魔界ゴミ焼却場で魔物を【焼却】し続けた地味おっさん、人間界に追放されて出来損ない聖女の従者となり魔物討伐の旅に出る。なぜか王国指定のS級魔物が毎日燃やしていたやつらなんだが? これ本当に激ヤバ魔物か?
第56話 おっさん、国王と会う(そして美少女たちの猛攻は続く)
第56話 おっさん、国王と会う(そして美少女たちの猛攻は続く)
「うむ、でかいな」
俺たちはラスガルト王国王都の王城に到着した。
前にも来たことはあるが、改めて立派な城だなと思う。
そう言えば魔王さまも魔王城を建て替えていると言ってたな。そろそろ完成している頃だろうか。
「さあさあ~~行きますよ! バートス!」
ファレーヌが俺の手を引っ張って、グイグイ先に進む。
馬車内での変なテンションまだ引きずってるのかよ……頼むから元に戻ってくれ。
するともう片方の俺の手を掴む銀髪の美少女。
「お、おい。リズまでなにしてるんだ」
「ファレーヌさま! バートスは私の従者です! だから手を繋ぐのは私です!」
ファレーヌに影響されてなのか、リズも変な感じになってしまった。
そもそもおっさんと手を繋いで楽しいのだろうか。
そんな2人に引っ張られながら、俺たちは謁見の間に通された。
なかなかに広い部屋である。
しばらく待っていると、国王が入ってきた。
髭を蓄えて、どっしりとした大柄の男。優しさと凄味が混在したような雰囲気を醸し出している。さすが国王といったところか。
「ラスガルト王国、国王のガイデル・ロイ・ラスガルトである」
そう言って、玉座にどっしりと腰を下ろす国王。
ひとしきり俺たちに視線を巡らせたのち、再び口をひらいた。
「ふむ、聖女リズロッテよ、よくぞ参った。わが愛娘から特級通信鳥にて状況は聞いておる。今回は本当に良くやってくれた。まずは礼を言う」
「はい、国王陛下。ありがとうございます」
「……ゴホン」
国王の咳払いが、静寂な広間に響いた。
「して聖女リズロッテ、そしてファレーヌよ」
「「はい、陛下」お父様」
「お主らは、なぜゆえにその男と手を繋いでおるのじゃ?」
国王の視線がギロリと俺に刺さる。
いや、それは俺が聞きたいのだが。
そりゃ国王もわけわからんだろうな。
「ほらぁ……だから言ったじゃないか。こんなんで広間に入ったらおかしいだろ」
謁見の間にいた貴族たちからも「なんだよこのおっさん」みたいな視線がガンガン向けられる。
おっさんと美少女2人が手を繋いでるとか、変な勘違いをされてしまう。
「ほら、2人とも冷静になってくれ」
俺が手を離すように促すと、2人とも渋々従ってくれた。
「王様、彼女たちは魔物討伐の際に大活躍したんだ。その反動でちょっと疲れが出ているようです。だから少し大目にみてやって欲しい。です」
馬車のあたりからファレーヌを筆頭にみんな行動が変だったからな。
謁見が終わったらゆっくり休んでもらわんと。
俺の言葉を聞いて、「フォフォ」と笑う国王。鋭かった視線は多少緩くなった。
まあ、一国の王だ。元よりこんなことでケチをつける気などないのだろう。
「ふむ……お主がバートスじゃな?」
「はい、王様。俺……じゃないわたしがバートスです」
というか良くおっさんの名前知ってたな。リズが報告してたんだろうか。
「ファレーヌの手紙にやたらとお主の名前が出てきてのう」
ええぇ。ファレーヌの手紙に俺の事が?
なんだろうセクハラ目線がキモイとか書かれてないだろうな。
してないからな、そんなこと。
「フォフォ、そう構えんでもよい。娘が珍しく男に興味をもっているようでな。ちょっとお主の顔を見たかっただけじゃ」
こんな地味おっさんに興味だと?
まあ王族だと周りは華やかな人ばかりだろうから、むしろノーマルおっさんとか珍しいのかも。
「さて、少し話がそれてしまったが、聖女リズロッテよ。討伐報告をせよ」
「―――はい、国王陛下」
リズが討伐内容を国王に話していく。
赤トカゲにはじまり、銀トカゲまで。
良く考えたらトカゲ多いな……。
「このような短期間にこれほどの討伐を成し遂げるとは……」
「し、しかし魔物討伐の証拠はあるのか?」
「例の聖女殿なのだろう?」
リズの報告が進むにつれて、ざわめきはじめる周囲の貴族たち。
討伐の証拠かぁ。なるほど、たしかに魔物の部位とかほとんど取ってない。
だって基本的に灰になってしまうから取れないんだよな。
リズの報告が完了してもザワツキは収まらなかった。
貴族の中には、未だにリズの事を出来損ない聖女と思い込んでいる者もいる様だ。
が、それを察していたのか。フムと頷いた王様が言葉を発する。
「フォフォフォ、たしかに魔物の角や牙はないがのう、例の物をここへ」
王様に指示されて、兵士たちが大きな箱を沢山運び入れる。
一斉に箱がひっくり返され、バサバサと大量の紙が床に溢れ落ちた。
「ええ、陛下。これって……」
「フォフォ、そうじゃリズロッテ、お主らへの感謝の手紙じゃよ」
ええ! マジかよ!
