幼馴染の貧乳美少女の裏垢がまさかの育乳垢だったので、今から大爆乳女子のフリをして滅茶苦茶な育乳アドバイスをしてみたいと思いま〜すw

佐々木鏡石@角川スニーカー文庫より発売中

第1話裏垢発見

【ゆうみ@成長中】

本日の測定。

前回測定時から-0.2センチ。

うーっ、また萎んだ……胸ってどうやったら大きくなるん?



【ゆうみ@成長中】

またクラスの男子にまな板ってバカにされた。マジ◯したい。

仕返しに事故に見せかけて頭から花瓶の水ぶっかけてやった。ざまぁ見ろ。



【ゆうみ@成長中】

今日も腕立て伏せ✕100、背筋✕100、豆乳1L。

絶対デカくなってアイツ見返してやる!!

目標Eカップ!!




「あ、アイツ、裏垢なんかやってたのか……!」




 俺は興奮半分、ゲンナリ半分でスマホの画面を見つめていた。




 そう、裏垢。


 普通、女性の裏垢と言うと、無遠慮に裸や下着姿を晒してささやかな自尊心や承認欲求を満たしているのがおそらく普通なのだけど――稀にそういう趣旨の垢ではない場合もある。



 俺は長々と連なったツリーを、親指で下にスクロールした。

 

 途端に、流石に顔を隠しているものの、グレーのタンクトップ姿で、鏡に向かってスマホを向ける自撮り画像が現れ、俺は失笑してしまった。



「ホント相変わらず、絶壁だよなぁ……」



 そう、限りなく完璧な存在であるとチヤホヤされている俺の幼馴染の、唯一の欠点らしい欠点というのが、コレ。


 写真の中の幼馴染はタンクトップの腹部を右手で押さえ、必死に胸板を反らしているのに、その胸には些かの膨らみも感じられない。


 そう、それはまさに反り立つ壁のよう――厳冬期のアイガー北壁をも単独踏破してみせた百戦錬磨の登山家でも呆然とする他ないほどの、垂直に切り立った崖そのもの。


 俺は幼稚園入学前、まさに物心付く前から知っている幼馴染の変わらぬスレンダーボディをケラケラと笑いながら眺めた。



 もし、どこぞの三文ラブコメみたいに、俺に美少女の幼馴染がいて。


 それが校内外に名を知られた優等生で。


 あろうことかその人物が、裏垢なるものを影で運営していたとしたら。




 ましてやそれが――まさかの育乳垢だったとしたら。


 常日頃からド貧乳を気にして気にして気にし倒している女子のものなら。


 しかもその垢を見つけてしまったのが、実に10年以上の付き合いがある、お互いのことを知り尽くした幼馴染だったら。


 まぁ俺だったら――知られたとわかった時点で校舎の四階から飛び降りることを躊躇わないだろう。




「しかし……俺の前でこんな垢を運営してるなんてなぁ……」




 相変わらず、妙なところで脇が甘いんだよなぁ、アイツ。


 こんな裏垢を学校にいる間に運営していて、それを俺に盗み見られたことも。


 そしてIDの末尾に『20080406』という、 俺だって知っている本人の生年月日が入っていることも。


 何から何まで、裏垢としてはとことん脇が甘いとしか言いようがない。


 どうやらネットリテラシーというものは、本人の頭の良さや几帳面な性格には比例しないらしかった。




 俺はこの育乳垢を運営しているらしい、幼馴染――というか、ほぼ妹のような女子の、その詳細なプロフィールを思い返した。


 


 この垢の持ち主の名前は、斗南ほしなみ美優みゆう


 俺と同じ高校に……というか、小中高、そして幼稚園どころか生まれた病院まで一緒という、俺のグレートな幼馴染にして、校内外にその名を轟かせる美少女でもある。




 これぞ清純派美少女のそれと言える、長くて艷やかな黒髪。


 見た目とは裏腹に、どこか勝ち気な印象を与える目。


 東京のちょっと人通りの多い道を歩いただけで、次なる金の卵発掘を目指す芸能事務所のスカウトから十数枚単位で名刺をもらったという伝説がある、猛烈に庇護欲を掻き立てるか弱い雰囲気。


 容姿も完璧なら、その頭脳はもっと完璧に近いもので、ただでさえ回転が早い地の頭に、本人の弛まぬ努力のお陰で、成績はずっと学年一位。


 誰にでも公平で温厚で、そして誠実な性格のお陰で教師陣の覚えもめでたく、数カ月後に迫った生徒会長選挙は現時点でほぼ当確という優等生である。





 だが、幼馴染という特権的な立場故か、俺――鈴原悟浄はそんな近寄りがたい雰囲気しかない国宝級の美少女・斗南美優と、それはそれは子供の頃から物凄く気安い関係を維持していたのである。




