『ざまぁ』された元勇者、仲間の大切さを知る

くりから

元勇者、『ざまぁ』される

第1話 過去の失敗



「ヒイッ!」



 あいつの剣が俺へと迫る。

 俺は咄嗟に後ろに倒れ込んだことで剣を避けることはできたものの遂に逃げ場を失った。


(どうしてこうなった。こんな筈じゃなかったのに!)





 俺は元々小さな村の生まれだった。

 大人と子供を合わせても50人にも満たないような村で、俺と同世代のやつも1人しかいなかった。

 そんな村に生まれた俺は変わることのない日々に嫌気を感じながら、生まれてからずっと父親の畑作業の手伝いをして生きていた。


 しかし、10歳になり鑑定の儀を受けてから俺の人生は一変した。



「な、なんと、この者には勇者の素質があります」



 鑑定士がそう言うとあたりにどよめきが起こった。


 勇者というのは魔王を倒すため存在だ。

 魔王というのは一種の自然現象のようなもので、一定期間ごとに世に現れては自らの分身となる魔族を生み出し、人類に多大なる被害を与える。

 近年は新しく魔王が誕生したという予言もあり、そんな魔王と魔族達に対抗するために人類は勇者のクラスを持つ者を探し求めていたのである。


(やった。これであんなつまらない日々から抜け出せる)


 日々を退屈して過ごしていた俺にとってこれほど嬉しいことはなかった。

 物語に出てくるような勇者に自分がなることが出来たのだ。

 当然、他の勇者と同じように波瀾万丈の人生が待ち受けており、のちに名を残す人物になることを疑っていなかった。


 鑑定の儀が終わるとすぐに俺は誰かもわからないような大人たちに言われるがまま、馬車に乗り込み、そのまま王都に向かった。

 そこには同じ村出身のやつもいたが、俺がそいつを気に留めることはなかった。

 何か特別なスキルを持っているらしいが俺にはよくわからなかったし、そんなことよりも自分が勇者であることが嬉しくて、この先の未来を想像するだけで精一杯だった。




 王城に着くとすぐに謁見の間に連れて来られた。



「面を上げよ」



 そう言われ俺たちは先ほど執事の人から教えられた通りに顔を上げると、そこには豪華な玉座に腰を掛けるいかにも偉そうな王様がいた。


(俺も魔王をぶっ倒して、お姫様と結婚したら王様になるのか)


 そんなことを考えながら無駄に長ったらしい話が終わるのを待っていると、遂にその時が訪れた。



「我は汝をこの国の勇者と認め、この聖剣を授ける。我が期待に応えてみせよ」


「まかせろ。魔王なんか俺がぶっ倒してやんよ」



 何を言うか執事の人に教えられた気がしたが、忘れてしまったのでそのまま思ったことをそのまま口にした。

 周りからはざわめきが聞こえるが、それすらも心地よく思えるほどその時の俺は興奮していた。


 そして聖剣を受け取った瞬間、俺は全身に力が湧き上がってくるのを感じた。


 聖剣とは勇者のための剣。

 その剣は決して折れず、決して輝きを失うことはない。

 勇者の力を一段階上へと引き上げ、今まで多くの魔王を屠ってきた最強の剣。


(これで俺は無敵だ。もう誰も俺には敵わない!)


 聖剣を受け取ったことで俺の出番は終わり、今度は同じ村出身のやつの番となった。


 相変わらず王様の話の長ったらしい話は聞く気にならず、王様になった後のことなどを考えて待っていると、ようやく王様が締めの言葉に入った。



「汝は勇者の従者として、いついかなる時でも勇者を支えてみせよ」


「かしこまりました。このアレク、いついかなる時でも勇者様を支えてみせましょう」



(チッ、あいつもついて来るのかよ)


 俺は俺以外のパーティ全員を女で埋めてやろうと考えていたにもかかわらず、男であるあいつがついて来るのは嬉しいことではなかった。




 そして、王都に連れて来られてから7年経ったある日、魔王の存在が確認されたということで、俺たちはついに魔王討伐の旅へと出かけることになった。


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こんにちは、くりからです

今回から新しく異世界系にも手を出してみました。


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