めちゃくちゃ大量に届いているぞ。
「リズロッテたちの居場所がわからんということで、王城に送りつけてきよったわい。まったく難儀な事よ。
これでわかったじゃろう? ―――つまり多くの民の言葉が証拠じゃ。
どうじゃ貴殿ら? これでも聖女リズロッテを疑うか?」
王の言葉を聞いて、その後何かをいう貴族は1人もいなくなった。
王様は玉座をたち、リズの方へと歩を進める。
「うむ、あらためて礼を言うぞ。聖女リズロッテとその従者一同。
そしてリズロッテよ、ここからは1人の父親としての言葉じゃ――――――許してくれ」
「あ、あの……国王陛下?」
いきなりの王様謝罪に驚きの表情を隠せないリズ。
「我が愚息がしでかした数々の愚行、そしてそれによりリズロッテの受けた誹謗中傷。
すべてわしの至らなさが招いたこと。いい訳の余地もないわい。なんとでも望みを申せ、出来る限りのことをする」
「陛下。そのお言葉だけで十分です。私の中にもうザーイ王子は一片たりともいません」
「じゃが―――」
「今がとても楽しいのです。ですから―――今を大事にしたいのです」
柔らかく微笑んだリズ。
その笑みは、国王のみならずこの場にいた全員に安らぎを与えるかのような微笑みだった。
「あいわかったわい。聖女リズロッテの望み通りに、わしはいらぬことはせぬ」
「あ、国王陛下。討伐の報奨金はきっちり頂きますよ。大事な従者たちへに給金を支払わないといけないので。それに今回は随分と高価なポーションを王国軍のために使いました。補充しておかないと」
「フォフォ。わかった、じゅぶんな報奨金を支払うわい。それと国内に聖女リズロッテ一行の功績を讃えるべくふれを出す。あと王都にてパレードを執り行うゆえ参加してくれるな?」
「はい。もちろんです」
それからしばらくの間、王様と会話を続けていたリズだが、こちらへ歩いてきた。
大方話は終わったのだろう。
「良かったなリズ」
俺は一言だけリズに声をかける。
「はい、これもバートスやみんなのおかげですよ」
銀髪を揺らして、花のような笑顔でリズは答えた。
リズのおかげでもあるんだがな。
まあそれはまたのちほどじっくりと褒めよう。
ふわ~~やっと終わりだ。
おっさん疲れたよ。
あまりこういう場は得意ではないからな。俺はどっちかというと現場の方が好きだ。
これでようやくベッドに行けると思ったのだが。おっさんの思惑通りに事は進まなかった。
今まで黙っていたファレーヌが、とんでもないことを口にしたからだ。
「お父様、これだけのことを成して報奨金だけとは王家の名折れです。バートスへの褒美として、わたくしなどいかがでしょう?」
「「「―――ええぇ!!」」」
俺とリズにカルラが同時にハモってしまった。
この子は何を言ってるんだ?
流石にヤバいぞ。
疲れすぎだよ。もう休んでこいって、マジで。
「ふぁ、ファレーヌさま。お戯れがすぎますよ」
リズが頬を膨らめながら俺とファレーヌの間に入ってきた。
「ファレーヌよ。それは誠の言葉か?」
何言ってんだ? 誠なわけないだろ。 どこの姫がおっさんの嫁になるというんだ? もうこれ過労だよ。魔界の職場でもこんな感じになってしまったやつを何人か見て来たしな。
「当然本気です。数々のS級魔物やさらにはSS級のミスリルドラゴンまで燃やし尽くす力。実績は申し分ございません。
そ、それに抱かれましたし……なのでバートス以外へのお嫁にはいけません!」
「ほう、バートスよ。すでに我が娘に手を出しておるのか」
いや、出してないし。
落下してきたのを受け止めただけだろ?
「だ、抱かれたのは、ファレーヌさまだけじゃありません! 私も抱かれました!」
まてまてリズ。
何を言いだすんだ?
「む、バートスよ。聖女にも手を出しておるのか」
いや違うし!
落ちてきたの受け止めたら、たまたまバインバインしただけだから!
頼むから誤解を生むような発言をしないでくれ。
「これでは埒があきませんね。こうなったらバートスに決めてもらいましょう。何が欲しいのか」
いや、ファレーヌ。お前が事をややこしくしてるんだぞ!
自覚をもってくれ!
「「ごくり……」」
2人ともごくりじゃないんだよ……
「ふむ、してバートスよ。お主が欲しいものはなんなのじゃ?」
俺が欲しいものだと……
そんなのひとつだけだな。決まっている。
「―――たこ焼き食いたい!」
「「「………」」」
おい……ここ一番の静まりをみせるなよ。
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