第4話 1日目ー3



 河原で寝たら万が一の増水や水を飲みに来る魔物の危険性が有るので、土手の上に寝床を造る事にした。


 出来上がったのは、中は板張りで、広さ12畳ほどのワンルーム石造りの小屋だ。

 魔物対策の為に窓は無く、細かな空気穴を天井近くの壁に多数開けてある。

 一応玄関というか、土間とサンダルや靴を置くスペースを作って、土足禁止にはしている。


 畳も造ろうと思ったが、2人ともそろそろ眠りたそうな雰囲気だったので割愛した。

 寝具はなんちゃって布団だ。

 まあ、材料はその辺に沢山落ちているから造り放題だった。

 疲れも有るだろうと早めに寝かしつけようとしたが、ベスが布団の中から話し掛けて来た。



「おじさん、ありがとなの・・・。 きょうはほんとーにたのしかったの・・・」


 その声と表情に俺は微かな違和感を感じた。

 ベスの言葉にリックが付け足した。


「悪い人から僕たちを守ってくれてありがとうごうざいます」 


 なるほど、今回の危機、要は人攫いから救ってお終い、と思っているんだな。


「ん? 明日からも面倒を見るぞ」


「え? そんな、悪いですよ。僕たちはこれまで通りあそこで生きて行きますから」


 ちょっと考えて答える。


「最初に言っただろ? 亀の子、本当はあの土地のぬしをしていた大精霊なんだが、あの子に頼まれて助けに来たって」 

「でも、おじさんに面倒を見てもらうのも悪いし・・・ お仕事も有るんでしょ?」


 ああ、なるほど。俺を普通の魔法士か魔法尉か何かと勘違いしているんだな。


「今の仕事はお前たちの面倒を見る事だぞ。こう見えても俺は神様だから遠慮は要らんぞ?」


 サラッと言ったが、気が付いたみたいだ。


「おじさん、かみさま? ザビナオーレさま?」


 この地域で主に信仰されているのは創造神とされる男神のザビナオーレと、豊穣を司る女神のスサーシャだ。

 もっとも、その他にも何柱もの神様が居ると考えられているんで、神殿に祭られている神像は2柱を含めて8柱だ。

 本当は神様モドキだけなんだが。


 どうも人間側が神様モドキが降臨する度に誤認した挙句に拡大解釈をしてしまった様だ。

 まあ外見が光の柱にしか見えないからな。

 後世に伝える際に、只の光の柱では有難味ありがたみが無いし、変な言い方だがキャラが立たないんで脚色したんだろう。


 神格付与された俺だから分かったが、神様モドキは本当はとんでもなく発達した文明が造り出した『知的生命発生惑星監視システム』だ。探知されていないが、当然地球にも構築されいる。でなければ俺がこっちに来る事も無かった。

 まあ、そんな内幕は言う必要も無いだろう。

 

「違う、違う。なんというかな、元は人間だったんだけど、大人の事情で神様になってしまったんだ」


 そんないい加減な説明にベスが何故か納得したのか、ドヤ顔で頷きながら言った。


「おとなのじじょーならしかたないの」


 リックは驚きの表情で俺を見ていた。


「だから、気にしなくてもいいぞ」


 何がだろう? 何をだろう?


「なら、かみさまにおねがいしますなの。みんなもたすけてくださいなの」


 一旦、言葉を切った後でベスが更に続けた。

 眠気も薄れたのか、真剣な顔になっていた。


「こじいんで、ともだちになったみんなもたすけてください」


 ああ、これは断れないな。

 断ったら、せっかく開いた心を閉じてしまうかもしれないから。


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