知らない世界で旅をする!

宮乃なの

第1話 知らない世界

 私水乃唯花は今に至るまで平凡な学校生活を謳歌していた。教室で一人席に座って読書や勉強をする日々。そんな生活がこれからも続くと思っていた。しかし、人生の転機は突如として訪れるもので長くは続かなかった。


 銀色な空と紅葉が綺麗な秋のとある日、私を含めた一年生は体育館で集会を行っていた。何の変哲もないいつも通りの眠くなる集会。あいも変わらず学級委員が整列をさせ私たちを座らせる。いつも通りに学級委員が何かを話して、その後に無駄に長い先生たちの話を聞かせられる。そう思っていた。だが、今日は違った。いつもみたいに眠気が襲ってきたので欠伸をすると次の瞬間私は見知らぬ場所にいた。驚き周りを見てみると私だけでなく一年生全員がこの場所にいた。急なこともあり皆が揃って困惑や不安の感情を剥き出しにしている。


 私はそんな皆の反応を気にも留めず一人でその場を探索し始める。あまり長くこの場所にいたっていいことはない気がしてしょうがないからだ。俗に言う嫌な予感というものだろう。


 「何かないかな...?」



 何かしら物があるかもしれない、そう心に思いながら探すも特にそれといった物は見つからなかった。あった物は私が今手に持っている紙、ただそれだけだった。


 その紙には見るからに日本語や英語等とは違う言語で書かれていた。日本語に似た文字が複数個あるのでなぜだか安心できる。



「どこの国の言語なんだろう?」



 私は紙に書かれている言語を何とか解読しようと試みるが発音もわからなければ単語の意味、そして文法などが全くもってわからないため解読は出来なかった。そんなことをしていると気づけば先程まで聞こえていたざわめき声がなくなっており、シーンっと静まりかえる。

 私は後ろにいクラスの人たちの方を振り返り見てみると、誰一人としておらず私ただ一人だけがこの空間に取り残された。




 「え....?さっきまでいたのに....なんで...?」




 少し前まではいたはずの人たちがいない。急激な出来事が重なり私は少しばかり状況を処理するのが遅くなり何がなんだかわからなくなってしまう。何が起こっているのか、何をしたらいいのか、全てが空白のページのように脳から消えてしまう。だけども、これだけはわかる。



 「クラスの人たち何て気にする意味なんてない」


 そんな言葉が自然と口から零れ落ちる。クラスの人たちとは関わったことなんてないし、関わってきた人なんていない。大抵の人は寂しいという感情を抱くかもしれないが私は違う。あのような人の陰口を当たり前のように呟いている人たちとは到底仲良くなれる気がしないからだ。優越感を得るためだけに人のことをいじめ、その人の人生を壊す。それがとても許せない。

 だからこそ私はクラスメイト、そして他クラスの人たちなんてどうでもいいと思う。


 私は気持ちを切り替え真っ白になっていた頭の中のページに字を書く。クラスメイトよりも大事なことはここから出ることそれだけだ。そう決心するがどうやってここから脱出しようか検討もつかない。部屋を見渡してもあるのは鍵のしまった扉に机、そして窓だけだ。


 


 「扉は開かないし、机の上にはバッグだけで特になにもない。残されたのは窓だけ。窓だ

 けが唯一の出口」




 「迷ってる時間はないよね。行かなきゃ......その前にこれも持ってかないと」




 私は少しばかり考えるが本能が時間がないと訴えているため覚悟を決める。私は飛び降りる前に先程までの手紙を折って机の上にあった誰のかわからないバッグに入れ、手に取り勢いよく窓から飛び出た。




        




 窓から飛び降りたが受け身をとるのをミスしてしまい身体中が少しばかり痛い。骨折はしていないとは思う。骨折していたらそれはそれで困るがそんなことは多分なかったので安心する。

 私はゆっくり歩きながら建物から離れる。念のため振り返ってみると先程まで私がいたはずの建物は跡型もなく消えていた。私は己の目を疑ってしまう、それほどまでに不自然に空間があるからだ。周りには木以外何もなく殺伐としている光景、景色。それが余計に恐怖心を加速させてしまうがやることがまだ私にはある。


 私はこの殺伐していて未知に満ちた場所を背に速歩きでこの場からさっそうと去った。



 しばらくして、私は規模の小さい村のような場所に辿り着く。この村から全くもって人がいる気配がしない。よく建物を見てみると窓ガラスは割れ、一部建物は倒壊している。到底人が住んでいる環境とは思えない。



 「とりあえず進みながら人がいるか探してみよ」




 人がいるとは思えないが一応探してみることにした。人がいたとしてもあまり関わりたくない。進むたび憂鬱になる私の感情とボロボロが露呈していく建物が哀愁漂っていた。だけど哀愁が漂っているだけで特に何もなかった。そのため、私はこの村のような場所から出ていこうと道を探し始める。


 そんな時だった。



 「た、助けてっ...!」




 少女の助けを求める声が微かに聞こえてくる。その声は掠れていて弱々しく危機的状況にいるということがすぐにわかった。人を見捨てるほど心は終わっていない。私は少女の声が聞こえてきた方向に向かって走り始めた。




      



 聞こえてきたところに着くとそこには大柄な男の人が声の主である少女の前に立ち殴りかかろうとしていた。



 「ガキが喚いてるんじゃねぇよ......歯食いしばれ」


 

 「お邪魔します...」


 颯爽と私は大柄な男に自慢の貧弱な拳で殴りかかる。拳はそのまま男の脇腹へと直撃し何故か男はそのまま吹き飛んでしまう。吹き飛ぶ男を見て私と少女は揃って困惑してしまう。吹き飛ばされた男自身も何故吹き飛んだのか理解できておらず倒れている。


 私は逃げる絶好のチャンスと判断し、少女の手を掴みそのまま逃げるように走っていく。




 「大丈夫?怪我とかない?」




 「は、はい...大丈夫です」




 「ならこのまま逃げよっか」





  私は少女と一緒にこの場から離れた。




    




 走ること数分、私と少女はあの村のような場所から出て道のような場所に辿り着いた。離れたはいいが後のことを全くもって考えていなかったので少し悩むが、とりあえず少女の名前を知らないので聞いてみる。



 「えぇっと、な、名前は?」



 「幸夜 翠です...」

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