第22話 襲来1

あれから7日が過ぎた.

その7日は少し平穏な時間が流れていた.少し緊張感を持ちながら,アリエス達は,生活をしていたが,その平穏は終わった.


建物の外にアリエスが出るとエリが待っていた.

「来たわ,アリエス.周辺を取り囲んでるみたいね.」

エリは,ツインテールを触りながら,アリエスを見た.


「……まあ,そうですよね.あちらが,7日で,兵力を集めてきましたか.」


「そうね,魔力の反応的に……相手は二手に別れてるみたいですね.結界を張ってるけど,破られるのは時間の問題ね.」

エリは,そう言うと魔法で杖を出した.


「罠ですね.恐らく目的は,僕らの分断ですか.」


戦いにおいてはしっかりと知能が働くアリエスがそう言うとエリもそれに同意するように頷いた.

「……でも,二手に別れないと,普通に攻め込まれて終わりよね.」


「どうしますか?僕は罠に乗るに一票で,エリの強さは知ってますから.」


「罠に乗りましょうか.アリエス,君に幸」

エリは,ニヤッとしながら,そう言って首を小さく横に振りツインテールを揺らした.


「エリが,神様の言葉を使うなんて珍しい,神様はお金も名誉もくれないって言ってませんでしたっけ?」


「……私は,神様じゃなくて自分と,それと……アリエスを信じてるの.とりあえず,私は正面を,アリエスは裏を任せるわ.」


「了解.期待には応えないとですね.では,行きましょうか.」


アリエスは,建物の裏側に走り始めた.



しばらくして,結界が敗れた.それから更に数秒後

魔王軍残党のアウトが率いる集団とアリエスが邂逅した.

アリエスは一人だったが,アウト達は,少なくとも,数十人はいた.

「早かったな,流石勇者.」


(……正面から?普通なら少し戦力を分けて,不意打ちでもしてきそうだが.何が狙いなんですかね.でも,ここら辺にはサウスがいないってことは,エリの方ですか.少し心配ですね.)

アリエスは,思考を回しつつ,深呼吸をした.

「サウスで無かったですか.とりあえず,帰って貰います.」

アリエスはそう言うと拳を構えた.


「勇者,多対一で戦うこと悪く思うなよ.行くぞ.」

そう,アウトが叫ぶと,空間が歪んだ


「……」

(空間魔法.なるほど,時間稼ぎか,全員で時間を稼ごうって感じか.無理やり)

アリエスは,魔力を開放した.

アリエスが魔力を開放すると大気が揺れた.その迫力に一部の魔族は,たじろいでいた.それから,拳を強く握りしめると空間を殴った.


アリエスが殴った方向に凄まじい衝撃が飛び,木々が折れた.しかし,歪んだ空間は元に戻らなかった.

「……なるほど,厄介ですね.」

アリエスは,そう言うと深呼吸をした.


「さあ,しばらくこの場で遊んで頂こう.」

そのアリエスの様子を見てアウトはそう言って武器を構えた.


「厄介ですね.本当に.」


「「「「我ら魔王軍残党の力を見せてやる.」」」」


「ひとまず,全員倒せば良いんですかね?」

そんな声と共にアリエスと魔王軍残党の戦いが始まった.




場所は変わって,建物の正面.

「剣士ね.ハズレね.少し面倒だは」

エリは,剣を持つ集団を見てため息をついた.それから杖を魔法でしまった.


「魔女か,こちらからして見れば当たりだ.時間稼ぎではなく,抹殺に切り替える事が出来る.」

インがそう言うと,周囲の魔王軍残党から大きな声が上がった.そして,空間が歪んだ.エリは,その様子を見て一瞬で魔法の種を分析した.


「……結界魔法.私以外の人物が全員意識を奪えばよいのね.」

アリエスとエリは,同じ結界魔法で閉じ込められた.もちろん,このクラスの二人を閉じ込めるのは普通の結界魔法では不可能である.だから,魔王軍の残党たちは工夫をした.条件をつけた,簡単に出れないように.


「……魔法使いに近接戦で負けるほどやわな鍛え方をこちらはしてない.我々の力を見よ,魔女.」


エリは,その魔族の言葉を聞いて少しキレた.魔女,魔女と言われることに激怒した.

「そう,じゃあ,試してみるかしら?さっさと終わらせましょ.」

エリはそう言うと魔法で剣を作り出して構えた.


こちらの戦いも火蓋が切られた.





場所は変わって静かになったガーネットとセナが残る建物.

そこに向かってゆっくりとイオナの見た目をしたサウスが歩き始めた.

「さて,厄介な二人は後に回して,ガーネット様とゆっくりお話でもしようか.」

サウスはそう不敵に笑った.


戦いの火ぶたが切られた.

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