第28話 6日目ー2
今、大人しく立っている俺の前でふんぞり返ってソファに座っているのが、この騒動の元凶だ。
この世界では老人と言って良い歳なんだが、でっぷりと太った身体は節制とも鍛錬とも無縁なんだろうな。
人間ドックを受ければ、絶対に「再検査を要す」という診断結果が出るなコイツ、と思う体形だ。
そして、顔を見れば、意味も無く自尊心が高く、欲深く、他人を貶める事を楽しみ、自分の利益こそが最大の関心事、という人間性が如実に表れていた。
ギョロっとした目がまたキモイんだよな。欲望に塗れていて、嫌悪感で反吐が出そうだ。
俺の35年間の前世でも、ここまで凄いヤツは会った事が無い。
もし会ったとしたら、なるべく関りを持たない様に努力しただろう。
もし、上司として居たら?
即辞表を提出するな。
コイツの下で苦労するくらいなら、転職で苦労するリスクを取るぞ。
一目見て最初に浮かんだ印象は、宇宙で戦争を繰り広げるハリウッド映画に出て来る悪役キャラだ。
確かアメリカでは肥満とか腐敗とかの象徴として名前が使われていた筈だ。
なんかの拍子に読んだWikiに載っていたから確実だ。
神力を通して見れば、更に酷い。
大精霊ゴックスの庇護は受けていない。
それなのに、先王だけでなく大精霊ゴックスの名も借りて、好き勝手にやりたい放題をして来ている。
こいつによって不幸になった人間は、直接間接を問わなければ万の単位を軽く超えている。
幸福になったというよりも甘い汁を吸った人間は、直接間接を問わなければ百の単位の半ばを軽く超えている。
影響力は凄いんだが、居ない方が世の中の為になるという部類の人間だな。
しかし、どうでも良いけど、この部屋、近衛騎士がやたらと多いな。
今、居る場所はコイツの執務室なんだが、ちょっとした会議が出来るくらいに広い。30畳くらいは有る。
広い筈だが、近衛騎士が20人も完全武装で警護していれば、普通の神経をしている人間ならば圧迫感を感じるだろうな。
「価値の無くなった廃爵された兄妹の周りをウロチョロしているそうじゃないか? そんなヤツラよりも儂に力を貸した方が何かと利益が有るぞ」
凄いぞ、コイツ。
悪役ムーブの才能が有り過ぎだろう? これこそ天才というヤツだろうか?
だが、もう、コイツへの用は終わった。
しかも、自分自身に特別な能力が有る訳でも無く、本来は持っていない筈の地位や立場を使って身の丈以上に成り上がっただけの人間だ。
茶番は終わりだ。
次は、この国の王に会おう。
さあて、どこに居るかな?
なんか会議室みたいなところで、報告を受けているな。
なるほど、今になってコイツに大きく先を越されている事が分かって、対応策を協議中ってとこだ。
「ダーモン・ドランツ2等近衛騎士、今すぐ、この国の王に、このジョージ・ウチダが会いに行くと伝えろ」
いきなり指名された近衛騎士の全身鎧を纏った身体が驚いた様に動いた。
そりゃあ、名乗った訳でも無いのに名前を言われればビックリもする。近衛騎士用のフルフェイスの兜を着用して、顔も見えないのにな。
まあ、俺が言っている内容も大概だしな。
「な、何を言っている! 儂の話は終わっておらんぞ!」
ああ、悪役の天才から
どうせなら、ここは一足飛びに『こいつを殺せ』と命令すれば、格付けはそのままだったのにな。
その後で『役に立たんヤツは要らん』とでも言っておけば良かったんだ。
ウダウダ言うのも時間の無駄なので、ここからは
「人間如きが神の邪魔をするな。そうだ、お前も立ち会ってもらおうか」
最大容量の2%まで溜まった神力を開放する。
半径100㍍の球形の空間が俺の神域になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます