてくるんだろう。

「あなた、勇者の生まれ変わりね」

 ・・・へ?

 勇者の生まれ変わり?いったい何を言っているんだ?

「だってあなたゆうきしゃらよね。じゃあ勇者じゃない」

「いやわたしの名前はゆうきさらだよ!」

「細かいことはどうでもいいの!私は勇者の生まれ変わりかどうかを聞いているの!」

 もう無茶苦茶だ。

「あいにくわたしは勇者の生まれかわりじゃないよ」

「本当に?それか現時点で勇者とか?」

「本当に。それに今も勇者じゃないよ」

「うーん。でも私の魔力はあなたが勇者だといっているのよね」

 私の魔力ってなに?

 だけどそのまま神崎さんはうーんと考えていたら質問の時間は終わりになった。

 はぁ、今日はなんとか終わったけど明日からどうなっちゃうんだろう。

 神崎さんにばれないようにこっそりと教室を出ていく。

 よし。このままさっと帰ろう。

「結城沙羅!ちょっとも待って!」

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