愛す・アイス・ミュージック

トロッコ

 新潮文庫はちょくちょくオリジナル栞の配布キャンペーンをやるが、あそこの本には元々紐の栞が付いているので、結局新潮の本に使ったことはない。配るにしてもなぜ栞なのか。現在5枚ほど所持している。

 思えば、この部屋には何枚の栞が眠っていることだろう? 岩波の栞、河出の栞、そして新潮の栞……。彼らは今この瞬間も、あの本棚の中で、いつ終わるとも分からない責務を果たし続けている。

 色々な景色の中で、宙吊りになっている栞を想像する。カラマーゾフの公判に。ビリー・パーハムと狼を見下ろす満天の星空の中に。父は死んだと叫ぶイーヨーの隣に。栞は凍り付いた彼らを見下ろして、物語が続くのを待っている。

 次は何を読むか、私は贅沢に悩んでいる。

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