 美優は俺の前の悟浄から、俺を「ゴー」と呼び、俺は美優を「美優」と下の名前で呼ぶ。


 基本的にお淑やかで清純を気取っているけれど、俺の前では重荷を下ろすかのように、小さい頃のお転婆女のまま。


 子供の頃は飽きるまで外で走り回り、どろんこになって帰り、きっちりとお互いのご両親に怒られたものだ。


 小中とほとんど同じクラスだったし、たまにクラスが違っても、帰るときはお互いの仕事や部活が終わるのをお互いに待ち、毎日肩を並べて帰った。


 休日は一緒にお泊り会をしたし、これまた仲の良い両親同士で旅行にも行った。


 当然、という感じで同じ志望高校を志望し、勉強会を繰り返して、ちゃんと同じ高校に合格した。


 今も何か頼み事があれば真っ先にお互いを頼るし、反対に、今も週イチで喧嘩をする。


 だがその怒鳴り合いの五分後にはお互いにケロリとして、一緒に帰ろうよと声をかけ、喧嘩した事実そのものが存在しなかったかのように仲良く肩を並べて帰るのだ。


 当然、校内外に名を轟かせるほどの美少女とそんなことをしていたら、多数の有象無象の男子の嫉妬も買いそうなものだけれど――俺たちが非常にグレートな幼馴染であることは既に全校に知れ渡っていて、今では嫉妬されることすらない。


 というわけで俺たちは今も「グレートな幼馴染」という特権的なポジションでお互いを認識し、まるで実の兄妹以上に仲が良い、至って良好な幼馴染関係を維持していたのである。




「しかし美優よ、今日のお前はやりすぎた……」




 俺はスマホの画面を見ながら恨み声を発した。

 

 そう、その日の俺は、滅多になくあの美しい幼馴染に、真剣に憤っていたのである。


 ことの発端はよく覚えていないが、俺は今日の五時間目の終わり、些細なことでいつも通り美優と口論になり、お互いに遠慮なく罵声を浴びせ合った。


 どうせ何を言っても五分後には全てお互いに忘れるのだ、という行き過ぎた信頼が、俺についついあることを叫ばせてしまった。




「うるせー! 相変わらず、器も背も胸もちっちぇ女だな!」――と。




 その言葉を聞いた瞬間、美優は怒り狂った。


 ヒィーッ! という悲鳴とともに白い肌を真っ赤にし、地団駄を踏み髪をかき乱して、近くにあった花瓶の水を真正面からぶっかけてきたのである。

 

 当然、俺はびしょ濡れになり――あの清純派気取りが滅多になく金切り声を上げて乱暴狼藉に及んだこともあり、ずぶ濡れの俺は多数の衆目を浴びることになった。


 そのまま、プンプン、という感じで生徒会に行ってしまった美優を捨て置き、俺は濡れ鼠のまま一人で帰宅して――今この状況である。




「くっそー美優のヤツめ! 何が『事故に見せかけて』だ! 百パー故意だっただろうがよ! だが残念だったな、お前は俺にこのアカウントの存在を知られてしまった……!」




 俺は滅多になく真剣に憤りながら、画面の向こうの幼馴染に向けて下卑た笑みを向けた。




「この垢の存在を知ったということは、お前の生命線を握ったも同然……! 見てろよ美優! 何も裏垢が運営できるのはお前だけじゃないんだからな……!」




 そう言って、俺は右上の『フォロー』ボタンを押した。


 捨てアカウントの名前は迷ったが、『大爆乳女子@98cmHカップ』としておいた。


 次に俺はメッセージ欄に移動し、以下の文言をスマホに打ち込んだ。




『こんにちは! ゆうみ@成長中さん、突然のDM失礼します。


 ゆうみさんの育乳に賭ける情熱、非常に胸打たれるものがありました!


 是非とも私にも協力させていただけないでしょうか?


 ちなみに、私は98cmのHカップです。』







引っ越しのストレスが極地に達したので

思いつきで下ネタな話を掲載します。


完全にストレス発散目的の書き溜めナシ、

しかも原稿ナシのカクヨム直書きですので

いつぞや飽きて連載停止するかもわかりません。


「もう少し続けてくれ」と思っていただけた場合は、

たった一言


「続けて」


とコメントなりレビューなり★なりをください。

それ以外の文言は一切要りません。

「続けて」だけで結構です。


よろしくお願いいたします。

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