マスク3枚重ねのおじいちゃんはたぶん魔法使い

マスク3枚重ね

マスク3枚重ねのおじいちゃんのお話

この話はある方の作品を読んで書こうと思いました。私の実話です。


私の死んでしまったおじいちゃんは今思えば只者ではなかったのだと思います。


私が小さい頃、おじいちゃんは近所で焼き鳥屋さんを経営していました。私は毎週の様に焼き鳥を食べに行っていました。そこで出す秘伝のタレはどんな焼き鳥屋さんのタレより美味かったのを覚えています。


「おじいちゃん!あの大きいの何?」


私がおじいちゃんの焼き鳥屋さんで指を指した方には大きな黒い玉が天井にかかっていました。おじいちゃんは煙をモクモクと立てながら焼き鳥の串をひっくり返し答えました。


「それは雀蜂の巣だよ」


「蜂の巣!?危なくないの!?」


私が驚いておじいちゃんに質問すると何とも無しに答えます。


「危なくない。前に中の蜂は殺した」


「じいちゃんすげえ!」


小さいながらもじいちゃんが凄いと本気で思っていました。その他にも大きな天狗の仮面、鳥の剥製など色々な物が置かれていたのを記憶しております。そしてお店はいつも夜遅くまで混んでいました。そこで働くじいちゃんは凄くかっこよかったです。


休みになると山へ山菜採りに行きました。そこの山は持ち主が友達でフキノトウやゼンマイを取る事が出来ました。私も夢中で取っていましたが、じいちゃんの取る量はいつも尋常ではありませんでした。私とばあちゃんに残っているように言った後、じいちゃんは10分くらい姿を消していました。戻ってきたじいちゃんの籠の中には食べきれない程の山菜が入っていました。今思えばあれ程の量をたった10分そこらで取れるのかと少々疑問です。それだけではありません。飛んでいるオニヤンマをよく素手で捕まえていました。とんでもない動体視力でした。ちなみに取った山菜の半分は山の持ち主にあげていました。


じいちゃんは絵がとても上手かったです。昔、看板を作る仕事をしていたらしく、下書き無しに見たもの全てをコピーしていました。当時の私はドラえもんが大好きで描いてもらいました。とても上手なドラえもんの全体絵で色鉛筆で色を染め今にも動き出しそうな絵でした。しかし、その絵の下に書かれた名前は何故かドライもんになっていました。ちょっぴり天然な所もあったのです。


じいちゃんの家にはたくさんの鳥籠が天井からぶら下がっており、その中の1つ1つに綺麗な鳥を飼っていました。それらは色鮮やかで宝石の様な小さな青い鳥や緑の鳥がピーピーと美しく鳴いていました。その鳥を眺めながらじいちゃんの作る焼きうどんを食べるのが私にとっての最高の至福だったのです。それと鳥だけではなく柴犬も飼っていました。名前は『リュウ』です。私が産まれた年に産まれた犬で兄弟のように育ちました。私とおじいちゃんで散歩に出かけるとまだ非力だった私は直ぐにリードごと逃げられてしまい、リュウは数メートル先で止まって振り返り、私を嘲笑うかのような笑みを浮かべていたのをとても良く覚えています。怒って追いかけるとそれに合わせて逃げるリュウ、疲れて立ち止まるとまた数メートル先で振り返り嘲笑う。小憎たらしい奴でした。しかし、じいちゃんが呼び掛けると飛んでやって来るのです。やっぱりじいちゃんは凄いなと感じました。これは確かな事なんですけど、私が19歳になるまでリュウは生きていたので、同い年のリュウも19歳まで生きていた事になります。とんでもない長寿でした。ちなみにリュウも焼きうどんが大好きで私と一緒に食べていました。


じいちゃんは庭にビニールハウスを持っていて、そこでは野菜やお花が植えられていました。お花には毒があると言っていて中に入る事は許されませんでした。私はどうしても中が気になり、少しだけ覗くと紫色の花が咲いていたのを覚えています。あの花は一体何という名の花だったのか、今はもう誰もわかりません。


長くなりましたが1番のじいちゃんの不思議な話なのですが、家には年中コタツが置いてありそこの上に置かれた大きなグラス、中にはガリガリ君の当たり棒が何十本と刺さっていたのです。これは子供ながらに不思議でした。冷蔵庫の中には大量のガリガリ君のソーダ味が入っており、どれを食べても当たりしか出ませんでした。一緒に出かける時は必ず1本、当たり棒を持って出かけて帰りにコンビニで交換して外で食べました。するとやはり必ず当たりが出ていました。これは今考えてもとても不思議です。じいちゃんは一体何者だったのか…私は思います。

きっとじいちゃんは魔法使いだったのだと。

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